曲線に沿った解析接続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 01:24 UTC 版)
リーマン球面 C 上の点 a, b を結ぶ曲線、すなわち φ : [0,1] → C φ(0) = a, φ(1) = b という連続関数を考え、この曲線上の全ての点に関数要素を与える。与え方は無数にあるが、任意の t0 ∈ [0,1] および、ある正の実数 ε > 0 に対して |t − t0| ≤ ε を満たす t ∈ [0,1] における関数要素が t0 を中心とする関数要素の直接接続となるように各点に関数要素を与える。 要は十分近い点で定義されている関数要素同士は、互いに直接接続となるように定めるということである。 このような関数要素の族を与えることが可能なとき、a を中心とする関数要素はこの曲線に沿って解析接続可能 (analytically continuable) であるという。曲線を定めると、その曲線に沿った解析接続は一意に決まる。 要は、与えられた曲線上に中心を持つ関数要素を次々と取っていくことで曲線に沿った解析接続ができる。 a を中心とする関数要素 fa(z) が与えられたとき、 a を始点とするあらゆる連続曲線を考え、それらの曲線に沿った解析接続を行って得られる関数をワイエルシュトラスの解析関数という。 2つの曲線 φ0(t) と φ1(t) がホモトープであり、そのホモトピーが H(s,t): [0,1] × [0,1] → C H(0,t) = φ0(t) ,H(1,t) = φ1(t) を満たすとする。任意の (s,t) ∈ [0,1] × [0,1] に対し、 関数要素 F(s,t)(z) が定められ、この関数要素の集合は、ホモトピーで s を任意に固定して得られる曲線 φs(t) = H(s,t) に沿った解析接続になっているとする。適当な H(0,0) の近傍で F(0,0)(z) = F(s,0)(z) (s ∈ [0,1]) であるならば、H(0,1) の適当な近傍を取ると F(0,1) = F(1,1) となり終点で値が一致する。 このようなホモトピーと関数要素の集合が取れない場合は、ワイエルシュトラスの解析関数は一般に多価関数となる。つまり、「関数の定義域」S に穴(特異点)があるとき一般には経路の連続変形の際にそこを無視できず、ホモトープでない曲線同士では、解析接続をしていっても同じ関数要素に辿り着くとは限らない。たとえば自然対数を log t := ∫ 1 t 1 z d z {\displaystyle \log t:=\int _{1}^{t}{1 \over z}dz} で定義するとき、z = 0 の部分は特異点となりこのような関数要素はとることができない。この積分は 1 から t へ到る曲線を与えることによってその値が定まる。 z = 0 を通らない z = 1 を始点とする曲線をいろいろ考えることによって得られる解析関数は多価関数となり、対数関数は複素数の範囲では多価関数になるという事実に対応している。
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