ファステストラップ
各レースにおいて、決勝中に記録されたラップタイムのなかで、もっとも速いタイムのことを指す。予選レコードとは区別される。従来からファステストラップは非常に尊重されており、F1でも昔はファステストラップを記録したドライバーに1ポイント与えられていたこともあった。
参照 予選レコード、ラップレコードファステストラップ
ファステストラップ (Fastest Lap、FL) とは、モータースポーツにおいて、決勝レースでの全ドライバー中、コース一周回が最も速かった選手、及びそのタイムを指す[1]。ここではフォーミュラ1を代表例に記述する。
概要
F1公式サイトに掲載されている各サーキットの「ラップレコード」は予選のポールポジションタイムではなく、決勝レースにおけるファステストラップの記録が採用されている。その理由は過去のレギュレーションにあり、かつてのF1ではそれぞれ予選専用のエンジンにタイヤ(Qタイヤ)、燃料が許可されていた時代があり、また1994年から2009年までのF1においては予選中にレースで使用する燃料を積んで走るため、予選でのタイムだと歴史を通してそのコースで最も速いタイムを比較するのには適さないためである。なお、予選から決勝までの全セッションにおける最速タイムの記録は「コースレコード」と呼ばれる[2][注 1]。
F1では1950年-1959年及び2019年-2024年に、ファステストラップ記録者にも1ポイントが与えられていた。1950年-1959年は記録者が複数人いた場合、記録した人数で等分された(1954年イギリスグランプリの決勝はタイム計測が秒単位だったため記録者が7人に及び、7人に1⁄7ポイントが与えられた)。2019年からファステストラップ記録者が10位以内に入賞した場合に限り、ドライバーとコンストラクターに対して1ポイントが与えられることになった。ただし記録者が入賞圏外(11位以下)またはリタイアの場合はポイントの対象外となるが、ファステストラップの記録は残る[6]。この再導入はレースを興奮させる要素の増加が目的だったが、入賞圏内で後方に大きな差を付けていたドライバーが追加のポイントを獲得するため、フレッシュなタイヤに交換してファステストラップを記録するケースが多く、2024年シンガポールグランプリでは入賞圏外を走るダニエル・リカルド(RB)がレース終盤にタイヤを交換し、ランド・ノリス(マクラーレン)のファステストラップを塗り替えた。これによりノリスはファステストラップの1点を失い、マックス・フェルスタッペン及びRBの姉妹チームであるレッドブルとのタイトル争いにも影響が及んだことでマクラーレンから非難の声が上がり、レース終了後の10月17日に行われた世界モータースポーツ評議会の会合で、ファステストラップのポイント付与を2025年から廃止することを決定した[7]。
2007年からはシーズン中最も多くのファステストラップを記録したドライバーに贈られるDHLファステストラップアワードが設けられている[1]。
F1におけるファステストラップ記録
フォーミュラ1 |
---|
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通算獲得数
順位 | 回数 | ドライバー |
---|---|---|
1 | 77 | ![]() |
2 | 68 | ![]() |
3 | 46 | ![]() |
4 | 41 | ![]() |
5 | 38 | ![]() |
6 | 33 | ![]() |
7 | 30 | ![]() |
8 | 28 | ![]() |
9 | 26 | ![]() |
10 | 25 | ![]() |
出典: [8] |
1シーズンでの獲得回数は、ミハエル・シューマッハ(2004年)とキミ・ライコネン(2005年・2008年)の年間10回が最高である[9]。
なお日本人では中嶋悟が1989年オーストラリアグランプリ、小林可夢偉が2012年中国グランプリ、角田裕毅が2023年アメリカグランプリで記録している[10]。また、長谷見昌弘が1976年F1世界選手権イン・ジャパンで記録したことになっているが、数日後に計測ミスであることが判明した。ウェットコンディションの中、長谷見は24周目終わりにピットインし、別のウェットタイヤに交換して25周目に向かっており、ピットインのロスタイムを含めて1分18秒台で走行できる状況ではなかった。国内メディア関係者へは訂正のリリースが配布され、ファステストラップはジャック・ラフィットが70周目にドライタイヤで記録した1分19秒97であるとされた。F1の公式記録を管理するFormula One World Championship Limitedのサイトでは長らく長谷見の名が明記されていたが[11]、現在はラフィットに変更されている[12]。
デビュー戦でファステストラップ
ドライバー | レース | 備考 |
---|---|---|
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1950年イギリスグランプリ | F1世界選手権最初のレース |
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1996年オーストラリアグランプリ | |
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2006年バーレーングランプリ | |
出典: [13] |
デビューから遅く達成
レース数は決勝に出走したもののみ対象。
順位 | レース数 | ドライバー | レース |
---|---|---|---|
1 | 203 | ![]() |
2009年バーレーングランプリ |
2 | 155 | ![]() |
2009年マレーシアグランプリ |
3 | 152 | ![]() |
2024年アメリカグランプリ |
4 | 134 | ![]() |
2008年マレーシアグランプリ |
5 | 131 | ![]() |
2009年ハンガリーグランプリ |
6 | 114 | ![]() |
1990年ドイツグランプリ |
![]() |
2000年オーストラリアグランプリ | ||
8 | 104 | ![]() |
2020年シュタイアーマルクグランプリ |
9 | 92 | ![]() |
1997年イタリアグランプリ |
10 | 89 | ![]() |
1985年フランスグランプリ |
出典: [13] |
最年少記録
順位 | 年齢 | ドライバー | レース |
---|---|---|---|
1 | 19歳44日 | ![]() |
2016年ブラジルグランプリ |
2 | 20歳235日 | ![]() |
2020年オーストリアグランプリ |
3 | 20歳258日 | ![]() |
2006年バーレーングランプリ |
4 | 21歳166日 | ![]() |
2019年バーレーングランプリ |
5 | 21歳280日 | ![]() |
2013年スペイングランプリ |
6 | 21歳321日 | ![]() |
2003年カナダグランプリ |
7 | 21歳322日 | ![]() |
1959年イギリスグランプリ |
8 | 21歳353日 | ![]() |
2009年イギリスグランプリ |
9 | 22歳19日 | ![]() |
2016年スペイングランプリ |
10 | 22歳91日 | ![]() |
2007年マレーシアグランプリ |
出典: [14] |
最年長記録
順位 | 年齢 | ドライバー | レース |
---|---|---|---|
1 | 46歳209日 | ![]() |
1958年アルゼンチングランプリ |
2 | 45歳219日 | ![]() |
1952年スイスグランプリ |
3 | 44歳321日 | ![]() |
1951年イタリアグランプリ |
4 | 44歳107日 | ![]() |
1970年イギリスグランプリ |
5 | 44歳22日 | ![]() |
1953年オランダグランプリ |
6 | 43歳319日 | ![]() |
1954年ドイツグランプリ |
7 | 43歳201日 | ![]() |
2012年ドイツグランプリ |
8 | 42歳337日 | ![]() |
2024年オーストリアグランプリ |
9 | 42歳43日 | ![]() |
1959年アメリカグランプリ |
10 | 41歳319日 | ![]() |
1985年ヨーロッパグランプリ |
出典: [14] |
MotoGPにおけるファステストラップ記録
2018年シーズン終了時点
順位 | 回数 | ライダー |
---|---|---|
1 | 117 | ![]() |
2 | 95 | ![]() |
3 | 81 | ![]() |
4 | 79 | ![]() |
5 | 64 | ![]() |
6 | 60 | ![]() |
7 | 46 | ![]() |
8 | 42 | ![]() |
9 | 37 | ![]() |
10 | 36 | ![]() |
脚注
注釈
- ^ 例として、2025年日本GPの予選でマックス・フェルスタッペンが1分26秒983のコースレコードを記録した[3]が、鈴鹿サーキットのラップレコードは同GPの決勝でファステストラップの記録を更新したアンドレア・キミ・アントネッリの記録(1:30.965)が掲載されている[4]。なお、鈴鹿サーキットの公式サイトは予選(フェルスタッペン)と決勝(アントネッリ)の両方の記録を掲載している[5]。
出典
- ^ a b “ファステストラップ”. portf.co (2018年10月10日). 2018年11月8日閲覧。
- ^ “ラップ・レコード”. formula1-data.com (2019年6月25日). 2025年4月20日閲覧。
- ^ “フェルスタッペンがコースレコード更新の今季初ポール。角田裕毅はまさかのQ2敗退で困惑の鈴鹿【予選レポート/F1日本GP】”. autosport web (2025年4月5日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “Japanese Grand Prix 2025 - F1 Race” (英語). fomula1.com. 2025年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月20日閲覧。
- ^ “鈴鹿サーキット | コースレコード |レーシングコース 4輪”. 鈴鹿サーキット. 2025年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月20日閲覧。
- ^ “F1、ファステストラップポイント導入を正式決定…開幕オーストラリアGPから施行”. Formula1-Data (2019年3月12日). 2019年3月12日閲覧。
- ^ “2025年は最速ラップポイントが廃止。F1規則の変更でルーキーのFP1起用は4回に倍増に”. autosport web (2024年10月18日). 2024年10月18日閲覧。
- ^ “Statistics Drivers - Fastests laps - By number” (英語). STATS F1. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “Statistics Drivers - Fastests laps - In a year” (英語). STATS F1. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “Japan - Fastests laps” (英語). STATS F1. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “1976 Japanese Grand Prix” (英語). The Official F1 Website. 2014年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月29日閲覧。
- ^ “1976 JAPANESE GRAND PRIX - FASTEST LAPS” (英語). Formula One World Championship Limited. 2024年12月29日閲覧。
- ^ a b “Statistics Drivers - Fastests laps - Grand Prix before” (英語). STATS F1. 2024年12月29日閲覧。
- ^ a b “Statistics Drivers - Fastests laps - By age” (英語). STATS F1. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “Statistics”. motogp.com. 2018年12月17日閲覧。
関連項目
「fastest lap」の例文・使い方・用例・文例
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