N,N-ジメチルホルムアミドとは? わかりやすく解説

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N,N-ジメチルホルムアミド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/20 07:53 UTC 版)

N,N-ジメチルホルムアミド
識別情報
3D model (JSmol)
バイルシュタイン 605365
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard 100.000.617
EC番号
  • 200-679-5
KEGG
MeSH Dimethylformamide
PubChem CID
RTECS number
  • LQ2100000
UNII
国連/北米番号 2265
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C3H7NO
モル質量 73.09 g mol−1
外観 無色の液体
匂い 無臭、不純物を含むと魚臭い
密度 0.948 g/mL
融点

-61 °C, 212 K, -78 °F

沸点

153 °C, 426 K, 307 °F

への溶解度 混和
log POW −0.829
蒸気圧 516 Pa
酸解離定数 pKa −0.3 (共役酸) (H2O)[3]
λmax 270 nm
吸光度 1.00
屈折率 (nD) 1.4305 (at 20 °C)
粘度 0.92 mPa·s (at 20 °C)
構造
3.86 D
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −239.4 ± 1.2 kJ/mol
標準燃焼熱 ΔcHo −1.9416 ± 0.0012 MJ/mol
標準定圧モル比熱, Cpo 146.05 J/(K·mol)
危険性
GHS表示:
Danger
H226, H312, H319, H332, H360
P280, P305+P351+P338, P308+P313
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
Health 2: Intense or continued but not chronic exposure could cause temporary incapacitation or possible residual injury. E.g. chloroformFlammability 2: Must be moderately heated or exposed to relatively high ambient temperature before ignition can occur. Flash point between 38 and 93 °C (100 and 200 °F). E.g. diesel fuelInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
2
2
0
引火点 58 °C (136 °F; 331 K)
445 °C (833 °F; 718 K)
爆発限界 2.2–15.2%
作業環境許容濃度 (TLV) 30 mg/m3 (TWA)
致死量または濃度 (LD, LC)
  • 1.5 g/kg (ウサギ, 真皮)
  • 2.8 g/kg (ラット, 経口)
  • 3.7 g/kg (マウス, 経口)
  • 3.5 g/kg (ラット, 経口)
3092 ppm (マウス, 2 時間)[5]
LCLo (最低致死濃度)
5000 ppm (ラット, 6 時間)[5]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
PEL
TWA 10 ppm (30 mg/m3) [skin][4]
REL
TWA 10 ppm (30 mg/m3) [skin][4]
IDLH
500 ppm[4]
関連する物質
関連するアミド
関連物質
  • N-ニトロソ-N-メチル尿素
  • N-エチル-N-ニトロソ尿素
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

N,N-ジメチルホルムアミドN,N-dimethylformamide, 略称DMF)は、有機化合物の一種[6][7]。常温では無色で微かにアミン臭(純粋な場合は無臭)の液体。石油系炭化水素とは混合しないが、それ以外のほとんどの有機溶媒や水と任意の割合で混合する[6]

引火性液体であり、日本では消防法により危険物第4類(第2石油類)に指定されている[7][8]。作業環境の管理濃度は、10ppmである[8]

性質

液体、気体、イオン性化合物、共有結合性化合物を問わず、多くの無機・有機化合物を溶解するので非プロトン性極性溶媒として好んで用いられる[7]。アニオンを溶媒和しにくいので、SN2反応はDMF溶媒下では加速される。ただし強酸あるいは強塩基の共存下で保存していると徐々に一部がギ酸ジメチルアミンとに分解される。

またカルボン酸からカルボン酸クロリドを合成する際に、塩化チオニル (SOCl2) 等の塩素化剤のほかに触媒量のDMFを添加すると、より穏和な条件でカルボン酸クロリドを生成できることが知られている。 これは、DMFと塩素化剤から生成するN,N-ジメチルクロロホルムイミニウム(ビルスマイヤー試薬)が触媒的に作用しているためとされる。

DMFの共鳴構造式

製法

実験室的にはジメチルアミン塩酸塩とギ酸カリウムを加熱し、蒸気として発生するDMFを捕集することで得られる[7]

工業的には、一酸化炭素を出発原料とするギ酸メチルと、メタノールとアンモニアから触媒により製造されるジメチルアミンとを、金属アルコラート存在下で反応させる[7]。アンモノリシス反応の一種である。

用途

もっぱら溶媒として使用され、工業的にはアクリル繊維(ポリアクリロニトリル)の合成と湿式紡績の溶媒として大量に利用される[6]。また、石油化学工業で脂式炭化水素から芳香族化合物を抽出したり、アセチレンブタジエンを留分から分離する抽出溶媒としても利用されている。

DMFは100度以上の高温でゆっくりと分解し、ジメチルアミンを放出する。このため高温での反応には他の溶媒を検討すべきである。

反応性の高さ、入手の容易さからホルミル化剤として用いられる(ビルスマイヤー・ハック反応を参照)[6]

安全性

引火点58℃の可燃性液体である。以前は無害だと考えられていた[6]が、その後の検討により有害性が明らかとなっている。皮膚に接触すると炎症を発生することがある[8]皮膚から吸収されやすく、長期に使用していると肝臓障害を引きおこすことが知られている[8]。また人に対する染色体異常試験では陽性の結果を示す。IARC発がん性評価では、グループ2Bの「発がん性の可能性がある物質」として分類されている。

出典

  1. ^ Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). pp. 841, 844. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4. "The traditional name ‘formamide’ is retained for HCO-NH2 and is the preferred IUPAC name. Substitution is permitted on the –NH2 group." 
  2. ^ N,N-Dimethylmethanamide, NIST web thermo tables
  3. ^ Hazardous Substances Data Bank (HSDB) - N,N-DIMETHYLFORMAMIDE”. 2025年8月20日閲覧。
  4. ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0226
  5. ^ a b Dimethylformamide”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2025年8月20日閲覧。
  6. ^ a b c d e 原雄次郎「ジメチルホルムアミド」『有機合成化学協会誌』第16巻第3号、有機合成化学協会、1958年、144-149頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.16.144 
  7. ^ a b c d e 土肥俊一「N, N-ジメチルホルムアミド (DMF)」『有機合成化学協会誌』第40巻第5号、有機合成化学協会、1982年、446頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.40.446 
  8. ^ a b c d 安全データシート N,N-ジメチルホルムアミド”. 職場のあんぜんサイト. 日本国 厚生労働省 (2019年3月15日). 2021年3月22日閲覧。




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