シナノキ シナノキの概要

シナノキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 02:06 UTC 版)

シナノキ
神奈川県愛甲郡清川村(2006年6月4日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Tilioideae
: シナノキ属 Tilia
: シナノキ T. japonica
学名
Tilia japonica (Miq.) Simonk. (1888)[1]
シノニム
和名
シナノキ
英名
Japanese Lime
シナノキの葉と樹皮

名称

和名「シナノキ」の由来は、長野県の古名で「科布が多くとれた国」を意味するという[4]信濃から来ており、「信濃の木」が転訛したものといわれている[5]

一方、植物学者の牧野富太郎著『日本植物圖鑑』によれば、「シナ」の語源は、アイヌ語の「結ぶ」「縛る」「括る」という意味の言葉で、アイヌがシナノキの樹皮から繊維を採って、縄や糸を作ったことによる名と説明している[6][4]。しかし植物学者の辻井達一は、著書『日本の樹木』の中でこの説にはやや誤りがあるようだと反論している[6]。アイヌの言語学者知里真志保によると、シナノキの繊維を重用していたアイヌ民族は、シナノキの内皮またはその繊維を、ニペシ(nipes)あるいはシニペシ(si-nipes)と呼んでいて、「ニ」は木、「ペシ」はもぎ取った裂片、そして「シ」は本当のという意味があるといい、辻井はシナノキが最も優れた繊維素材であることをアイヌ語で示したものだとし[6]、東北地方を含めて、「シナ」の語源が見当たらないと指摘している[7]。また漢字では、木偏に品と書いて「榀」も当てられているが、これは当て字だろうと考えられている[8]

シナノキの花言葉は、「夫婦愛」とされる[4]

分布・生育地

日本固有種で、北海道本州四国九州に分布し[9][4]山地の尾根筋から渓流にかけて見られる[3]。寒い地方のブナ林などに生える樹木[10]。身近なものは、公園や街路などでも植栽されたものも見られる[11]

特徴

落葉広葉樹高木[9]、幹の直径は1メートル (m) 、樹高はふつう8 - 10 m、高いものでは30 m以上になる[4][3]樹皮は暗褐色から茶褐色で、表面は若木では滑らかで、成木では薄い鱗片状で縦に浅く裂ける[3]。小枝は無毛で、縦長の皮目が目立つ[3]

互生し、長さ6 - 10センチメートル (cm) 、幅5 - 6 cmで葉先のとがった左右非対称のハート形[5]葉縁には鋭い鋸状歯がある[9]カツラ(カツラ科)の葉に形が似ているが、カツラは対生する[10]には鮮やかな緑色をしているが、には黄色に紅葉する[5]。条件がよいときれいな黄色に色づくが、褐色を帯びやすい傾向がある[10]

花期は初夏(6 - 7月)[9]葉腋から集散花序を下向きに出して、淡黄色の小さなをつける[9]。花は花序から花柄が分枝して下に垂れ下がる。花序の柄にはへら形の苞葉をつけるのが特徴である[9]。果期は10月[4]果実はほぼ球形で、直径5ミリメートル (mm) の実には灰褐色の毛が密生する[9]になって熟すと、果柄についた葉のような形をしたが翼の役目をして、果序とともにあちこちに落ちる[4][5]

冬芽はいびつな卵形で、仮頂芽と側芽がつき、長さは7 - 10 mm、無毛の芽鱗2枚に包まれ、外側の芽鱗1枚が小さい[3]。葉痕は半円形から楕円形で冬芽のそばにつき、維管束痕が3個ある[3]


注釈

  1. ^ 現行のAPG体系ではアオイ科であるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではシナノキ科としていた[1]

出典

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tilia japonica (Miq.) Simonk.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月25日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Tilia japonica (Miq.) Simonk. var. magna H.Hara”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月2日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 98.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 田中潔 2011, p. 104.
  5. ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 100.
  6. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 249.
  7. ^ 辻井達一 1995, pp. 249–250.
  8. ^ a b 辻井達一 1995, p. 248.
  9. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 80.
  10. ^ a b c 林将之 2008, p. 64.
  11. ^ 亀田龍吉, p. 100.
  12. ^ 辻井達一 1995, p. 250.
  13. ^ 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 257.
  14. ^ a b 小学館・日本大百科全書(ニッポニカ)、世界大百科事典内言及(織物); 平凡社・世界大百科事典第2版. 角山幸洋(ニッポニカ): “榀布とは— 榀布(読み)しなぬの”. コトバンク. 朝日新聞. 2020年12月18日閲覧。
  15. ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 258.
  16. ^ 菩提樹(シナノキ、リンデン)のはちみつ”. ハチミツとミトコンドリア. 2020年12月18日閲覧。
  17. ^ ぼだいじゅ(シナ)蜂蜜”. komoribee.com. 小森養蜂場. 2020年12月18日閲覧。


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