sinx/x の x → 0 における極限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 10:17 UTC 版)
「三角関数」の記事における「sinx/x の x → 0 における極限」の解説
sinx/x の x → 0 における極限が 1 であることを証明するときに、中心角 x ラジアンの扇形の面積を2つの三角形の面積ではさんだり、弧長を線分の長さではさんだりして、いわゆるはさみうちの原理から証明する方法がある。これは一般的な日本の高校の教科書にも載っているものであるが、循環論法であるため論理が破綻しているという主張がなされることがある。ここで問題となるのは、証明に面積やラジアン、弧長が利用されていることである。例えば面積について言えば、面積は積分によって定義されるものであるとすると、扇形の面積を求めるには三角関数の積分が必要となる。三角関数の積分をするには三角関数の微分ができなければならないが、三角関数を微分するにはもとの極限が必要になる。このことが循環論法と呼ばれているのである。 単位円板の面積が π であることを自明な概念と考えてしまえば循環論法にはならないが、これはいくつかの決められた公理・定義から論理的演繹のみによって証明されたものだけを正しいと考える現代数学の思想とは相反するものである。循環論法を回避する方法の 1 つは、正弦関数と余弦関数を上述のような無限級数で定義するものである(これは三角関数の標準的な定義の 1 つである。また、この無限級数の収束半径は無限大である(すなわち任意の実数や複素数で収束する))。この定義に基づいて lim x → 0 sin x x = 1 {\displaystyle \lim _{x\to 0}{\frac {\sin \,x}{x}}=1} を示すことができる。 しかしながら、このように定義された三角関数が、本来持つべき幾何学的な性質を有しているかどうかは全く明らかなことではない。これを確かめるためには、三角関数の諸公式(周期性やピタゴラスの基本三角関数公式等)を証明し、また円周率は、余弦関数の正の最小の零点(つまり、cosx = 0 となる正の最小の値)の存在を示し、その 2 倍と定義する。すると、 x ↦ ( cos x , sin x ) {\displaystyle x\mapsto (\cos x,\sin x)} が区間 [0, 2π) から単位円周への(「反時計まわりの」)全単射であることを示すことができる。(連続微分可能な)曲線の長さを積分によって定義すれば、単位円周の長さが 2π であることなどがわかり、上のように定義された三角関数や円周率は、初等幾何での三角関数や円周率の素朴な定義と同じものであることが分かった 。
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