Minシステム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/30 07:25 UTC 版)
細胞が十分に成長したところでZリング形成が始まるメカニズムについては、ある理論モデルによる説明がある。E. coliの隔壁の形成位置不全変異株から、Minファミリーという一連のタンパク質が発見されているが、これらがFtsZの重合と緊密に関係している。Minタンパク質は、細胞の中側や核内でFtsZリングが形成されるのを阻止しているが、ある仮説によればFtsZが細胞の中間位置で重合するための制御機構にも関係しており、その機構は分裂の前の細胞のサイズの増大にリンクしている。 MinC,D,Eシステムは、細胞膜の特定地点付近でのFtsZの重合を阻害する。MinDは、細胞の極の細胞膜にのみ位置するもので、ATPアーゼおよびATP結合の働きをするドメイン(部分)を持っている。MinDは、ATPと結合している時にだけ細胞膜と結合するので、ATP結合ドメインは重要である。 MinDがいったん細胞膜に結合すると、それらは重合して、MinDのかたまりをつくる。このかたまりは、別のタンパク質であるMinCと結合して、それを活性化させる。MinCはMinDと結合したときのみ活性を持つ。MinCはFtsZの重合を阻害する働きを持つ。細胞の極には、FtsZ重合阻害タンパク質(つまりMinD/C)が高濃度になっているので、FtsZは、細胞中央以外では、分裂を開始するのを妨害されている。 MinEは、細胞中央での、MinCD複合体の形成を妨げる役割を持つ。MinEは、両方の細胞極の近くで、リングを形成する。このリングはZリングとは直接関係はない。ただし、MinDのATPアーゼ機能を活性化することによって、MinDを細胞膜から離すという触媒作用がある。MinD自身のATPアーゼ機能は、MinDに結合したATPを加水分解し、それ自身の細胞膜への固定を妨げる。 MinEは、MinD/C複合体が中央で形成されるのを妨げ、極にのみ押し込めている。MinD/C複合体が分解されると、MinCは不活性化される。これによりMinCがFtsZを不活性化するのを防ぐ。結果的に、この反応が、Minタンパク質の特定位置(極付近)への局在化を指示している。それゆえFtsZは、阻害物質のない中央付近でのみ重合することができる。MinEリング形成が不全な変異体は、MinCD複合体が極部分を超えて存在するので、分裂が阻害される。 MinDは、MinEによって細胞膜から分離された後に、細胞膜と再結合するためには、ATPと再び結合する必要がある。Minタンパク質の会合の、この時間的な中断は結果として、時間的・空間的な調整機能として働いている可能性がある。生体内(In vivo)では、Minタンパク質は、およそ50秒ごとに細胞極間を振動することが観察されている。だが、Minタンパク質の振動は、すべてのバクテリアの分裂システムにとって必要というわけではないらしい。B. subtilis では、MinCとMinDが細胞極付近に静的に濃縮されている。だがこのシステムはやはり、細胞の大きさと、FtsZによる隔壁生成および分裂を結びつけている。 Minタンパク質のこの動的な振る舞いは、生体膜を模した人工の脂質二重膜によって、生体外(in vitro)で再現されている。MinEとMinDは自己組織化するが、そのふるまいは、反応拡散系のようなメカニズムによって、平行周期の波動となる。
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