サルコファーゴ サルコファーゴの概要

サルコファーゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/07 07:10 UTC 版)

サルコファーゴ
Sarcófago
出身地 ブラジル
ミナスジェライス州ベロオリゾンテ
ジャンル ブラックメタル
デスメタル
スラッシュメタル
活動期間 1985年 - 2000年
レーベル Cogumelo Records
メンバー Wagner Antichrist (ギターボーカル)
Gerald Incubus (ボーカル、ベース)
旧メンバー Zeber "Butcher" (ギター)
Fabio "Jhasko" (ギター)
Armando "Leprous" Sampaio (ドラムス)
Eduardo "D.D. Crazy" (ドラムス)
Lucio Olliver (ドラムス)
Juninho "Pussy Fucker" (ベース)
Roberto "UFO" (ギター)

バイオグラフィ

1985年ウベルランジアで結成される[1]

ヘヴィメタル界でブラストビートを最初に行ったことで名高い"D.D. Crazy"をドラマーとして迎えて[4][5][6]1987年に1stアルバムI.N.R.I.をリリース[1]。本アルバムにおける、コープスペイント革ジャン、ガンベルトといったメンバーの服装はブラックメタルファッションスタイルをはじめて表したものとされている[7]

ファッションと同様、音楽性も非常に影響力のあるもので、ジャンルの形成に大きく寄与することとなった[8]。 このように、彼らの1stアルバムは今や伝説とも評されているが、Lamounierはその出来に満足しなかった。彼はレコーディングの出来に不平をもらしており、バンドはいざこざに悩まされた[9] 。 その結果、I.N.R.I.のリリース後にサルコファーゴは少しの間解散することとなった。LamounierはFederal University of Uberlândiaで経済学を学ぶためにウベルランジアに行き、ButcherとD.D. Crazyはバンドから脱退したのである[6]。 その後、D.D. CrazyはSextrashのデビューアルバムでその手腕を発揮している[3]

1989年にバンド史上はじめてのEPであるRottingがリリースされるや否や、大きな論争が巻き起こった。伝統的な死神の図像がキリストと思われる人物の顔を舐めているアートワークだったからである[6]。 中世の絵画を下敷きにしているというこのアートワークを手がけたKelson Frostはいばらの冠を男の頭部に描かなかった。いばらの冠はキリストの表象である[10]

Rottingは激しく、ファストなブラックメタルだった1stアルバムとは違うものに仕上がった。セッションドラマーだった"Joker"がクロスオーバー・スラッシュメタルのような今までと違った要素を持ち込んだためだ。Wagnerもレコーディングの間にギターを練習し、作曲面で貢献している[10]

本EPはバンド史上初の世界中でディストリビュートされたものとなった[11][12]

1991年、2ndアルバムThe Laws of Scourgeがリリース[13]。 本アルバムでは演奏技術の大幅な向上と[14]プロダクションの改善[13]、そして作曲面で洗練されたこともあり[14]バンドテクニカルデスメタルと呼ばれるスタイルをとることに成功した[3]。 この音楽性の変化は新しく加入したギタリストのFábio "Jhasko"とドラマーのLúcio Olliverの影響によるものである[15]。具体的にはゴッドフレッシュパラダイス・ロスト、ボルト・スロワー、ディーサイドモービッド・エンジェルといったバンドの影響を強く受けている[16]

The Laws of Scourgeは、バンド史上一番売れたレコードになった[15]。このリリースに伴ってバンドははじめて世界規模のツアーを敢行し、南米ヨーロッパをまわった[6]ブラジルサンパウロではDirty Rotten Imbecilesオープニングアクトをつとめている[10]

1994年、3rdアルバムHateをリリース。本作品はドラムマシンを導入していることで波紋を呼んだ[15][17]。しかし、Lamounierはドラムマシンを使うことに何のためらいもなかったと語っている。彼によれば、ほとんどのデスメタルバンドはトリガーを使っているが、結局ドラムマシンも同じような音になるのだから一緒だと言うのである[15]

同時期にメンバーは長髪スタイルをやめている。1990年代に大きなブームを巻き起こしたグランジに対する反抗である[6]。長髪スタイルの男性は伝統的にカウンターカルチャーと結びつけて語られてきた[18]そしてそれは今日のヘヴィメタルにおいても健在だ[19]

Wagnerはこう語る。

世のマヌケどもは髪を長くしてニルヴァーナとかパール・ジャムのシャツなんかを着てやがる。別にそういうバンドに敵意を持っているわけじゃない。でも、バンドワゴン効果には反対だな。トレンドに堕したらだめなんだ。大衆化は人間を堕落させるからな[20]

1997年にはラストアルバムとなるThe Worst'をリリース。MinelliとLamounierはこの作品をバンドのディスコグラフィーにおける総括と考えている[17]

2000年に最後のEPCrustをリリースし、バンドは解散した。

音楽的特徴と思想

ヴェノムヘルハマーの影響を受けて、初期の歌詞はサタニックなテーマを扱っており[16]、邪悪な単語や残虐なストーリーが好んで用いられる。聖母マリア処女懐胎の冒涜的な翻案ともいえる"Desecration of (the) Virgin"という楽曲を例にとってみよう[21]

聖なる誕生日の
七夜前に
邪悪なる主は姿を現した
処女の家に

悪魔が愛撫し
犯すと彼女は喜びに喘ぐ
もう処女じゃないんだぜ
彼女はサタンに犯されてしまったからさ!

未だに意見は分かれているものの、1stEPのRottingからバンドのキリスト教に対する態度は反キリストというよりも不可知論的なものになっていったといわれている。カトリックブラジルにもたらした疎外に対する批判がオリジナル盤には掲載されている[9]。バンドはキリスト位格的結合にも疑問を呈している。彼は自己の考えのせいで死んだ一人の男にすぎないと言うのである[6]。また、先のテーマよりはふざけているが、本アルバムには"女、酒、メタル"という快楽主義的な言葉がヘッドバンガーたちに向けたものとして掲載されている[22]


  1. ^ a b c Rivadavia, Eduardo. “((( Sarcófago > Biography )))”. AllMusic.com. 2009年1月14日閲覧。
  2. ^ Moynihan, Michael & Søderlind, Didrik: Lords of Chaos: The Bloody Rise of the Satanic Metal Underground. Feral House 1998, p. 36.
  3. ^ a b c Tomasi, Eliton (2008年7月7日). “Sarcófago: pioneirismo, polêmica e death metal”. Rock e Heavy Metal – Whiplash!. 2009年1月14日閲覧。
  4. ^ Sarcófago『I.N.R.I.』のアルバム・ノーツ, p. 11 [CD booklet]. Belo Horizonte, MG: Cogumelo Records.
  5. ^ Ricardo, 2008, p. 55.
  6. ^ a b c d e f Nemitz, 1994, p. 58.
  7. ^ Schwarz & Strachan, 2005, p. 37.
  8. ^ "The First Wave", 2005, p. 42.
  9. ^ a b Cagni, André & Fonseca, Marco (1990年). “Sarcófago: Ame ou Odeie”. Rock Brigade. 2009年1月22日閲覧。 Archived at www.metalpesado.com.br.
  10. ^ a b c Tomasi, Eliton (2008年7月7日). “Tributo ao Sarcófago: a lenda vive”. Rock e Heavy Metal – Whiplash!. 2009年1月27日閲覧。
  11. ^ Filho, 1992, p. 43.
  12. ^ Rivadavia, Eduardo. “((( Rotting > Overview )))”. AllMusic.com. 2009年2月1日閲覧。
  13. ^ a b Filho, 1992, p. 42.
  14. ^ a b Rivadavia, Eduardo. “((( Laws of Scourge > Overview )))”. AllMusic.com. 2009年2月3日閲覧。
  15. ^ a b c d Gimenez, 1995, p. 54.
  16. ^ a b Filho 1992, p. 44.
  17. ^ a b Franzin, 1997, p. 16.
  18. ^ Synnott, 1987, p. 381.
  19. ^ Weinstein, 2000, p. 207.
  20. ^ Nemitz, 1994, p. 58. "Todo playboy que você vê, está com o cabelo comprido, camisetinha do NIRVANA, do PEARL JAM, etc... Não que tenhamos algo contra essas bandas, mas temos contra o embalo. Quando vira moda a gente não acha legal, porque a massificação deturpa a mente."
  21. ^ (1987年) "Desecration of Virgin", p. 2 [CD booklet]. Sarcófago 『I.N.R.I.』のアルバム・ノーツ Belo Horizonte, MG: Cogumelo Records.
  22. ^ Vieira, Matheus (2008年12月16日). “Manu Joker (Sarcófago)”. Novo Metal – O Portal do Metal. 2009年2月5日閲覧。
  23. ^ Sarcófago, 2004, track 2.
  24. ^ (2004年) "Sarcófago: Satanic Lust", p. 3 [CD booklet]. Sarcófago 『Fenriz Presents... The Best of Old-School Black Metal』のアルバム・ノーツ Heckmondwike, West Yorkshire: Peaceville Records.
  25. ^ a b c Franzin, 1997, p. 18.
  26. ^ Moynihan & Søderlind, 2003, p. 36.
  27. ^ Sephiroth (2003年1月10日). “Satyricon – Intermezzo (EP)”. Metal Storm. 2009年1月23日閲覧。
  28. ^ Satyricon, "I.N.R.I." Tribute to Sarcófago, Cogumelo Records, 2001.
  29. ^ Marcus, G. (2005年10月1日). “King – Gorgoroth”. Metal Clube – Home. 2009年2月17日閲覧。
  30. ^ Beherit Interview at the Dark Legions Archive”. ANUS.COM: American Nihilist Underground Society. 2009年1月31日閲覧。
  31. ^ Oliveira, Elimar. “ENTREVISTA: IMPALED NAZARENE (Em Inglês)”. On Line THUNDERGOD ZINE. 2009年2月14日閲覧。
  32. ^ Impaled Nazarene, "The Black Vomit". Tribute to Sarcófago, Cogumelo Records, 2001.
  33. ^ Kenny, David (director) (2007年4月13日). Murder Music: A History of Black Metal (television). United Kingdom: ShashMedia 
  34. ^ Barcinski & Gomes, 1999, p. 31.
  35. ^ Professor » Wagner Moura Lamounier » Faculdade de Ciências”. 2013年8月27日閲覧。


「サルコファーゴ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「サルコファーゴ」の関連用語

サルコファーゴのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



サルコファーゴのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのサルコファーゴ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS