ベトナム語 音韻

ベトナム語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/04 12:40 UTC 版)

音韻

中国語と同様、声母(音節頭子音)と韻母介母音+主母音+音節末子音/母音)、および声調からなる音節構造を持ち、多くの音節はそれ自体で形態素となり得る点でいわゆる「単音節語」的な特徴を有する。注記したものを除き、すべての単母音、二重母音は主母音に立つことができる。 音節末母音(-i/-y, -o/-u)は、IPAでは、半母音[j], [w])として見做される為、音節末子音と同様に扱われる。

漢字音の対応は、中国語各方言・日本語・朝鮮語でほとんど変化のない(変化しても b など唇音のまま) [m] 声母字「面」「民」などが、d (北部方言の [z]) に変化し、半母音の [j] 声母字も摩擦が強まり、d(北部方言の [z])となっている。また、[s] の一部は [t] に変化しているのが特徴的で、現代中国語の sh ([ʂ]) 声母字の一部は th ([tʰ]) に対応する[注 2]

母音(Nguyên âm

単母音(Nguyên âm đơn
文字 音価 IPA表記 発音の特徴 備考
a アー [aː], [ɐː] 口を大きく開けてやや長めに
ă [a], [ɐ] 口を大きく開けて短く 単独で主母音に立たない。必ず音節末子音/母音を伴う閉音節になる
â [ə], [ɜ],[ʌ], [ɤ] アとオの中間的な感じで短く 単独で主母音に立たない。必ず音節末子音/母音を伴う閉音節になる
ơ アー [əː], [ɜː], [ɤː] アとオの中間的な感じでやや長めに
e エー [ɛː] 口を大きく開けて、エとアの中間的な感じでやや長めに
ê エー [eː] 口を軽く狭めに開けて、エとイの中間的な感じでやや長めに
i イ(ー) [i(ː)] 唇を左右に強く引いて 音節末母音 [j] に立つ(主母音 a, o, ô, ơ, u, ư, uô, ươ の後)。主母音はやや長めに、末母音は短く発音される
y イー [iː] i の長母音[注 3]。唇を左右に強く引いてやや長めに 音節末母音 [j] に立つ(主母音 ă, â の後。[ă は、短音記号(ブレーヴェ)を省略して表記する[2]])。主母音は短く、末母音はやや長めに発音される
o オー [ɔː] 口を大きく開けてやや長めに 音節末母音 [w] に立つ(主母音 a, e の後)。主母音はやや長めに、末母音は短く発音される
ô オー [oː] 唇を丸く狭めて口を軽く突き出しやや長めに
u ウー [uː] 唇を丸めて口を強く突き出しやや長めに 音節末母音 [w] に立つ(主母音 i, ê, ư, ă, â, ươ, iê(yê) の後。[ă は、短音記号(ブレーヴェ)を省略して表記する])。母音 ê, ă, â の時、主母音は短く、末母音はやや長めに発音され[注 4]、母音 i, ư の時、主母音はやや長めに、末母音は短く発音される
ư ウー [ɯː], [ɨː] 唇を左右に強く引いてやや長めに

※音節末子音 -ch, -nh が後続する主母音 a[注 5], ê, i(y) 、音節末子音 -c, -ng が後続する主母音 o, ô, u 、音節末子音 -t, -c, -ng が後続する主母音 ư[注 6] 、音節末母音 -y が後続する主母音 a[注 7]、音節末母音 -u が後続する主母音 ê, a[注 8] は、必ず短母音として短く発音される[3]


介母音(Giới âm [Âm đệm])
文字 音価 IPA表記 備考
o [w] 主母音 a, ă, e の前
u [w] 主母音 y(i), ê, â, ơ, ô[注 9] , ya, yê の前

       発音の特徴
 唇を丸く狭めて口を軽く突き出し短く

※頭子音 q- の後は、主母音に関係なく、必ず介母音 u が続く(例:quan「関所、官吏(役人)」, quê「田舎、故郷」⇔ hoa「花」, thuế「税」)。


二重母音(Nguyên âm đôi
文字 正書法上の制限 音価 IPA表記 発音の特徴
-ia (C)_Ø イーア (イーエ) [iə] ([ie]) イは唇を左右に強く引いてやや長めに、ア (エ)はあいまいな感じで軽く短く[注 10]
-iê- C_C
-ya CV_Ø
-yê- (C)(V)_C
-ua (C)_Ø ウーア (ウーオ) [uə] ([uo]) ウは唇を丸く突き出してやや長めに、ア (オ)はあいまいな感じで軽く短く
-uô- (C)_C
-ưa (C)_Ø ウー [ɯə], [ɨə] ウは唇を左右に強く引いてやや長めに、アはあいまいな感じで軽く短く
-ươ- (C)_C

注)V→母音(介母音)、C→子音(音節頭子音・音節末子音/母音)、Ø→音節末子音/母音なし(ゼロ韻尾)

※文字表記が、-a で終わるものは開音節となり、-ê, -ô, -ơ で終わるものは閉音節(必ず音節末子音/母音を伴う)となる(南北の発音の違いは、後述の「方言」を参照)。


上記の単母音・二重母音以外に、外来語擬音擬態語などに現れる oo, ôô(極稀)[注 11]が主母音に立つ[4](音節末子音 -c, -ng が後続する閉音節にのみ現れる[5](例:soóc「半ズボン」、soong [xoong]「シチュー鍋」など))。


iu, ưu, ao, au, âu, ai, ay, ây, ưi, ui, êo, êu, ơi, ôi, oi、oa, oe, uê, uơ, uy-, oă-, uâ-, ue, uă- などの上記以外の母音が2つ連続する音節(単母音+音節末母音、介母音+単母音)は、厳密には二重母音ではない。
また、iêu(yêu), ươu, ươi, uôi、uya, uyê-、oeo, uyu, oai, oay, uây, ueo, uai, uao, uau, uay などの母音が3つ連続する音節(二重母音+音節末母音、介母音+二重母音、介母音+単母音+音節末母音)は、便宜的に三重母音と称されることもある。

子音(Phụ âm

頭子音(Phụ âm đầu
文字 音価 IPA表記 備考
北部 中部・南部
p [p] 欧米からの借用語外来語)のみ。しばしば b([ɓ], [ʔb])で発音される
b [ɓ], [ʔb] 入破音。声門を閉じて同時に開放
m [m]
n [n] 北部の一部地域(紅河デルタ)では、しばしば [l] で発音される[6]
s シャ* [s], [ʂ] 中部・南部ではそり舌音
x [s]
d ジャ ヤ* [z], [ʒ], [j] 中部・南部では半母音
gi ザ* ジャ ヤ [z], [ʒ], [j] 中部・南部では半母音。前母音 i, iê が後続する場合は、頭子音の i を省略して、一文字だけ表記[7]し、gi, gi- [ziː][8](北部)/ [ʒiː/jiː](中部・南部), giê- [ziə](北部)/ [ʒiə/jiə](中部・南部)と発音する(例:giì「何、何か」、giìngìn「保つ、保持[維持]する」、giiếnggiếng「井戸」、giiếtgiết「殺す、殺害する」、giiễugiễu「揶揄する、からかう、嘲笑する、あざ笑う」など)。
r * [z], [ɹ], [ʐ] 中部・南部ではそり舌音。西南部(メコンデルタ)では、フランス語巻き舌音の r([ʁ])(口蓋垂音[注 12]のように発音されることがある[9]
t [t]
đ [ɗ], [ʔd] 入破音。声門を閉じて同時に開放
nh ニャ [ɲ]
h [h] 南部では、介母音 o, u([w])を伴う場合、頭子音 h- が脱落[10]したり、g([ɣ])で発音されたりすることがある
ch チャ [ʨ], [c]
tr チャ チャ* トラ [ʨ], [c], [ʈ], [ʈ͡ʂ], [tr] 中部・南部ではそり舌音[tr] と発音する方言もある
c [k] 主母音 a, ă, â, o, ô, ơ, u, ư, ua, uô, ưa, ươ[注 13] の前
k [k] 前母音 i(y), ê, e, ia, iê の前
q(u) クワ ワ* [k(w)], [w] 介母音 u を伴う場合。南部では、頭子音 q- が弱化して、ほとんど聞こえないか、または、脱落して、半母音で発音される[11]ことが多い
ph ファ [f]
v ヴァ* ジャ ヤ [v], [ʒ], [j] 南部では、しばしば半母音で発音される[注 14]
l [l] 北部の一部地域(紅河デルタ)では、しばしば [n] で発音される
th [tʰ] 有気音。強く息を出す
kh * [x], [kʰ] 喉の奥から擦らせるように強く息を出す。南部では、しばしば有気音で発音される
g [ɣ] 喉の奥から強く音を出す。主母音 a, ă, â, o, ô, ơ, u, ư, uô, ươ[注 15] の前
gh 前母音 i, ê, e, iê の前
ng [ンガ] [ŋ] 鼻濁音。鼻に掛かった音を出す。主母音 a, ă, â, o, ô, ơ, u, ư, uô, ưa, ươ の前。南部では、介母音 o, u([w])を伴う場合、頭子音 ng- が脱落することがある
ngh 前母音 i, ê, e, ia, iê の前

※「*」は正書法発音(ベトナム語phát âm chính tả / 發音正寫


末子音(Phụ âm cuối
文字 音価 IPA表記 備考
-p ッ(プ) [p̚] 内破音。口の構えだけで音は出さない。唇を閉じて息を止める
-m [m] 唇を閉じて息を鼻の方へ通す
-t ッ(ト) [t̚] 内破音。口の構えだけで音は出さない。舌先を上の歯茎に付けて息を止める。中部・南部では、主母音 i, ê の後で [t̚]、他の場合は [k̚][12]
-n [n] 舌先を上の歯茎に付けて息を鼻の方へ通す。中部・南部では、主母音 i, ê の後で [n]、他の場合は [ŋ][13]
-c ッ(ク) [k̚] 内破音。口の構えだけで音は出さない。舌を奥の方で低くしたまま喉で息を止める。主母音 a, ă, â, ư, iê, uô, ươ[注 16] の後
-c ッ(クプ) [k͡p̚] 内破音。口の構えだけで音は出さない。主母音 o, ô, u の後。わたり音 [w] を伴う(円唇化)。発音と同時に、すぐに唇を閉じて頬を少し膨らませるようにする(二重調音
-ng [ン(グ)] [ŋ] 舌を奥の方で低くしたまま息を鼻の方へ通す。主母音 a, ă, â, ư, iê(yê), uô, ươ[注 17] の後
-ng ム [ン(グ)ム] [ŋ͡m] 主母音 o, ô, u の後。わたり音 [w] を伴う(円唇化)。発音と同時に、すぐに唇を閉じて頬を少し膨らませるようにする(二重調音
-ch ィッ(ク) [c̚], [k̟̚] 内破音。口の構えだけで音は出さない。唇を左右に強く引いて喉で息を止める。主母音 a, ê, i(y) の後。北部では、わたり音 [j] を伴う(硬口蓋化)。中部・南部では [t̚][14]
-nh ィン [ɲ], [ŋ̟] 唇を左右に強く引いて息を鼻の方へ通す。主母音 a, ê, i(y) の後。北部では、わたり音 [j] を伴う(硬口蓋化)。中部・南部では [n][15]

声調(Thanh điệu

ベトナム語には 6 種の声調があり、大きくはbằng(平)とtrắc(仄)の2つの分類に分かれている。各音節は必ずいずれかの声調を持つ。但し、南部方言では 4. thanh hỏi(問調)に 5. thanh ngã(転調)が合流して、5 声調になっている[注 18](南北の声調の違いは、後述の「方言」を参照)。声調記号は、母音字(主母音、または、介母音)の上部(6.thanh nặng (重調) のみ下部)に付記する(例:Ẫ, ở, ý, ặ)[注 19]

声調
番号 声調名 読み(意味) 記号 声調パターン 声調値とIPA表記 平仄 備考
1 thanh ngang タィンガン(平らな、横の)[平調(平声、横声)] (なし) 中平調 ˧ 33 bằng (平)  a[ヘルプ/ファイル] 普通の高さより少し高めで平らに伸ばす
2 thanh huyền タィンフイェン(懸ける(懸かる)、吊り下げる(吊り下がる))[垂調(玄声)] ` (グレイヴ) 低降調(低平調) ˨ (˨˩) 21 (22)  à[ヘルプ/ファイル] 残念そうに、やや低い所から伸ばすようにゆっくりと低く下がる
3 thanh sắc タィンサッ(ク)(鋭い)[鋭調(鋭声)] ´ (アキュート) 高昇調 ˧˥ 35 trắc (仄)  á[ヘルプ/ファイル] 普通の高さから一気に素早く上がる
4 thanh hỏi タィンホーイ(尋ねる、問う)[問調(問声)]  ̉ (フック) 降昇調 ˧˩˧ 312 (313)  [ヘルプ/ファイル] 普通の高さからゆっくりと低く下がって、最後に少し上がる(個人差があり、上がらないこともある)
5 thanh ngã タィンガー(倒れる、転ぶ)[転調(跌声)] ˜ (チルダ) 高昇調(昇降調)+喉頭化 ˦˥˦ (˧ˀ˦˥) 3ʔ5 325 (324)  ã[ヘルプ/ファイル] 最初から喉の緊張を伴いながら、普通の高さから少し上がって、一瞬声門を閉じた後、急激に上がる
6 thanh nặng タィンナン(重い)[重調(重声)]  ̣ (ドット) 低降調+喉頭化 ˨˩ (˨˩ˀ) 21ʔ (21)  [ヘルプ/ファイル] 最初から喉の緊張を伴いながら、重々しく喉の奥で音を押し殺すように、やや低い所から一気に下がって声門を閉じる(他の声調よりも音の長さが少し短い)

ここで示した声調値は五度式であり、5が最も高く、1が最も低いことを表す。

thanh「声調」の他に、dấu「印、記号」やgiọng「口調、声」を用いた 1.không dấu(ホンザウ)dấu không(ザウホン)「記号無し」dấu ngang(ザウガン)dấu bằng(ザウバン)giọng ngang(ゾンガン)giọng bằng(ゾンバン)thanh không(タインホン)、2.dấu huyền(ザウフイェン)giọng huyền(ゾンフイェン)、3.dấu sắc(ザウサッ(ク))giọng sắc(ゾンサッ(ク))、4.dấu hỏi(ザウホーイ)giọng hỏi(ゾンホーイ)、5.dấu ngã(ザウガー)giọng ngã(ゾンガー)、6.dấu nặng(ザウナン)giọng nặng(ゾンナン)という表現もある。


下図のように、1.thanh ngang(平調), 3.thanh sắc(鋭調), 5.thanh ngã(転調)は、高い音の領域(高音調)に、2.thanh huyền(垂調), 4.thanh hỏi(問調), 6.thanh nặng(重調)は、低い音の領域(低音調)に属しており[注 20]、それぞれのグループの音が、互いの領域を越えて相容れることはない。

歴史的には、末子音が消滅した時、3 声調に分かれたとされる。ベトナム語の属するオーストロアジア語族のほとんどは声調を持たない。その後、頭子音の無声/有声に従って各声調が二つに分かれ、今日の 6 声調になった[16][17][18]

声調の起源
モン・クメール 古ベトナム語 現代ベトナム語
ngang, huyền
-s, -h -h hỏi, ngã
sắc, nặng


音節末子音(閉鎖音韻尾)の声調の制約

中国語において入声韻として分類される末子音 -p、-t、-c、-ch(内破音)で終わる音節が取る声調は、3. thanh sắc(鋭調)(3’. thanh sắc tắc [鋭促調]) と 6. thanh nặng(重調)(6’. thanh nặng tắc [重促調]) の2つだけである。
また、閉鎖音韻尾(入声韻)を伴う 3’. thanh sắc tắc(鋭促調)と 6’. thanh nặng tắc(重促調)は、通常の 3. thanh sắc(鋭調), 6. thanh nặng(重調)よりも、急上昇、或いは、急下降するやや短めの発音となり、それに加えて、6’. thanh nặng tắc(重促調)には、通常の 6. thanh nặng(重調)に現れる喉頭化(喉の緊張と声門閉鎖)が見られない為、伝統的な6声調説の他に、3.thanh sắc(鋭調)と 6.thanh nặng(重調)を末子音が閉鎖音韻尾(入声韻)かそれ以外かで、更に2つに分類[注 21]する8声調説も提唱されている[19]


注釈

  1. ^ チュ・クオック・グーでは、短音記号「ă」(ブレーヴェ)、狭母音記号「â, ê, ô」(サーカムフレックス)、非円唇母音記号「ơ, ư」(ホーン)、子音区別記号「đ, Đ」(ストローク)が用いられ、ベトナム語では、それぞれ dấu trăng「月の記号」、dấu mũ「帽子の記号」、dấu móc(râu)「鉤[かぎ](髭[ひげ])の記号」、dấu gạch ngang「横棒の記号」という名称で呼ばれる。
  2. ^ 唇音の一部(b ([ɓ]/[ʔb]), ph ([f]) など)が、主母音 â, ê, i(y), iê などと結合する時、中国中古音重紐音韻学牙音・唇音・喉音における介音 [i][ï] ([ɪ]) の違い)が反映される影響で舌音(t ([t]))〈極一部のみ、歯音(s ([s]/[ʂ]))〉に変化している。
  3. ^ 音節頭子音 h-, k-, l-, m-, t- 及び、qu-(頭子音 q- + 介母音 u)に後続する開音節の場合、-i, -y のどちらの表記でも構わないことになっている(ベトナム政府は、-i の使用を強く推進している)が、固有語は -i 、漢越語(漢越音)は -y で表記される傾向にある。また、母音のみの音節(i, ui)の漢越語の場合は、必ず y, uy と表記される(例:mì「麺(中華そば)、麦」, ủi「アイロンをかける (南)」, quì「金箔」⇔ mỹ (mĩ)「美」, ủy「委、慰」, quỷ (quỉ)「鬼、詭」、 y「衣、醫、依」, hy (hi)「希、稀、犠」, kỹ (kĩ)「技、妓」, lý (lí)「理、里、李」, ty (ti)「司、絲、卑」など)。
  4. ^ 二重母音 ươ, iê(yê) の時も末母音はやや長めに発音される。
  5. ^ 本来 e [ɛ] で表記される発音の時(実際の発音は、a の文字表記に影響されて [ɛ] よりも、中舌寄りの [a] や [æ] に近くなっている)。
  6. ^ 特に北部で見られる。
  7. ^ 短音記号(ブレーヴェ)を省略した ă である為(ay)。
  8. ^ 短音記号(ブレーヴェ)を省略した ă である為(au)。
  9. ^ quốc「國」(漢越音) のみに現れる(原音は、quấc)。
  10. ^ ia が介母音 u に後続する場合は ya、iê で音節が始まる場合と介母音 u に後続する場合は yê と表記される。
  11. ^ 音節末子音 -c, -ng で終わる閉音節でも、短母音ではなく、常に長母音(oo [ɔː (ɔɔ)], ôô [oː (oo)])としてやや長めに発音される為、主母音の円唇化によるわたり音と音節末子音の二重調音が起こらない。(例:soóc [ʂɔːk̚ ˧˥]「半ズボン」⇔ sóc [ʂɔwk͡p̚ ˧˥]「リス」、soong [ʂɔːŋ ˧]「シチュー鍋」⇔ song [ʂɔwŋ͡m ˧]「ハタ」)。
  12. ^ よく嗄[しわが]れたハ行(ガ行)のような音に聞こえることが多い
  13. ^ このほかに外来語や擬音・擬態語などに現れる oo がある(例:coóc-xê「女性用下着(ブラジャー)」、ác-coóc-đê-ông「アコーディオン」、loong coong「ごーん、どーん、じゃーん(銅鑼などの金属音)」など)
  14. ^ 特に西部で見られる。
  15. ^ このほかに外来語や擬音・擬態語などに現れる oo がある(例:goòng「トロッコ」など)
  16. ^ このほかに外来語や擬音・擬態語などに現れる e, oo, ôô(極稀)がある(例:soóc「半ズボン」、boóc「トーチカ」、oóc-dơ「オフサイド」、moóc-phin「モルヒネ」、séc「小切手」、téc-mốt「魔法瓶」、véc-tơ「ベクトル」など)
  17. ^ このほかに外来語や擬音・擬態語などに現れる e, oo, ôô(極稀)がある(例:xoong (soong)「シチュー鍋、ソースパン」、boong「(船の)デッキ、甲板」、choòng「金梃子、バール」、goòng「トロッコ」、phèng la「シンバル、銅鑼」、xẻng (sẻng)「シャベル、スコップ」など)
  18. ^ 中部方言では、3.thanh sắc(鋭調), 4. thanh hỏi(問調), 5. thanh ngã(転調)が、6.thanh nặng(重調)に合流している為、更に数が減って3声調になっている。
  19. ^ 中国語の「第1声」「第2声」のような呼称ではなく、声調名で表される。声調の表記の順番(声調配列順)は明確には決まっておらず、辞書・参考書・学習書等によってそれぞれ異なる(最初は 1.thanh ngang [平調] から始まって、最後は 6.thanh nặng [重調] で終わる場合が多く、少なくとも8通りは存在する)。
    以下の表・図に示されている声調配列順(「a à á ả ã ạ」)は、日本のベトナム語関連書籍で最もよく用いられているものであり、このほかに「a à ả ã á ạ」、「a á à ả ã ạ」、「a à ã ả á ạ」等があるが、著者・出版社によって用いられる配列順に多少の差がある。
  20. ^ 音韻学では、高音調を「陰調」、低音調を「陽調」と表現する。平仄に照らし合わせると、声調の 1.thanh ngang [平調], 2.thanh huyền [垂調](a, à)が「bằng)」、3.thanh sắc [鋭調], 4.thanh hỏi [問調], 5.thanh ngã [転調], 6.thanh nặng [重調](á, ả, ã, ạ)が「trắc)」となり、細かく分類すると、1.thanh ngang [平調], 2.thanh huyền [垂調](a, à)が平声bình)、4.thanh hỏi [問調], 5.thanh ngã [転調](ả, ã)が上声thượng)、3.thanh sắc [鋭調], 6.thanh nặng [重調](á, ạ)が去声khứ)・入声nhập)となるので、更に高低(陰陽)で分類すると、1.thanh ngang [平調] (a) が「陰平声」、2.thanh huyền [垂調] (à) が「陽平声」、4.thanh hỏi [問調] (ả) が「陰上声」、5.thanh ngã [転調] (ã) が「陽上声」、3.thanh sắc [鋭調] (á) が「陰去声陰入声」、6.thanh nặng [重調] (ạ) が「陽去声陽入声」となる。但し、漢越音の声調に関しては、陽平声と陽去声(極一部)において、必ずしも全て理論的に当てはまる訳ではない(中古音にあった旧濁声母のうち、平声で次濁だったもの (子音 l-, m-, n-, ng-, nh-, d- [z/j], v- で始まるもの)は、2.thanh huyền [垂調] (陽平声)ではなく、1.thanh ngang [平調] (陰平声)に、上声で全濁だったものの極一部は、濁上変去(6.thanh nặng [重調] (陽去声)に変化)せずに、5.thanh ngã [転調] (陽上声)になっている)。
    また、聴覚的・音韻学史的視点によって、高低(陰陽)の分類が異なり、これは辞書・参考書・学習書等の声調配列順にも大いに関係している(聴覚的には、1.thanh ngang [平調], 3.thanh sắc [鋭調], 5.thanh ngã [転調] (a, á, ã) が「高 (陰)」、2.thanh huyền [垂調], 4.thanh hỏi [問調], 6.thanh nặng [重調] (à, ả, ạ) が「低 (陽)」となり、音韻学史的には、1.thanh ngang [平調], 4.thanh hỏi [問調], 3.thanh sắc [鋭調] (a, ả, á) が「高 (陰)」、2.thanh huyền [垂調], 5.thanh ngã [転調], 6.thanh nặng [重調] (à, ã, ạ) が「低 (陽)」となる)。
  21. ^ 音韻学における去声khứ)と入声nhập)の分類
  22. ^ 元々の意味は「下僕、しもべ」
  23. ^ ベトナムでは、日本中国などとは違い、数字の区切りを「.」(ピリオド)、小数点を「,」(コンマ)で表記する(フランス方式)。詳細は、小数点#二つの方式を参照。
  24. ^ 漢越語(漢越音)の「兆」に由来する(詳細は、命数法#大数の命数法を参照)。
  25. ^ 漢越語(漢越音)の「」に由来する(詳細は、命数法#大数の命数法を参照)。
  26. ^ 北部地方:タインホア省より北(ニンビン省以北)、中部地方:タインホア省~ビントゥアン省、南部地方:ビントゥアン省より南(バリア=ブンタウ省以南)
  27. ^ 北部方言の一部(紅河デルタ地方)では、音節頭子音 n と l の混同が見られる。
  28. ^ 中国語普通話)の半上声(211)のように発音される。
  29. ^ ハノイ方言と同じように、ấy の代わりに đó「あの、その」を用いた親しみを込めた表現(ông đó, bà đó, cô đó, anh đó, chị đó など)もある。
  30. ^ ハノイ方言とサイゴン方言においても、語彙の差異はあるが、一部を除けば、ほとんどが物の名詞の違いである(例:chữa (北), sửa (南)「修理する」、béo (北), mập (南)「太っている」、gầy (北), ốm (南)「痩せている」、to (北), lớn (南)「大きい」、bé (北), nhỏ (南)「小さい」、rỗi (北), rảnh (南)「暇な」、đắt (北), mắt (南)「(値段が)高い」、nhạt (北), lạt (南)「味が薄い」、xe ô tô (北), xe hơi (南)「車」、xà phòng (北), xà bông (南)「石鹸」、ngô (北), bắp (南)「とうもろこし」、mồm (北), miệng (南)「口」、ô (北), dù (南)「傘」、nem rán (北), chả giò (南)「揚げ春巻き」、cốc (北), ly (南)「コップ、グラス」、thìa (北), muỗng (南)「スプーン」、dĩa (北), nĩa (南)「フォーク」、bát (北), tô (南)「丼、茶碗」、lợn (北), heo (南)「豚」、rau mùi (北), ngò rí (南)「コリアンダー(パクチー)」、nghìn (北), ngàn (南)「千(1000)」、phố (北), đường (南)「道路、通り」、ngõ (北), kiệt (中), hẻm(hẽm) (南)「路地」など)。

出典

  1. ^ 田原洋樹. ベトナム語のしくみ. 白水社. p. 23. ISBN 978-4-560-06756-7 
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