イノセンス
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スタッフ
- 原作 - 士郎正宗(『攻殻機動隊』講談社刊)
- 監督・脚本・絵コンテ - 押井守
- 演出 - 西久保瑞穂、楠美直子
- キャラクターデザイン - 沖浦啓之
- サブキャラクターデザイン・銃器設定 - 西尾鉄也
- メカニックデザイン - 竹内敦志
- プロダクションデザイナー - 種田陽平
- レイアウト - 渡部隆、竹内敦志
- 作画監督 - 黄瀬和哉、西尾鉄也、沖浦啓之
- 美術監督 - 平田秀一
- デジタルエフェクトスーパーバイザー - 林弘幸
- ビジュアルエフェクト - 江面久、 齋藤瑛
- ラインプロデューサー - 三本隆二、西沢正智
- 主題歌 - 伊藤君子/『Follow Me』 (アランフエス協奏曲を編曲したもの)(VideoArts Music)
- 音楽 - 川井憲次
- 音響監督 - 若林和弘
- イメージフォト - 樋上晴彦
- プロデューサー - 石川光久、鈴木敏夫
- 制作 - プロダクション・アイジー
- 製作協力 - スタジオジブリ
- 特別協賛 - エプソン
- 特別協力 - ローソン、読売新聞社、タワーレコード
- 製作 - プロダクション・アイジー、徳間書店、日本テレビ放送網、電通、ウォルト・ディズニー・ジャパン、東宝、ディーライツ、三菱商事
- 配給 - 東宝
作品解説
前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の草薙素子少佐の代わりにバトーがメインキャラクターをつとめる。ただし、九課のチーフ役はトグサが継いでいる。
本編のストーリーのベースは、漫画版『攻殻機動隊』の第6話「ROBOT RONDO」。
作品世界
この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2013年1月) |
本作品は士郎正宗の原作における『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』のように、前作で消息を絶った素子が再び姿を表し、主役として大活躍する作品にはならなかった。押井によれば、終わった後の今の目で見ればそのような展開でも良かったかもしれないと思えるが、当時は自然と本作品で選択した方向性以外に考えられなかったと語っている。また、本作品で直接は描かれなかった「その後の素子」に関しては、テーマとして容を変えて押井の次回作以降で語られるだろうとしている(必ずしも続編としての『攻殻3』を製作するという意味ではない)。
製作
作品名は当初『攻殻機動隊2』だったが、制作協力したスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫の提案により『イノセンス』となった。主題歌として「Follow Me」を提案したのも鈴木である[5]。押井自身も「彼(鈴木)がやったのは2つ。『イノセンス』というタイトルをつけたことと、主題歌」と発言している[6]。タイトルのロゴ・デザインも鈴木の手によるもの。
製作委員会
本格的に企画が動いたのは2000年春[7]。まず取り組んだ作業は、ハリウッドの会社と直接対等に組んで、I.Gが主導権を握って交渉を進めるために、前作の権利を持つ講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENTの3社にスポンサーを外れてもらう交渉を半年掛かりで行った[8]。
2001年2月から、本作の決定稿を持った石川と押井の2人で20世紀フォックス映画・ワーナー・ブラザース・ドリームワークスに「やるか、やらないか」「制作スケジュールはこうで、条件はこうだ」と広告代理店を介さずに直接売り込みに走った[9]。
結果的にドリームワークスと契約したものの、その後も契約面で自分達に厳しい条件を突き付けてくるため、石川は妥協しないで「制作費はこの位かかりますから、高く出して下さい」「投資家は参加させないでください」「期限付きのアジアを除く配給権とビデオ販売権を売ります」と粘った。その結果前作の4倍の制作費を確保することができ、「脚本には口出ししない」という確約も勝ち取った。その代わり、押井に支払われる監督料も当初の半分になった[10]。ただし、アジアでのビデオ販売権はウォルト・ディズニー・ジャパンが持っていたため[11]、当然ドリームワークスが抗議したが石川は「アジアのことには口を出さない約束だろう」と念を押した[12]。
鈴木敏夫は、(スタジオジブリが)製作協力を引き受けるにあたって、「正直迷いました。でも宮崎駿監督が背中を押してくれた。実際にキャンペーンが始まると、「ハウルの動く城のことを全然やっていない」って怒っていたけど[13]」と話す。
アメリカのメジャー映画会社は、『イノセンス』制作にあたって押井との交渉の席で、大衆受けを狙わない姿勢や、話を聞くだけではにわかに理解できない作品内容について難色を示した。それでも説得のため熱弁を振るう押井に、幹部全員が退いてしまい資金捻出を渋ったという。しかし、前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』がアメリカでヒットしていたこともあり、一定の興行収入を得られるとみた映画会社は、『GHOST IN THE SHELL 2』と明記することを条件として最終的に契約を結んだ。
プロモーション
原作および前作のタイトルでもある「攻殻機動隊」シリーズとは切っても切り離せない関係にあるが、鈴木の「『攻殻機動隊2』じゃ売れないよ」「前作を見た12万人のお客様はいらない」と主張して、押井を説得して「イノセンス」として、「攻殻機動隊」は副題にすら入らなかった。国内展開上は『攻殻機動隊』シリーズの新作であることは意図して強調されず、ほぼ独立したオリジナル作品としてプロモーションがなされた[14][注 6]。
映画公開に先立ち、東京都現代美術館で、押井監修の「球体関節人形展」が開かれ、キムのモデルとなった四谷シモン作品などが展示された[15]。
鈴木の主導によってスポットCMはもちろんのこと、宅配ピザの箱・カラオケの歌の本まで宣伝を仕掛け、配給元の東宝は300スクリーンを確保した[16]。
脚本
作中には、以下に示すように多数の箴言の引用が登場する。
これについて押井守は、Yahoo!ブックスが2004年に行ったインタビューの中で、「ダイアログをドラマに従属させるのではなく、映画のディテールの一部にしたかった」のが動機であるとし、「言葉それ自体をドラマのディテールにしたかった。ちょっとした人物が吐くセリフも何物かであってほしい」「可能ならば100%引用で成立させたかった」[17]「これまでは引用した言葉に自分の解釈を加えていたが、それは言葉を劣化させるだけ。引用は飽くまでも引用として、正確に伝えたい」[18]と語っている。
- 月菴宗光 『月庵和尚法語』
- 生死の去来するは棚頭の傀儡たり一線断ゆる時落落磊磊。
- 尾崎紅葉 『徳田秋声の原稿についての添え書き』
- 柿も青いうちはカラスも突つき申さず候。
- 中村苑子 『俳句』
- 春の日やあの世この世と馬車を駆り。
- 高尾太夫 (二代目) 『恋文(として伊達綱宗公へ宛てたもの)』
- 忘れねばこそ思い出さず候。
- 作者なし 『西洋の諺』
- ロバが旅にでたところで馬になって帰ってくるわけではない。
- ラ・ロシュフコー 『考察あるいは教訓的格言・箴言』
- 多くは覚悟でなく愚鈍と慣れでこれに耐える。
- マックス・ヴェーバー 『理解社会学のカテゴリー』
- シーザーを理解するためにシーザーである必要はない。
- リチャード・ドーキンス 『延長された表現型―自然淘汰の単位としての遺伝子』
- 個体が創りあげたものもまた、その個体同様に遺伝子の表現型。
- ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー 『人間機械論』
- 人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である。
映像手法
押井守は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の際に既にアニメ映画の方法論は決したとして、アニメをこれ以上作ろうとは考えていなかったが、『Avalon』でアニメの方法論を実写に取り込み、実写の方法論をアニメに持ち込んでこの映画を制作しようと考えた。即ち、3Dでモデリングされた空間にカメラを持ち込み、それを切り出して(ロケーション・ハンティング)映像を制作しようとした。
だが、3D担当者はそれは不可能であると言い、テスト段階のコンビニエンスストアのシーンにおいて、想像以上のデータ量の前にその目論見は崩れ去った。現に公開されたものでもこのシーンは分割してレンダリングしたものを後に合成するという方法でレンダリング時間を短縮している。本編映像、特に中盤の大祭のシーンは、カメラマップと呼ばれる手法を利用した映像となっている。
また、アニメはキャラクターをセルで描くため、画面をセル画が占拠すると画面内の情報量が失われがちだが、江面久を筆頭とするエフェクトチームがAfterEffectsなどを駆使してそれに対処し、処理速度が停滞すればPower MacG5の大量導入でこれに対処した。
以上の紆余曲折もあり、アニメ映画では初めて、全編にわたってDomino[19]による映像処理が施されたが、それによってセル画が浮いて見えるという評価もあった。これについて押井守は認識していたが、CGによって描きこまれたディテールを損なうフィッティングをあえて行わなかったことを後のインタビューで述べている。ちなみに、IMAXシアターで公開された際にはオープニングのガイノイドの眼球に表示される文字列など細部を見ることができた。
前作のコンピュータ画面が「緑」で統一されていたのに対し、今作では「橙」で統一されていたり、前作の舞台が「夏」に対して今作は「冬」と、映像に差別化が見られる。なお、季節の違いによって差別化を図る手法は、押井が以前に監督した『機動警察パトレイバー the Movie』(「夏」)と『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(「冬」)でも採用されている。
音響手法
本作以前より劇伴作曲家として押井作品に関わってきていた川井憲次による、本作の第2のメインテーマともいえる「傀儡謡(くぐつうた)」のコーラスは75人の民謡歌手(西田和枝社中)を集め(前作では3人)、更にクライマックスに使用された傀儡謡ではコーラスを4回収録し、それを同時に流す事によって音に厚みを持たせた。和太鼓に茂戸藤浩司が起用された[20]。
劇中で使用されたオルゴールの曲は、予めオルゴールから機械録音しておいたものを、大谷石採掘場跡の地下空間で再生し、再度録音したものが使われた。
また音響効果編集は『Avalon』同様スカイウォーカー・サウンドで行われ、迫力の音響世界が創造された。サウンドデザインはアカデミー音響編集賞受賞者のランディ・トムが担当した。この関与は「プリミックス」であり、音楽やセリフ素材を含む整音は日本国内で行われている。
同社の音響製作の可能性に感銘を受けた押井は、『Avalon』で組んだサウンドデザイナーで『ローレライ』や『少林少女』も手がけたスカイウォーカー・サウンドのトム・マイヤーズに『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のサウンドデザイン、2008年の『攻殻機動隊2.0』の音響リニューアルを委ねている。
固有名詞の分類
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