T4ファージDNAポリメラーゼ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 11:53 UTC 版)
「校正 (生物学)」の記事における「T4ファージDNAポリメラーゼ」の解説
T4ファージのgene 43は、ファージのDNAポリメラーゼをコードしている。gene 43の温度感受性変異体(英語版)は抗変異原性の表現型を持つことが示されており、その自発的な変異率は野生型よりも低い。こうした変異体の1つであるtsB120を用いた研究では、DNA鋳型の複製が野生型のポリメラーゼよりもより遅い速度で進行することが示されている。しかしながら、この変異体の3’ → 5’エキソヌクレアーゼ活性は野生型より高いわけではない。DNA複製時に、新生DNA鎖に安定に取り込まれるヌクレオチドに対するターンオーバー(dNTPからdNMPへの変換)されるヌクレオチドの比率は、tsB120変異体では野生型と比較して10倍から100倍高い。この結果からは、ヌクレオチド選択の正確さと、非相補的なヌクレオチドの除去(校正)の効率化の双方によってtsB120ポリメラーゼの抗変異原性が説明されるのではないかという提案がなされている。 野生型のgene 43 DNAポリメラーゼを持つT4ファージビリオンでは、DNAにシクロブタンピリミジンダイマー(英語版)損傷を導入する紫外線照射や、またはピリミジン付加体を導入するソラレン存在下での光照射によって、変異率が増加する。しかし、ファージのDNA合成がtsCB120抗変異原性ポリメラーゼや他の抗変異原性ポリメラーゼであるtsCB87によって触媒される場合には、こうした変異原性効果は阻害される。これらの知見は、DNA損傷による突然変異の誘発の程度が、gene 43 DNAポリメラーゼの校正機能によって強く影響されることを示している。
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