母音 特別な母音

母音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 17:08 UTC 版)

特別な母音

鼻母音

鼻からも息を出す母音を鼻母音と呼ぶ。標準的な日本語ではこの音は音素としては存在しないが、実際の音では「雰囲気」、「陰影」など撥音(「ん」の音)の次に母音、半母音、摩擦音が続く場合、撥音が鼻母音化して、それぞれ [ɸɯɯ̃iki] または [ɸɯĩiki], [iĩeː] と発音される。[ĩ], [ɯ̃][i], [ɯ] に対応する鼻母音である。

R音性母音

母音を調音する際に舌尖を反らせたり、舌を盛り上げたりすると、咽頭に狭めができてr音のような音色を備える。これをr音化といい、r音性の母音ができる。

無声化母音

母音は言語によってはしばしば無声音として実現されることもある。この現象を母音の無声化(ぼいんのむせいか)という。

例えば、日本語の音韻体系において、無声子音に挟まれた狭母音[i], [ɯ](「北」[kta]、「房」ɯ̥sa])や、無声子音の後で文節末でピッチの低い狭母音[i], [ɯ](「秋」[ak]、「〜です」[desɯ̥])などの場合がある。但し中部地方から中国地方にかけての方言においては、母音の無声化の起こらないものも少なくない。

舌先母音

中国語や琉球の宮古方言などの言語には、舌先母音(したさきぼいん)または舌先的母音(したさきてきぼいん)[1]と呼ばれている特別な母音がある。

舌先母音は、普通の母音(舌面母音、ぜつめんぼいん)のように主に舌面を用いて発音されるのに対し、舌の先端(舌尖ではなく舌端も含めた部分)を口蓋に近づいて発音されるため、しばしば[z][s]に類似する摩擦噪音を伴う。成節的子音と解釈される立場もある。

表記

習慣上、舌先母音を普通の母音と区別するため、中国語諸方言や南琉球諸方言の文献では、以下のような国際音声記号(IPA)にはない記号が使われている。

非円唇 円唇
普通 [ɿ] [ʮ]
そり舌 [ʅ] [ʯ]

研究者によっては、[ɿ] のような母音を [ɨ] [ï] [s̩] [z̩] [ɹ̩] などのように記述する場合もある。

例 

言語 音声表記
標準中国語 子 zǐ [t̪͡s̪ɿ˨˩˦]
標準中国語 死 sǐ [s̪ɿ˨˩˦]
標準中国語 赤 chì [ʈ͡ʂʰʅ˥˩]
標準中国語 世 shì [ʂʰʅ˥˩]
呉語常熟方言 [ʈʂʯ˦˦]
西南官話鄂北片鄖縣方言 [sʮ]
宮古語 /m.gɿ/ [m̩.ɡᶻɿ][2]

注釈

  1. ^ 息の通り道を狭くすることによる息の摩擦音子音とみなされる。
  2. ^ 平安時代以降の発音体系。
  3. ^ 長短の区別を入れず、二重母音も考慮しない場合。

出典

  1. ^ “南琉球方言における「舌先的母音」の調音的特徴: 宮古多良間方言を対象としたパラトグラフィー調査の初期報告”. 音声研究 14 (2): 16–24. (2010). doi:10.24467/onseikenkyu.14.2_16. 
  2. ^ 狩俣 繁久 (1999.3) (日本語). 琉球宮古諸方言の音韻:琉球宮古方言の音声資料の収集・研究. 西原町. pp. 61-62. https://hdl.handle.net/20.500.12000/8908 


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