解析接続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/20 16:12 UTC 版)
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解析学において、解析接続 (かいせきせつぞく、英: analytic continuation) とはリーマン球面 C 上の領域で定義された有理型関数に対して定義域の拡張を行う手法の一つ、あるいは、その拡張によって得られた関数のことである[1][2][3][4]。
定義
ここでは、有理型関数の解析接続を定義する。正則関数に限って定義することもあるが、有理型関数は、分母分子ともに正則関数である分数で表されるような関数なので、有理型関数の解析接続の定義は、正則関数の解析接続の定義も含んでいる。正則関数で定義する場合はローラン級数の代わりに、 テイラー級数を用いる。
関数要素
リーマン球面 C の領域 D において定義された有理型関数 f(z) は任意の w ∈ D においてローラン展開が可能であり k を整数として
-
二つの領域の共通部分の連結成分は一つとは限らない。一般に、どの重なりを用いて直接接続を行うかで、解析接続は異なる。 解析接続
fm(z) は、複素平面の領域 Dm を定義域とする有理型関数とする。
D1 ∩ D2 が空でないとし、その連結成分の一つ P1 を取る。 f1 と f2 の w ∈ P1 での関数要素が等しいとき、 連結成分 P1 全体で f1(z) ≡ f2(z) となる。このとき f2(z) を f1(z) の 直接解析接続 (direct analytic continuation) あるいは単に 直接接続 (direct continuation) という。
- D1 ∩ D2 は単連結とは限らず、複数の連結成分よりなっていることもあり、直接接続は連結成分 P1 の選び方に依存する。
有理型関数 f1(z) に対し、 f1(z) の直接接続 f2(z) を取り、 f2(z) の直接接続 f3(z) を取り、 … と順に直接接続を取ってできる有理型関数の列
- f1(z), f2(z), f3(z), …
のことを解析接続 (analytic continuation) といい、その集合
- {fn(z)|n∈N}
を 解析関数 (analytic function) という。一般に直接接続の選び方によってできあがる解析接続は異なる。
例
-
等比級数とそれの解析接続を複素平面上で可視化したもの。左図の水色点はsを表しており、水色の円形領域は級数∑∞
k=0 sk の収束半径を示している。
右図の連結した黄線は、∑∞
k=0 sk の有限和∑n
k=0 sk において、n=0からn=20までの値をプロットし、それを繋いだものである。緑点は1/1−sを表している。 sが収束半径内にあるとき、有限和の値は1/(1-s)に吸い込まれる螺旋状に変化することがわかる。sが収束半径外にあるとき、有限和の値は中心を1/(1-s)として外側に広がる螺旋状に変化することがわかる。 - ※ 以下の説明においてi は虚数単位とする。
-
左の青い領域で定義された関数要素が、右の緑の領域で定義される関数要素まで曲線に沿って解析接続される リーマン球面 C 上の点 a, b を結ぶ曲線、すなわち
- φ : [0,1] → C
- φ(0) = a, φ(1) = b
という連続関数を考え、この曲線上の全ての点に関数要素を与える。与え方は無数にあるが、任意の t0 ∈ [0,1] および、ある正の実数 ε > 0 に対して |t − t0| ≤ ε を満たす t ∈ [0,1] における関数要素が t0 を中心とする関数要素の直接接続となるように各点に関数要素を与える。
- 要は十分近い点で定義されている関数要素同士は、互いに直接接続となるように定めるということである。
このような関数要素の族を与えることが可能なとき、a を中心とする関数要素はこの曲線に沿って解析接続可能 (analytically continuable) であるという。曲線を定めると、その曲線に沿った解析接続は一意に決まる。
- 要は、与えられた曲線上に中心を持つ関数要素を次々と取っていくことで曲線に沿った解析接続ができる。
a を中心とする関数要素 fa(z) が与えられたとき、 a を始点とするあらゆる連続曲線を考え、それらの曲線に沿った解析接続を行って得られる関数をワイエルシュトラスの解析関数という。
2つの曲線 φ0(t) と φ1(t) がホモトープであり、そのホモトピーが
- H(s,t): [0,1] × [0,1] → C
- H(0,t) = φ0(t) ,H(1,t) = φ1(t)
を満たすとする。任意の (s,t) ∈ [0,1] × [0,1] に対し、 関数要素 F(s,t)(z) が定められ、この関数要素の集合は、ホモトピーで s を任意に固定して得られる曲線
- φs(t) = H(s,t)
に沿った解析接続になっているとする。適当な H(0,0) の近傍で F(0,0)(z) = F(s,0)(z) (s ∈ [0,1]) であるならば、H(0,1) の適当な近傍を取ると F(0,1) = F(1,1) となり終点で値が一致する。
複素平面から負実数閉半直線をのぞいた領域上での自然対数の解析接続の虚部 このようなホモトピーと関数要素の集合が取れない場合は、ワイエルシュトラスの解析関数は一般に多価関数となる。つまり、「関数の定義域」S に穴(特異点)があるとき一般には経路の連続変形の際にそこを無視できず、ホモトープでない曲線同士では、解析接続をしていっても同じ関数要素に辿り着くとは限らない。たとえば自然対数を
解析接続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 15:08 UTC 版)
詳細は「解析接続」を参照 正則関数の重要な性質に、正則関数の連結な領域上全体での挙動が任意のより小さい領域上の挙動によって決定されてしまう(一致の定理)、というものがある。大きい領域全体でのもとの関数は小さい領域上に制限して考えたものの解析接続とよばれる。このような原理によってリーマンゼータ関数など、限られた領域上でしか収束しない級数によって定義されていた関数を複素平面全体に正則関数や有理型関数として拡張することが可能になる。場合によっては自然対数などのように複素平面内の単連結でない領域への解析接続が不可能なこともあるが、リーマン面とよばれる曲面を導入することでその上の正則関数としての「解析接続」を考えることができる。
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