1989年オーストラリアグランプリとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 1989年オーストラリアグランプリの意味・解説 

1989年オーストラリアグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 16:15 UTC 版)

 1989年オーストラリアグランプリ
レース詳細
日程 1989年シーズン第16戦
決勝開催日 11月5日
開催地 アデレード市街地コース
オーストラリア アデレード
コース長 3.778km
レース距離 70周(264.460km)
決勝日天候 雨(ウェット)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'16.665
ファステストラップ
ドライバー 中嶋悟
タイム 1'38.480(Lap 64)
決勝順位
優勝
2位
3位

1989年オーストラリアグランプリは、1989年F1世界選手権の第16戦として、1989年11月5日アデレード市街地コースで開催された。

概要

前戦日本グランプリでトップでチェッカーを受けたセナが「失格」と裁定され、一旦はアラン・プロストの年間チャンピオンが決定したが、この裁定に対してマクラーレンが提訴し、その後日本グランプリの勝者(アレッサンドロ・ナニーニ)と年間チャンピオンも「暫定」扱いとなった。

その後10月31日にFIAの国際控訴法廷による判決が下された。判決は、セナの失格処分を支持し、さらにセナに10万ドルの罰金と6ヶ月の執行猶予付き出場停止を課す」というものであった[1]。マクラーレン代表のロン・デニスはこの件について民事訴訟を起こすことも示唆する中でレースウィークを迎えた。

予選

展開

予選は2日ともドライで行われた。金曜日はプロストが暫定のポールポジションを獲得した。プロストが予選初日にセナを上回ったのは、1989年シーズンでは3度目のことだった。土曜日には気温が上がったためタイムを伸ばすことのできないマシンが多かったが、セナはタイムを1秒以上縮め、タイムを伸ばせなかったプロストを逆転した。

予備予選結果

順位 No ドライバー コンストラクタ タイム
1 17 ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 1'18.379
2 30 フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 1'18.523
3 18 ピエルカルロ・ギンザーニ オゼッラフォード 1'19.153
4 37 J.J・レート オニクスフォード 1'19.442
DNPQ 36 ステファン・ヨハンソン オニクスフォード 1'19.539
DNPQ 29 ミケーレ・アルボレート ローラランボルギーニ 1'20.129
DNPQ 34 ベルント・シュナイダー ザクスピードヤマハ 1'20.179
DNPQ 31 ロベルト・モレノ コローニフォード 1'20.183
DNPQ 33 オスカー・ララウリ ユーロブルンジャッド 1'20.750
DNPQ 35 鈴木亜久里 ザクスピードヤマハ 1'21.012
DNPQ 41 ヤニック・ダルマス AGSフォード 1'21.022
DNPQ 40 ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 1'21.600
DNPQ 32 エンリコ・ベルタッジア コローニフォード 1'24.081

予選結果

順位 No ドライバー コンストラクタ 1回目 2回目
1 1 アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 1'17.712 1'16.665
2 2 アラン・プロスト マクラーレンホンダ 1'17.403 1'17.624
3 23 ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 1'18.043 1'17.623
4 19 アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 1'18.271 1'17.762
5 5 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 1'17.791 1'18.586
6 6 リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 1'18.636 1'17.827
7 27 ナイジェル・マンセル フェラーリ 1'19.525 1'18.313
8 8 ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 1'18.750 1'20.076
9 22 アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 1'18.828 1'19.487
10 21 アレックス・カフィ ダラーラフォード 1'18.857 1'18.899
11 17 ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 1'19.305 1'19.110
12 7 マーティン・ブランドル ブラバムジャッド 1'19.136 1'19.428
13 20 エマニュエル・ピロ ベネトンフォード 1'19.710 1'19.217
14 28 ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 1'19.238 1'20.615
15 4 ジャン・アレジ ティレルフォード 1'19.363 1'19.259
16 16 イヴァン・カペリ マーチジャッド 1'19.269 1'19.294
17 37 J.J・レート オニクスフォード 1'20.767 1'19.309
18 11 ネルソン・ピケ ロータスジャッド 1'19.392 1'20.622
19 30 フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 1'19.568 1'19.579
20 9 デレック・ワーウィック アロウズフォード 1'19.599 1'19.622
21 18 ピエルカルロ・ギンザーニ オゼッラフォード 1'19.691 1'20.718
22 10 エディ・チーバー アロウズフォード 1'19.922 1'21.206
23 12 中嶋悟 ロータスジャッド 1'20.066 1'20.333
24 26 オリビエ・グルイヤール リジェフォード 1'21.882 1'20.073
25 15 マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 1'20.191 1'20.260
26 25 ルネ・アルヌー リジェフォード 1'20.872 1'20.391
DNQ 3 ジョナサン・パーマー ティレルフォード 1'20.428 1'20.451
DNQ 24 ルイス・ペレス=サラ ミナルディフォード 1'20.633 1'20.866
DNQ 39 ベルトラン・ガショー リアルフォード 1'22.267 1'24.913
DNQ 38 ピエール=アンリ・ラファネル リアルフォード 1'22.305 1'22.391

決勝

最初のスタート

30分遅れのスタート

昼前より豪雨に見舞われ、決勝は予定より30分遅れて行われることとなった[2]。しかし、スタート時刻になってもドライバーの多くはマシンに収まらず、路面コンディションが危険過ぎるとして、更にスタートを遅らせるよう要望した。最終的にスタートが行われるようになると、プロストは1周だけで戻ると言い残してスタートに臨んだ[2]

中断

スタートでも、後方グリッドのマシンがフォーメーションラップを終える前にグリーンライトが点灯するという混乱もあったが、1周を終える前に約1/3のマシンがスピンした[2]

プロストは、スタート前の言葉通り1周目の終了時にピットに戻り自主的にリタイアした。なお1周目に起きたオニクス・コスワースのJ.J.レートのクラッシュにより、レースは赤旗中断された。

二度目のスタート

相次ぐクラッシュ

午後3時に再スタートが切られることとなったが、プロストは再スタートを拒否し、二度目のスタートには参加しなかった[2]。自らレースを棄権したドライバーはプロストだけだった。

マシンが走ると後続の視界をほとんど奪うほどの水しぶきが上がるコンディションの中、ベテランのルネ・アルヌーがコースアウトしリタイアしたことを皮切りに、6周目にはゲルハルト・ベルガーフィリップ・アリオーが早くも接触しリタイアした。

このレースで優勝しないと裁定がどう下ろうと年間チャンピオンになれないセナも、ネルソン・ピケを抜いたところ、ピケの斜め前方を走っていたマーティン・ブランドルに気づかず追突してリタイアした。またそのピケもセナと全く同じ状況の事故を起こし、衝突したピエルカルロ・ギンザーニとともにリタイアした。

セナとピケがそれぞれリタイアする中でナイジェル・マンセルもマシンをコントロールできないまま単独コースアウトしリタイアした。さらにその後も雨脚が全く弱らない中でリタイアが続き、ベテランのエディ・チーバーや若手のオリビエ・グレイヤールも単独スピンアウトしてレースを去っていった。

「雨の中嶋」の好走

ロータス・ジャッドの中嶋悟は、ドライの予選ではマシン性能の低さから同僚のネルソン・ピケとともに下位に沈んだものの、得意のウェットコンディションの中でマシンをうまくコントロールしつつ驚異の19台抜きを見せ、中盤が過ぎたころには4位につけた。さらにその後もマシン性能がはるかに高い3位を走るウィリアムズ・ルノーのリカルド・パトレーゼを、日本人として初めてレース中のファステストラップを記録しつつ10周以上にわたり激しく追い立てたが、パトレーゼの真後ろにつくとエンジンの吸気口から入る水しぶきのせいでミスファイアを起こすため追い抜くには至らず、4位でゴールした。

出走台数の過半数が事故ないしスピンアウトでレースを終え、完走台数がわずか8台となる大荒れのレースとなった中で、予選23位からファステストラップを記録しながら追い上げた中嶋のウェットコンディションにおける高いドライビング・テクニックが、各国のメディアやチーム関係者から高い評価を受け、BBCの解説者で辛口コメントで知られるジェームス・ハントからも後に高く称賛された。

なお、レースは81周で行われる予定だったが、レース時間が規定の2時間を経過したため70周で終了し、ティエリー・ブーツェンが同年のカナダグランプリ以来2度目の優勝をあげた。

結果

順位 No ドライバー コンストラクタ 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 5 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 70 2:00'17.421 5 9
2 19 アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 70 +28.658 4 6
3 6 リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 70 +37.683 6 4
4 12 中嶋悟 ロータスジャッド 70 +42.331 23 3
5 20 エマニュエル・ピロ ベネトンフォード 68 +2 Laps 12 2
6 23 ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 67 +3 Laps 3 1
7 15 マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 66 +4 Laps 25  
8 8 ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 64 +6 Laps 8  
リタイヤ 10 エディ・チーバー アロウズフォード 42 スピン 22  
リタイヤ 37 J.J・レート オニクスフォード 27 電気系 17  
リタイヤ 26 オリビエ・グルイヤール リジェフォード 22 スピン 24  
リタイヤ 11 ネルソン・ピケ ロータスジャッド 19 接触 18  
リタイヤ 18 ピエルカルロ・ギンザーニ オゼッラフォード 18 接触 21  
リタイヤ 27 ナイジェル・マンセル フェラーリ 17 スピン 7  
リタイヤ 1 アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 13 接触 1  
リタイヤ 21 アレックス・カフィ ダラーラフォード 13 スピン 10  
リタイヤ 16 イヴァン・カペリ マーチジャッド 13 ラジエーター 16  
リタイヤ 22 アンドレア・デ・チェザリス ダラーラコスワース 12 スピンオフ 9  
リタイヤ 7 マーティン・ブランドル ブラバムジャッド 12 接触 12  
リタイヤ 9 デレック・ワーウィック アロウズフォード 7 スピン 20  
リタイヤ 30 フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 6 接触 19  
リタイヤ 28 ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 6 接触 14  
リタイヤ 4 ジャン・アレジ ティレルフォード 5 電気系 15  
リタイヤ 25 ルネ・アルヌー リジェフォード 4 スピンオフ 26  
リタイヤ 17 ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 0 電気系 11  
棄権 2 アラン・プロスト マクラーレンホンダ 0 棄権 2  
  • 予選、決勝順位は、公式サイト[1] およびF1グランプリ年鑑[1]より。

記録

  • 最終F1グランプリ:ジョナサン・パーマー、エディ・チーバー、ルイス・ペレス=サラ、ルネ・アルヌー、ピエルカルロ・ギンザーニ、オスカー・ララウリ、ピエール=アンリ・ラファネル、エンリコ・ベルタッジア
  • 初ファステストラップ:中嶋悟
  • 初ポイント:エマニュエル・ピロ

脚注

  1. ^ a b 「F1グランプリ年鑑 1989-1990」CBSソニー出版 1990年2月 ISBN 4-7897-0502-1
  2. ^ a b c d 「オートスポーツ 1990年1月1日号」三栄書房 pp26-30

関連項目

前戦
1989年日本グランプリ
FIA F1世界選手権
1989年シーズン
前回開催
1988年オーストラリアグランプリ
オーストラリアグランプリ 次回開催
1990年オーストラリアグランプリ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「1989年オーストラリアグランプリ」の関連用語

1989年オーストラリアグランプリのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



1989年オーストラリアグランプリのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの1989年オーストラリアグランプリ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS