The Adventure of the Illustrious Clientとは? わかりやすく解説

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高名な依頼人

(The Adventure of the Illustrious Client から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 02:42 UTC 版)

高名な依頼人
著者 コナン・ドイル
発表年 1925年
出典 シャーロック・ホームズの事件簿
依頼者 不明(後述[1]
発生年 1902年[2]
事件 ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の婚約破棄
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高名な依頼人」(こうめいないらいにん、The Adventure of the Illustrious Client)は、イギリスの小説家、アーサー・コナン・ドイルによる短編小説。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、56ある短編小説のうち50番目に発表された作品である。イギリスの「ストランド・マガジン」1925年2・3月号、アメリカの「コリアーズ・ウィークリー」1924年11月8日号に発表。1927年発行の第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』(The Case-Book of Sherlock Holmes) に収録された[3]。ゲストスターのグルーナー男爵はモリアーティ教授に次ぐホームズシリーズの名悪役として知られる。

あらすじ

"正典"には1902年9月3日に始まった事件と記されている。

トルコ風呂でくつろいでいたホームズとワトソンの元に、ジェームズ・デマリー卿からある特別な事件について依頼したいのでベーカー街を訪れるという内容の手紙が届いた。手紙に記された時間通りに訪れたデマリー卿は、ド・メルヴィル将軍の娘ヴァイオレット・ド・メルヴィルがヨーロッパ大陸で女性に対する数々の悪事(妻への殺害疑惑を含む)を働いたオーストリア貴族のグルーナー男爵にだまされて婚約してしまった(前述の殺害疑惑も濡れ衣と思い込まされている)こと、依頼は「非常に高名な、非常に身分の高い」ある人物からのもの(デマリー卿はその代理人)で、この婚約を壊してほしいというものであることを説明する。ホームズはデマリー卿に本当の依頼人は誰か聞くが、デマリー卿は依頼人が匿名を望んでいること、その名がこの事件に一切関与しないことが重要であることを告げ、依頼人の名前は言わなかった。

グルーナー男爵は狡猾な男で、直接会いに来たホームズに婚約破談のために調査をしても無駄であるから手を引くように丁寧に言うと、「同じようなことをやったフランスのルブラン[4]」という探偵が一生不自由な肉体にされたという話をして“警告”する。

ホームズはいったん下がるが、ロンドンの裏社会に詳しい情報屋シンウェル・ジョンソンからグルーナー男爵の被害者である女性のキティ・ウィンターを紹介され、当初彼女にメルヴィルの娘を説得してもらおうとしたが、ウィンターがふと「グルーナ―男爵が今までもてあそんだ女の情報」を記した本を持っていたことを思い出し、ホームズはそれを奪い取って将軍の娘に知らせるために画策するが、ある日2人組の暴漢に襲われて大怪我をしてしまう。ホームズは怪我から順調に回復していくが、ワトスンに指示して、怪我が重傷で瀕死の状態であるように見せかける。

グルーナー男爵が金曜日にアメリカに向かうという報道を見て、ホームズはワトスンにグルーナー男爵のコレクションである中国陶器について予習するようにいう。翌日、ワトスンは中国陶器のコレクターに変装してグルーナー男爵に会い、ホームズはその隙にグルーナー男爵の本を見つけ出そうとする。

依頼人

作中において依頼者が誰か明確に記されていないために、依頼者の素性こそが本作の真のミステリーとされているが、ワトスンの記述[5]などから当時の英国王エドワード7世[6]であるとするのが定説となっている。

なお、エドワード7世は即位以前からホームズの力を借りていたことが何度かあったと考えられている。例えば、「緑柱石の宝冠」で依頼人である銀行頭取に融資の担保として宝冠を預けたとされる人物、または『バスカヴィル家の犬』の中でホームズが「この国で最も身分の高い人物が脅迫されている」と語った際の人物とは、当時はまだ皇太子であったエドワード7世であると考えられる。

さらにホームズは、エドワード7世の母であるヴィクトリア女王とも関わりがある(ブルースパーティントン設計書)。

正倉院

作中、グルーナー男爵がワトスンに対しその知識を試そうと、聖武天皇奈良正倉院の関係について説明するよう要求する場面がある[7]。当時のイギリスでは日本はあまり知られておらず、正倉院については戦後の1946年に一般公開されるまで日本でも有名というわけではなかった。ドイルがこうした日本についての詳細な知識を持っていたのは、幼少時からの友人、ウィリアム・K・バートンから聞いたためではないかとする説がある。バートンは衛生工学の教授として東京帝国大学に招かれたお雇い外国人で、10年以上日本で生活をした人物である。バートンには正倉院についての知識があり、それをドイルに伝えたことがあったのだと考えられる[8][9]。 日本の情報以外では、短編「技師の親指」に登場する水力技師の依頼人、ヴィクター・ハザリの職業と技術についての知識が、バートンから得たものだとする説がある[10]

ウィリアム・バートン (William Burton) とワトスンが偽名に使ったヒル・バートン (Hill Barton) とは姓が似ていて、名前のウィリアムの愛称がビル (Bill) であることを考慮すると、酷似しているといえる[8]

脚注

  1. ^ 代理人はサー・ジェイムズ・ダムリー。
  2. ^ 冒頭で依頼日を「1902年9月3日」と明記。
  3. ^ ジャック・トレイシー『シャーロック・ホームズ大百科事典』日暮雅通訳、河出書房新社、2002年、121頁
  4. ^ 原語の綴りは「Le Brun」で、ルパンシリーズの作家ルブラン法を考案した科学者の姓(Leblanc)とは異なる。
  5. ^ 最後に代理人であるサー・ジェームスの馬車の紋章がちらりと見えた際「It is a loyal friend and a chivalrous gentleman, 」とホームズが言っている。
  6. ^ 即位が1901年であるため、即位後間もないことになる。
  7. ^ 原文 I would ask you what do you know of the Emperor Shomu and how do you associate him with the Shoso-in near Nara?:(試訳)聖武天皇および彼と奈良にある正倉院との関わりについて聞かせてもらえるかね。
  8. ^ a b 中尾真理「聖武天皇と奈良の正倉院」『ホームズなんでも事典』平賀三郎編著、青弓社、2010年、102-104頁
  9. ^ 東山あかね「聖武天皇(と正倉院)」『シャーロック・ホームズ大事典』小林司・東山あかね編、東京堂出版、2001年、351-352頁
  10. ^ コナン・ドイル著、リチャード・ランセリン・グリーン注・解説『シャーロック・ホームズ全集 第3巻 シャーロック・ホームズの冒険』小林司・東山あかね、高田寛訳、河出書房新社、1998年、618頁

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