erythroblastとは? わかりやすく解説

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赤芽球 ( erythroblast )

赤血球に育つまえの血液細胞のこと。新生児以外の場合正常な状態では存在しませんが、溶血性貧血白血病、がんの骨髄転移などのとき、この細胞血液中に出現することがあります

赤芽球

(erythroblast から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/29 04:06 UTC 版)

真性多血症の末梢血標本で見られた赤芽球。右上に二つある有核細胞のうち丸い核のものが好塩基性赤芽球、左下にある2つの有核細胞の大きいほうが多染性赤芽球、小さいほうが正染性赤芽球。一番右上と右下のいびつな核の細胞は白血球である。
造血幹細胞とその細胞系統

赤芽球(せきがきゅう、: erythroblast)とは骨髄中に存在する幼若な血液細胞であり、造血幹細胞から赤血球にいたる分化途中段階の細胞である。成熟して脱核し赤血球になる。赤芽球は骨髄中[※ 1]に存在し、出生直後を除き、健康人では末梢血には認めない。末梢血に赤芽球が現れた場合は有核赤血球と呼び、骨髄の異常や骨髄への強いストレスが示唆される。

分化過程

赤血球は造血幹細胞を基にし、次第に分化・成熟して完成する。 その段階は、造血幹細胞(HSC)、共通骨髄系前駆細胞(CMP)、赤芽球・巨核球系前駆細胞、前期赤芽球系前駆細胞(BFU-E)、後期赤芽球系前駆細胞(CFU-E)、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、(網赤血球)、赤血球であるが、前駆細胞は形態的には赤血球系との同定は困難であり、形態学的に通常は前赤芽球がもっとも幼若な赤芽球とみなされ、脱核する前の正染性赤芽球までが赤芽球とされる。 若い細胞ほど細胞分裂能が高いが、多染性赤芽球の段階まで細胞分裂能はある。[1][2][3]

正染性赤芽球の段階になると細胞分裂能は失われ、やがて核が抜け落ちて赤血球となる。

次項以下、赤芽球の分化・成熟の各段階について述べるが、成熟は連続的な過程であり、各段階は必ずしも明確に分けられるものではなく、形態的な特徴から総合的に判断される。一般的な傾向としては、核は成熟するにつれて小さくなり(核・細胞質比も低下)、リボソームを産生する核小体も消失し、クロマチンは粗大化していく。最終的には、核濃縮を経て脱核にいたる。細胞質は、初期にはリボソームのRNAにより青色(塩基性)であるが、灰青色をへて、最終的にはヘモグロビンの蓄積によりピンク色(好酸性)になる[4]

前赤芽球

前赤芽球:①核小体、②核周明庭(ゴルジ野)

前赤芽球(Proerythroblast[※ 2])は、 造血幹細胞から前駆細胞を経て分化してきて、形態的に赤血球系と認識できる最初の段階である[4]

前赤芽球の径は12〜20 μm程度である。核は細胞質の大部分を占め、円形から卵円形、クロマチンは顆粒状繊細で、核小体が1、2個みられる。細胞質は濃青色で、ゴルジ体に相当する核周明庭(核のまわりの明るく見える部分)を認める。 このステージでは、ヘモグロビン産生に必要な機構が整備される(鉄の取り込みに必要なタンパク質・酵素、プロトポルフィリンやグロビンの合成開始、など)[4]

前赤芽球は分裂能をもつ。成熟して好塩基性赤芽球になるまでに複数回の分裂が可能であり、 最終的には、1個の前赤芽球から8から32個の成熟赤血球が生成するのが通常である[4]

前赤芽球の段階はおよそ24時間強持続する[4]

好塩基性赤芽球

好塩基性赤芽球

好塩基性赤芽球(Basophilic erythroblast)は、径10~15 μm、核クロマチンは凝縮を始め顆粒状、核小体はない(初期には存在することがある)。 細胞質は濃青色(好塩基性)で前赤芽球に比べて濃い。ヘモグロビンの合成は始まっているが、細胞質のリボソームやRNAの青色に覆い隠されている。核周明庭も認める[4]

好塩基性赤芽球は分裂能をもち、成熟して多染性赤芽球になるまでに複数回の分裂が可能である。 好塩基性赤芽球のステージはおよそ24時間強持続する[4]

多染性赤芽球

多染性赤芽球
多染性赤芽球

多染性赤芽球(Polychromatic(Polychromatophilic) erythroblast)は、径10~12 μm程度で、核クロマチンは粗大・一部塊状、核小体はない。細胞質は淡青色にヘモグロビンの色調(橙紅色)が加わり灰青色となる。細胞内ではヘモグロビンの合成が増加しており、このステージではじめてヘモグロビンのピンクが識別できるようになる。リボソームやRNAの青色とヘモグロビンのピンクが同時にみられるため、多染性と呼ばれる。 多染性赤芽球は細胞分裂が起こりうる最後のステージである。 多染性赤芽球のステージはおよそ30時間程度持続する[4]

正染性赤芽球

正染性赤芽球
正染性赤芽球
ハウエルジョリー小体

正染性赤芽球(Orthochromatic erythroblast)の径は8~10 μm、核クロマチンは完全に濃縮している。 細胞質は赤血球に近いピンク色になるが、 わずかに残ったリボソームのため青みを帯びている。 ヘモグロビンの合成はまだ持続しているが、細胞分裂はもはや起こらない[4]

このステージはおよそ48時間程度持続し、その終わり頃に脱核が起こり、赤芽球から赤血球に移行する[4]

なお、脱核後も核の一部が細胞内に残存することがあるが、骨髄外に放出され脾臓を通過する際に除去される。脾臓機能低下や摘脾後等に末梢血中の赤血球内でハウエルジョリー小体として観察される[4]

多染性赤血球(網赤血球)

多染性赤血球/網赤血球
ピンクの成熟赤血球と青みがかった多染性赤血球
網赤血球

核を失った直後の赤血球の細胞質はヘモグロビンによりピンクを呈しているが、残存しているリボソームやRNAのため、青みを帯びており、 多染性赤血球(Polychromatic erythrocyte)と呼ばれる。 ニューメチレンブルーで超生体染色を行うと残存しているリボソームが青い網状に描出されるため、網赤血球(Reticulocyte)ともいう[4]

多染性赤血球は成熟赤血球よりは容積が大きい。径は8-10 μm程度である。 これ以降は核が存在しないため、細胞分裂はおこらない。 核以外のミトコンドリアなどの細胞小器官オートファジーで分解されていき、細胞質の青みも消失し最終的には成熟赤血球と同じピンク色になる。 また、細胞膜の再構成が進み、成熟赤血球のような両凹の形態に向かっていく[4]

多染性赤血球(網赤血球)は骨髄内に1〜2日滞在した後は末梢血に移行し、さらに1日を経て成熟赤血球となる。 骨髄外に放出されてから脾臓を通過する際に脾臓のマクロファージにより残存している封入体の処理や膜の再構成が行われ、 両凹の成熟赤血球が完成する。成熟赤血球の径は7-8 μm程度である。細胞内はヘモグロビンが大部分を占め、酸素運搬能を発揮する。 成熟赤血球の寿命は約120日であり、老化した赤血球は脾臓のマクロファージにより除去される[4]

種類 英名 イメージ図 直径[4] 骨髄像における
比率[5]
分裂能 細胞質の塩基性
前赤芽球 Proerythroblast 12-20 μm 0–3.0 % ++ +
好塩基性赤芽球 Basophilic erythroblast 10-15 μm 0.5–13.5 % ++ +
多染性赤芽球 Polychromatic erythroblast 10-12 μm 7.8–34.5 % + +-
正染性赤芽球 Orthochromatic erythroblast 8-10 μm 0.5–16.5 % 無し -
参考(赤血球 Erythrocyte 7-8 μm 骨髄像ではカウントしない) 無し -

赤芽球島

赤血球骨髄造血幹細胞から作られるが、その分化・成熟には骨髄においてマクロファージが大きく関わっている。 骨髄において、赤血球の幼若な段階である赤芽球はマクロファージを中心にその回りを取り囲むように数個から数十個が集団で寄り集まっている。中心に存在するマクロファージは赤芽球に接し、ヘモグロビンの合成に不可欠な鉄や細胞の生育に必要な物質を供給し、成熟をコントロールし、また脱核させた核の処理や、不要になった赤血球細胞の除去にも関与している[1] [6]。 この、骨髄内においてマクロファージを中心に赤芽球が集まり、赤血球の形成に関わっている細胞集団を赤芽球島(もしくは赤芽球小島)という[1]

赤血球形成に必要なホルモン・サイトカイン

エリスロポエチン(Erythropoietin:EPO)は赤血球形成を促進する主要なホルモンである。主に腎臓の線維芽細胞様間質細胞で低酸素を感知して分泌される。 EPOは赤芽球系前駆細胞(主にBFU-E、CFU-E)の生存・増殖・赤血球への分化を促進する。エリスロポエチン製剤は腎性貧血など赤血球の産生促進が必要な病態で治療薬として広く用いられている[4]

サイトカインとしては、幹細胞因子英語版 (Stem cell factor:SCF)、インターロイキン3(IL-3)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor:GM-CSF)が、造血幹細胞や赤芽球系の前駆細胞の増殖と分化に重要な役割を果たしている[4]

赤芽球系の異常

巨赤芽球

巨赤芽球(megaloblast)とは、DNA合成障害(ビタミンB12や葉酸の欠乏症、抗がん剤、など)のために赤芽球の成熟が障害されたものである。 形態的には、単に細胞が大きいのみならず、細胞質の成熟度合いに比べ核の成熟が遅れている(クロマチンの凝縮が進んでいない)のが特徴である(核細胞質成熟乖離)[4]

有核赤血球

有核赤血球

白血病などの骨髄疾患や赤血球形成亢進などにおいて、赤芽球(ステージを問わず)が末梢血に出現することがあり、これを有核赤血球とよぶ。 出生直後は健常児でもみられるのを除き、異常所見であり、白血病をはじめとする骨髄疾患、貧血・低酸素血症による赤血球形成亢進、全身状態不良、髄外造血、など、さまざまな病態でみられる[7]

脚注

注釈

  1. ^ 胎生期の造血は、妊娠初期に卵黄嚢に始まる(一次造血)。続いて、成人型の造血(二次造血)の起源となる造血幹細胞が、背側大動脈–生殖隆起–中腎領域(AGM)で作られる。造血幹細胞は肝臓に移行し、妊娠中期までは肝臓が主たる造血の場となる。ついで、造血幹細胞は骨髄に移行して妊娠後期以降には骨髄が主たる造血の場となり、成人に至る。
  2. ^ 英語では赤芽球はerythroblastと呼ぶのが通常であるが、一部の文献では古い用語でnormoblastと呼ぶことがあり、その場合、前赤芽球はpronormoblastと呼ぶ。以下、basophilic normoblast、polychromatic normoblast、… と続く。

典拠

  1. ^ a b c 『三輪血液病学 第3版』p120-124
  2. ^ 『三輪血液病学 第3版』p242-244
  3. ^ 有信洋二郎, 赤司浩一 (2011). “造血幹細胞からの骨髄球系細胞の分化”. アレルギー 60 (7): 817–822. doi:10.15036/arerugi.60.817. 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Keohane, E. M., Preston, M. M., Mirza, K. M., Walenga, J. M. (15 April 2024). Rodak’s Hematology - E-Book: Rodak’s Hematology - E-Book. Elsevier Health Sciences. ISBN 978-0-323-93762-7. https://www.google.co.jp/books/edition/Rodak_s_Hematology_E_Book/pukCEQAAQBAJ?hl=en&gbpv=1&dq=rodak+erythroblast&pg=PA79&printsec=frontcover 
  5. ^ Parmentier S, Kramer M, Weller S, Schuler U, Ordemann R, Rall G (2020). “Reevaluation of reference values for bone marrow differential counts in 236 healthy bone marrow donors.”. Ann Hematol 99 (12): 2723–2729. doi:10.1007/s00277-020-04255-4. PMC 7683448. PMID 32935189. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7683448/. 
  6. ^ 三輪『血液細胞アトラス』p77
  7. ^ May, Jori E; Marques, Marisa B; Reddy, Vishnu VB; Gangaraju, Radhika (2019). “Three neglected issues in the CBC: The RDW, MPV, and NRBC count”. Cleve Clin J Med 86 (3): 167-172. doi:10.3949/ccjm.86a.18072. PMID 30849034. https://doi.org/10.3949/ccjm.86a.18072. 

参考文献

  • 浅野 茂隆、内山 卓、池田 康夫 監修、『三輪血液病学 第3版』文光堂、2006
  • 三輪史朗、渡辺陽之輔共著『血液細胞アトラス』第5版、文光堂、2004

関連項目

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