平成18年豪雪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/13 02:00 UTC 版)
概要
気象庁は当初2005年(平成17年)秋ごろの寒候期予報や3か月予報などにおいて全国的に気温は平年並みか高いと予想。暖冬となる見込みであった。しかし予想に反し2005年(平成17年)12月上旬に早くも強い寒気が流れ込んだのを皮切りにその後も次々と断続的に寒気が流れ込むようになり、急速に発達する低気圧の通過と重なり日本各地に大雪、寒波、暴風をもたらした。結果的に2005年(平成17年)12月から2006年(平成18年)1月上旬のほとんど毎日が冬型の気圧配置となり、この期間は1985年(昭和60年)から1986年(昭和61年)の六一豪雪以来の記録的な豪雪と低温となった。気象庁は12月下旬に暖冬との予想を撤回し、結局この冬は南西諸島を除き寒冬となった。ただその一方で2月中旬からは一転して、15日には南風が吹き静岡市で24°Cの記録的な高温を観測したり、下旬は低気圧が日本の北を周期的に通過したため、南から暖かい空気が流れ込んで気温の高い日が多く、高温・暖冬傾向となった。3月に入ると13日に強い寒の戻りがあった以外は余寒はほとんど無く、おおむね北日本中心の高温・暖春傾向で桜の開花や満開は全国的に平年より早く厳冬の割りには春の訪れは早かった。
この豪雪の特徴としては強い冬型の気圧配置が続くことで雪雲が季節風により山地まで運ばれるため山間部や内陸部に大雪をもたらす「山雪型」の特徴が顕著に現れた。
北海道地方から北陸地方・山陰地方の山間部では多くの地域で冬(12月 - 2月)の降雪量や最深積雪が平年を上回った。特に新潟県の山間部にある津南町では4mを超える最深積雪を記録したのをはじめ北海道、東北地方、北陸地方、群馬県、岐阜県、長野県、中国地方などの山間部や内陸部を中心として記録的な最深積雪となる所が多く12月の時点で歴代最深積雪の記録を塗り替えた地点もあった(豪雪の記録は年間で一番積雪が増える1月後半から2月にかけて記録されることが多く、12月中に記録を更新することは珍しい)。
金沢市、福井市、鳥取市など日本海側沿岸部に位置する地域では最深積雪こそ平年並あるいは平年を上回るところが多かったものの冬期間の降雪量は平年並あるいは平年を下回るところが多かった。12月は日本海側山間部から内陸部、沿岸部の多くの地点で降雪量が平年を大きく上回ったものの1月中旬以降は冬型の気圧配置が長続きせず高温となる時期も多くなったこと(2005〜2006年冬のシーズンは12月よりも2月の方が高温であった)や冬型の気圧配置となっても山間部中心の降雪となったため日本海側沿岸部では1月、2月の降雪量は平年を下回り、この地域では2月中旬以降は融雪も進み3月を迎える前に積雪がなくなる地点も多かった。山間部の地域でも1月中旬以降は強い降雪のピークは超えたが、その代償として気温の変動などによる融雪や雪崩による被害も増加した。
新潟市や東北地方太平洋側の仙台市や福島市でも冬の降雪量や最深積雪は平年並、あるいは平年を下回った(但し、元々これらの都市は日本海からの発達した雪雲の影響を比較的受けにくい地域であり積雪は比較的少ない)。
この12月は平年の「寒気が南下してくる限界」よりも南に寒気が流れ込んだため九州地方、四国地方、中国地方瀬戸内側、近畿地方、東海地方など平年は雪が少ない地域でも大雪となった。主要都市でも鹿児島市、高知市、広島市、名古屋市など広い範囲で記録的な大雪となった。また、1月下旬には本州南岸を通過した低気圧の影響で関東地方でも大雪となった。
原因
原因については北極振動の発生により北極と日本付近との気圧の差が小さくなり、北極付近の寒気が南下しやすくなったことが考えられている。この北極振動は2005年(平成17年)11月中旬頃から突如として、バイカル湖およびシベリア付近に蓄積していた非常に強い寒気を放出した(シベリア気団を参照)。さらに偏西風が蛇行し日本列島付近に寒気が流れ込みやすくなっていたことが寒気の供給に拍車をかける結果となり、この年の猛暑と暖秋で日本海の海水温が平年より2度近くも上昇したことが日本海側に多量の雪をもたらす結果となった。日本の豪雪と同時にヨーロッパ北部でも大雪が降ったが、そのヨーロッパ北部も日本と同様に北極との気圧の差が小さくなっていた。さらに北アメリカ大陸西部やユーラシア大陸中部では逆に北極との気圧の差が大きくなり、気温が上昇し降水量が少なくなった。しかしこれら一連の異常は2006年(平成18年)1月半ばから弱まり北極との気圧の差が小さい地域が移動して、モスクワなどヨーロッパ北東部が寒波に襲われたり北アメリカ西部で大雪・大雨が降るなどした。またこの冬は上記のとおり日本海の海水温が平年よりも2度近くも上昇したほか、フィリピンの東海上の海水温が上がり南米ペルー沖の海水温が例年より低くなるラニーニャ現象やバレンツ海の海氷の量の減少[1][2]、更にはメキシコ湾流の流軸の変動などが原因で気圧配置が変化し日本列島に寒気が流れ込みやすい状態になっていたことも一因として挙げられる。
社会的影響
日本では1987年(昭和62年)以降、特に1990年代はほぼ暖冬で2000年(平成12年)以降も東日本から西日本にかけて暖冬傾向だったこと、地球温暖化により暖冬の傾向が強まるとの見方が強かった。その傾向に反した今回の厳冬と大雪をメディアは大きく取り上げた。また厳冬と大雪により除雪用品や暖房器具の売り上げが伸び日本のGDPを押し上げるとの試算もあり一部に良い面もあった。しかし多数の死傷者が出た上、大雪対策で財政が圧迫される自治体が出た。また被害の大きさから三八豪雪と比較されることが多かった。現地の高齢者は「(三八豪雪)当時の方が、若者がいたためまだ対処しやすかった」と語るように体力、足腰の衰えた高齢者が雪下ろしをしなければいけなくなった現状が犠牲者を拡大させたとも指摘され、改めて中山間地区での高齢化、過疎化の問題を露呈させた。
- ^ バレンツ海の海氷減少がもたらす北極温暖化と大陸寒冷化―日本の冬の寒さを説明する新たな知見― - 独立行政法人 海洋研究開発機構プレスリリース(2012年2月1日)
- ^ 知ろう! 記者に発表した最新研究「バレンツ海の海氷減少は、北極の温暖化を強め、大陸を寒冷化させる!」 - 独立行政法人 海洋研究開発機構(2012年2月1日)
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