母音 概要

母音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 17:08 UTC 版)

概要

母音は、または声門で息の通り道の閉鎖を伴なわず(完全にも部分的にも、瞬間的にも)、狭くすることもない[注釈 1]

母音は単独で、あるいはその前後に一つまたは複数の子音を伴って、一つの音節を構成する。すなわち音節主音としての機能を持つ。

ほとんどの言語は3つ以上の母音を持ち、例えば、古代ギリシア語ラテン語日本語[注釈 2]は5つを区別する[注釈 3]

弁別特徴

母音
前舌 前舌め 中舌 後舌め 後舌
i • y
ɨ • ʉ
ɯ • u
ɪ • ʏ
ɪ̈ • ʊ̈
ɯ̽ • ʊ
e • ø
ɘ • ɵ
ɤ • o
 • ø̞
ə • ɵ̞
ɤ̞ • 
ɛ • œ
ɜ • ɞ
ʌ • ɔ
æ • 
ɐ • ɞ̞
a • ɶ
ɑ • ɒ
広めの狭
半狭
中央
半広
狭めの広
記号が二つ並んでいるものは、左が非円唇、右が円唇
国際音声記号 - 母音

国際音声記号(IPA)では、母音の音を決める以下の3つの主要な要素にしたがって母音を分類している。その形から母音三角形・母音四角形・母音四辺形などとも呼ばれる。

  • を盛り上げる場所の前後(横軸)
  • 舌の盛り上がった位置と上顎との間隔の広さ(縦軸)
  • を丸める(右側)かそうでない(左側)か
IPAの母音チャートの見方。左を向いている人の口の大きさと舌を盛り上げる位置にチャートは対応している。
IPAの母音チャートとフォルマントの関係。縦軸と横軸は、それぞれF1とF2の振動数を表している。

母音の音色を決定するのは、の形との形、の開閉度である。そこで調音音声学では、母音を分類する基準として、唇の丸み加減、舌の最上部の前後と舌の最上部の高低の位置が使われる。これらの状態によりIPAによって基本母音が定められている。ただし、これは物理的に舌の位置をはかったものではなく、聴覚印象上の音の距離によって決められたものである。

前後

舌の頂上の位置を前後によって分類する。

広さ

舌の頂上の位置を高低によって分類する。

円唇性

唇の丸みを伴ったものを円唇母音、そうでないものを非円唇母音(または平唇母音)と呼ぶ。

緊張

調音器官の筋肉の緊張を伴うと考えられるか否かで母音を弁別することがある。前者を緊張音 (tense vowel)、後者を弛緩音 (lax vowel) と呼ぶ。必ずしも筋肉の緊張があると証明されてはいないので、純粋な音声学的な研究ではあまり扱われないが、個々の言語の音韻論では、伝統や母語話者の感覚に基づきこの用語が使用されることがある。例えば、英語音韻論では、特に一般米国英語発音の母音の分類で、伝統的にこの術語が使用されることが多い。この場合、英語音韻論上の短母音 /æ, ɛ, ɪ, ʌ, ʊ/ を弛緩母音、英語音韻論上の長母音と二重母音 /i, u, ɑ, ɔ, eɪ, aɪ, oʊ, aʊ, oɪ/ を緊張母音に分類する。この分類は、英語の開音節が必ず緊張母音で終わることなど、英語の音節構造の特徴を説明する際には非常に利便性が高い。また子音のうち、有声音を軟子音 (fortis consonant) として弛緩音、無声音を硬子音 (lenis consonant) として緊張音に分類する。そもそも、英語の発音では、文末の有声子音が無声化する場合や、音節境界上の本来は無声子音の /t/ が母音に挟まれると有声化する現象などを考慮すると、英語の子音音素を有声音と無声音で対比させることは、必ずしも正確だとは言えない。

長短

母音は、その持続時間の長さの違いによって長母音短母音に分けられる。言語のなかには、長母音と短母音の区別により意味の弁別を行うものがある。日本語もその代表であり、長母音を含む音節を長音と呼んでいる。

なお、英語[i][ɪ] (bead [ˈbid], bid [ˈbɪd]) は、習慣的に長母音・短母音と呼ばれることがあるが、実際には長さは弁別的ではない。英語では、 bead [ˈbiːd], beat [ˈbiˑtˑ] のように、音節末の子音の有声・無声の区別に長さを利用している。

二重母音

一つの母音の発声中に調音を変えるものを二重母音と呼ぶ。三種類の調音があるなら三重母音と呼ぶ。二重母音・三重母音はあくまで一つの母音であり一音節であるが、単なる母音の連続は複数の音節となる。後者は単母音と呼ぶ。


注釈

  1. ^ 息の通り道を狭くすることによる息の摩擦音子音とみなされる。
  2. ^ 平安時代以降の発音体系。
  3. ^ 長短の区別を入れず、二重母音も考慮しない場合。

出典

  1. ^ “南琉球方言における「舌先的母音」の調音的特徴: 宮古多良間方言を対象としたパラトグラフィー調査の初期報告”. 音声研究 14 (2): 16–24. (2010). doi:10.24467/onseikenkyu.14.2_16. 
  2. ^ 狩俣 繁久 (1999.3) (日本語). 琉球宮古諸方言の音韻:琉球宮古方言の音声資料の収集・研究. 西原町. pp. 61-62. https://hdl.handle.net/20.500.12000/8908 






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