かわせみ やませみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 16:33 UTC 版)
概要
特急「かわせみ やませみ」は、肥薩線を運行する観光列車として、2017年(平成29年)3月4日に運行を開始した。いわゆる「D&S列車」(デザイン&ストーリー列車)のひとつであり、「D&S列車」としては11番目に位置付けられている[1]。
熊本駅 - 人吉駅間の特急列車は、2016年(平成28年)3月26日のダイヤ改正で「くまがわ」が廃止、「九州横断特急」が豊肥本線・日豊本線内のみでの運行となったため一旦消滅していたが、「かわせみ やませみ」の運行開始と、熊本駅 - 人吉駅間で快速運転を行っていた「いさぶろう・しんぺい」が同区間のみ特急列車に格上げされたことで、1年弱で復活することとなった。
2020年7月4日、令和2年7月豪雨により運行区間である肥薩線熊本駅 - 人吉駅間が不通となり[2]、2023年3月現在も長期運休が続いている。そのため肥薩線での運行を行えなくなった。
同年8月8日からは、肥薩線応援企画として鹿児島本線門司港駅 - 博多駅間で「かわせみ やませみ」と「いさぶろう・しんぺい」が併結して土休日を中心に1日1往復運転された。2022年7月2日から同年8月26日までの間は、約2年ぶりに「かわせみ やませみ」編成単独での運転となった。この運行は2022年9月19日まで続けられた[3]。
2022年9月23日ダイヤ改正からは、運行区間を豊肥本線熊本駅 - 宮地駅間に変更した上で土休日を中心に1往復運転を開始した[4]。
運行概況
臨時列車として、土休日を中心に熊本駅 - 宮地駅間で1往復運転されている。
現状としてカウンター席やボックス席などはJR九州インターネット予約やJR西日本e5489などのネット予約サービスには対応しておらず、当座席の指定は駅窓口や旅行センター、主な旅行会社で行っている。
車内にはVR装置を設置しており、沿線案内を目的とした、球磨川下りのラフティングや、疑似的な飛行体験、車両上部からみた列車の運行の視聴体験ができるという[5]。なお、列車上部のからの運行映像については、普通形のキハ47の前面部にカメラを取り付け、撮影したものを提供している。
なお令和2年7月豪雨に伴う鹿児島本線での運行についてはかわせみ やませみ・いさぶろう・しんぺいを参照。
停車駅
- 2022年9月ダイヤ改正以降
同区間を走行する「九州横断特急」「あそ」「あそぼーい!」よりも少ない停車駅となっている。
使用車両・編成
かわせみ やませみ | ||||
← 宮地 熊本 →
| ||||
| ||||
|
キハ47形の2両編成で、大分車両センター所属であったキハ47 8087と直方車両センター所属(南福岡車両区竹下派出常駐)であったキハ47 9051を改造し、専用車としている[5]。改造に伴い、両車とも熊本車両センターに転属した。車両デザインは水戸岡鋭治が担当した[5]。
人吉駅側の1号車キハ47 8087には「かわせみ」の愛称が付けられている。車体色や座席モケットの色は青を基調とした色となっている。また、前位側の扉が撤去されている。車内にはリクライニングシート24席、カウンター席10席+子ども椅子3席、ボックス席4席、ソファ席2席が設置されている。連結面寄りの部分には従来の和式トイレを改造した多目的トイレ(洋式化しウォシュレットをJR九州の車両初導入)したほか、カウンターテーブルを設置している。
熊本駅側の2号車キハ47 9051には「やませみ」の愛称が付けられている。車体色や座席モケットの色は緑を基調とした色となっている。また、後位側の扉が撤去されている。車内にはソファ席4席、リクライニングシート16席、カウンター席4席、「やませみベンチシート」2席、ボックス席8席、ショーケース、ビュッフェ(サービスコーナー)が設けられている。「やませみベンチシート」は幅の広いソファ形の座席で、2号車が指定席の列車の場合「やませみベンチシート」(座席番号:8D、9D)を利用する際は通常の指定席特急料金に210円を加えた料金が必要となる。
車内は自然の香りと温もりを感じる車内スペースを目指しており、随所に人吉・球磨産の杉(床材等)やヒノキ(内装材の一部)、八代産のイグサが使用されている。また車内にある暖簾には八代産のイグサが使用されている[6]。
乗降扉は上記のように、2両とも出入口が1か所ずつ撤去されているため、片側2扉から1扉に変更されている。側面窓の一部はふさがれ、残りはすべて固定窓化されている。また、2両とも改造前にすでにエンジンが換装されており、便所の新設・撤去や2軸駆動化など、車両番号の変更が伴うような改造はされていない。
肥薩線優等列車概略
くまがわ
くまがわ | |
---|---|
球磨川に沿って走る「くまがわ」 | |
概要 | |
種類 | 特急列車 |
現況 | 運行終了 |
地域 | 熊本県 |
前身 | 急行「くまがわ」 |
運行開始 | 2004年3月13日 |
運行終了 | 2016年3月25日 |
後継 | 熊本‐人吉間快速・いさぶろう・しんぺい・かわせみ やませみ |
旧運営者 | 九州旅客鉄道(JR九州) |
路線 | |
起点 | 熊本駅 |
終点 | 人吉駅 |
営業距離 | 87.5 km (54.4 mi)(熊本 - 人吉間) |
使用路線 | JR九州:鹿児島本線・肥薩線 |
車内サービス | |
クラス | 普通車 |
技術 | |
車両 |
185系気動車 (大分車両センター) |
軌間 | 1,067 mm (3 ft 6 in) |
電化 |
交流20,000 V・60 Hz(熊本 - 八代間)[注 2] 非電化(八代 - 人吉間) |
運行速度 | 最高100 km/h (62 mph) |
特急「くまがわ」は、2004年3月13日の九州新幹線鹿児島ルート部分開業の際に、熊本駅 - 人吉駅間を運行していた同名の急行列車を特急に格上げする形で運行を開始した。「くまがわ」の列車名は1959年4月1日に運行を開始した門司港駅 - 人吉駅間運行の準急列車に初めて用いられた。1966年3月1日に急行列車に格上げされた。1980年10月1日には博多駅発着に変更され、博多駅 - 熊本駅間は快速列車として運行されるようになった。また、人吉駅以遠は普通列車として同じ肥薩線の吉松駅や、湯前線(現在のくま川鉄道湯前線)湯前駅まで乗り入れていた時期もあった。
1989年3月11日のダイヤ改正によって、運行区間が現行と同じ熊本駅 - 人吉駅間に変更された。本数もそれまでの1往復から4往復に増発された。これにより、熊本市と熊本県南部地域の都市間輸送の性格がより濃くなった。2000年3月11日のダイヤ改正より6往復運転となった。これは同改正をもって廃止された宮崎駅発着の急行「えびの」の熊本駅 - 人吉駅間を編入したため。
2004年3月13日の鹿児島ルート部分開業の際に熊本駅 - 人吉駅間の優等列車はすべて特急に格上げされた。この際、発着の「九州横断特急」が人吉駅まで延長運転する形態になり、熊本駅発着列車は「くまがわ」とされた。これに伴い、2系統の列車が運行されるようになった。この詳細は「九州横断特急」の項目も参照。2011年3月12日のダイヤ改正で、熊本駅 - 人吉駅間の特急列車はそれまでの6往復から5往復に削減された。「くまがわ」自体の本数は特急化当初が2.5往復、2011年3月12日以降は3.5往復であったが、2013年3月16日のダイヤ改正で1往復に削減された。これは、「九州横断特急」4往復がすべて人吉駅発着となったため。2013年8月4日では、豊肥本線全線運転再開に合わせ、「九州横断特急」の1本が熊本駅で系統分離され、1.5往復となった。
2016年3月26日のダイヤ改正で、「九州横断特急」の熊本駅 - 人吉駅間と共に「くまがわ」は廃止された。同時に、熊本駅 - 人吉駅間は新たに快速列車の運行により代替された[7]。
熊本駅 - 人吉駅間に下り2本・上り1本の計1.5往復が運行されていた。この区間には別府駅発着の「九州横断特急」が下り3本・上り4本設定されており、合わせて5往復の特急列車が運行されていた。号数・列車番号は全区間、号数に1080Dを加算していた。
「九州横断特急」と同様にワンマン運転を行っていた。このため、ドアの開閉はワンマン運転時は運転士が開閉前にアナウンス後に行っていた。また、車内放送は自動放送によって行われていた。客室乗務員による車内改札・車内放送および車内販売は人吉駅での折り返しが「九州横断特急4号」となる「くまがわ1号」のみで行われていた[8]。多客期に3両で運行する際には車掌も乗務していた。
「くまがわ1号」は2015年3月14日以降、JR九州管内を運行する列車では九州新幹線の列車および「D&S列車」を除いて、唯一車内販売の営業が行われる列車となっていた。
停車駅
熊本駅 - 新八代駅 - 八代駅 - 坂本駅 - 一勝地駅 - 渡駅 - 人吉駅
- 八代駅 - 人吉駅間では、上下線の列車待ち合わせのため、白石駅や瀬戸石駅にて運転停車することがあった。
- 熊本駅 - 八代駅間では、過去に肥薩おれんじ鉄道に乗り入れていた快速「スーパーおれんじ」は無停車であり、新八代駅に停車する分停車駅は「くまがわ」の方が多くなっていた。
使用車両・編成
くまがわ | ||||
← 人吉 熊本 →
| ||||
| ||||
|
大分鉄道事業部大分車両センターに配置されている185系気動車の「九州横断特急」仕様の車両を充当しており、車両運用も九州横断特急の車両運用の一部に組み込まれていた。基本的に2両編成で運転されるが、多客期には3両編成で運転される場合があった。全車普通車のみで、グリーン車は連結されていなかった。
かわせみ やませみ(2020年7月3日以前)
かわせみ やませみ | |
---|---|
人吉駅に停車する「かわせみ やませみ」 (2017年5月16日) | |
概要 | |
国 | 日本 |
種類 | 特別急行列車 |
地域 | 熊本県 |
前身 | 特急「くまがわ」[注 3] |
運行開始 | 2017年3月4日 |
運行終了 | 2020年7月3日(最終運行) |
運営者 | 九州旅客鉄道(JR九州) |
路線 | |
起点 | 熊本駅 |
終点 | 人吉駅 |
運行間隔 | 3往復 |
使用路線 | 鹿児島本線・肥薩線 |
車内サービス | |
クラス | 普通車 |
座席 |
普通車指定席:1・2号車 普通車自由席:2号車(1・2号) |
技術 | |
車両 |
キハ47形気動車 (熊本車両センター) |
軌間 | 1067 mm |
電化 |
交流20,000 V・60 Hz(熊本 - 八代間)[注 4] 非電化(八代 - 人吉間) |
熊本駅 - 人吉駅間に3往復(うち1往復は多客期運転の臨時列車)が運行されていた[9]。同区間には特急「いさぶろう・しんぺい」1往復と合わせて、4往復の特急列車が運行されていた。
運行ダイヤとしては、前身である肥薩線快速のものを概ね引き継ぐ形になっていたが、折り返しの際の清掃作業や準備のためや、途中駅での見学のための停車時間が設けられるなどしたために、一部列車で運行時刻が最大で30分異なった。列車番号は更に前身の「くまがわ」と同様、号数に1080Dを加算する形となった。
通常は、2両ワンマンのため車掌は乗務しておらず、客室乗務員が車内改札を行っていた。ただし1号と平日の2号には客室乗務員は乗務しなかった(なお、夏休みや春休み等の行楽期にはこの限りではなかった)。
停車駅
熊本駅- 新八代駅 - 八代駅 - 坂本駅 - 一勝地駅 - 渡駅 - 人吉駅
かつて運行されていた「くまがわ」「九州横断特急」と基本的に同じ停車駅であるが、一部列車が停車していた松橋駅、球泉洞駅はすべての列車が通過していた。また3号は一勝地駅で7分、4号は同じく一勝地駅で7分、坂本駅で5分観光のために停車するため、熊本駅 - 人吉駅間の所要時間が従来の特急・快速列車より延びている列車もあった。
使用車両・編成
かわせみ やませみ | ||||
← 人吉 熊本 →
| ||||
| ||||
| ||||
|
全車普通車で、1・2号の2号車は自由席、その他の車両は座席指定席となっていた。
なお、「かわせみ やませみ」専用車両のどちらかが検査に出ている場合には、残りの1両と「いさぶろう・しんぺい」用のキハ140 2125を連結した2両編成で運転していた[10]。 またお盆や行楽期などの多客期には所定2両編成にキハ140 2125を増結した3両編成で運転され、車掌が乗務した。
なお、「いさぶろう・しんぺい」用のキハ140 2125と「かわせみ やませみ」専用車両のどちらかが2両同時に検査に出ている場合には、普通列車用のキハ147もしくはキハ47を連結もしくは、増結して運転される[11][12]。この場合キハ140 2125で使用する車両は乗車券と自由席特急券で、普通列車用の気動車で代走する車両は乗車券のみで乗車できる措置が取られていた。
注釈
出典
- ^ 『新しいD&S列車の列車名・デザインが決定!』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2016年4月13日。 オリジナルの2020年4月25日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ “7月豪雨「肥薩線被害は100億円超も」 JR九州社長、熊本地震超え最大級の認識”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2020年9月11日) 2020年9月15日閲覧。
- ^ “夏季期間の臨時列車運転のお知らせ”. 九州旅客鉄道. 2023年3月9日閲覧。
- ^ a b “2022 年 9 月 23 日ダイヤ改正(全社版)”. 九州旅客鉄道. 2022年6月10日閲覧。
- ^ a b c 。JR九州、新観光列車「かわせみ やませみ」お披露目 - ジョルダンニュース(2017年2月27日、同日閲覧)
- ^ 『JR九州11番目のD&S(デザイン&ストーリー)列車 「かわせみ やませみ」の車内に地元の素材を使用します!!』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2016年11月9日。 オリジナルの2016年12月28日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ a b 『平成28年春ダイヤ改正』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2015年12月18日。 オリジナルの2019年5月10日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ “車内販売サービスのご案内”. 九州旅客鉄道. 2015年12月25日閲覧。
- ^ a b 『平成29年春ダイヤ改正』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2016年12月16日。 オリジナルの2020年4月25日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ キハ140 2125が“かわせみ やませみ”に『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース 2017年5月9日
- ^ 一般車が連結した場合は、自由席と案内された。
- ^ 特急“かわせみ やませみ”にキハ147 182が連結される『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース 2017年11月5日
- ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '00年版』ジェー・アール・アール、2000年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-121-X。
- ^ 列車事故:観光特急がトラックに衝突、11人けが 熊本 - 毎日新聞、2017年11月3日
- ^ “鉄道運転事故等の発生状況(安全報告書2018)” (PDF). 九州旅客鉄道 (2018年). 2018年9月12日閲覧。
- ^ 『平成30年3月にダイヤを見直します』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2017年12月15日。 オリジナルの2020年5月7日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ 『(熊本エリア)平成30年3月にダイヤを見直します』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2017年12月15日。 オリジナルの2019年10月14日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ “山陽・九州新幹線、特急列車時刻表-2020年春ダイヤ-” (PDF). 九州旅客鉄道. 2019年12月12日閲覧。
- ^ 『新型車両を投入し、通勤・通学をより快適にします ダイヤをよりわかりやすく利用しやすくします』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2019年12月13日、3頁。 オリジナルの2019年12月24日時点におけるアーカイブ 。2020年7月1日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルス感染拡大に伴う今後の運転計画について”. 九州旅客鉄道. 2020年3月16日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルス感染拡大に伴う追加の運転計画について(3月24日追加)”. 九州旅客鉄道. 2020年3月20日閲覧。
- ^ 新型コロナウイルス感染拡大に伴う追加の運転計画について(4月8日追加) - 九州旅客鉄道(2020年4月8日)
- ^ “新型コロナウイルス感染拡大に伴う運転計画について (2020年4月21日追加)”. 九州旅客鉄道. 2020年4月21日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルス感染拡大に伴う追加の運転計画について”. 九州旅客鉄道. 2020年4月21日閲覧。
- ^ ““かわせみ やませみ”“いさぶろう・しんぺい”連結列車博多~門司港間の特別運行を延長します!!”. 九州旅客鉄道. 2020年12月20日閲覧。
- ^ “はやとの風 9月19日から運休 JR九州”. 南日本新聞 (2020年8月18日). 2020年9月15日閲覧。
- かわせみ やませみのページへのリンク