EVA架橋発泡体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 08:23 UTC 版)
「発泡プラスチック」の記事における「EVA架橋発泡体」の解説
柔軟性と弾力に富むエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、Ethylene vinyl acetate)は、その特性から完全な独立気泡の発泡体(EVAフォーム)を得られるほか、極性基を持つことからゴム類など多くの材料との混合が可能な特殊なものとなる。主な成形法はカレンダーロールを用いたプレス架橋発泡成形であり、射出成形法も確立されている。 原材料 原料のEVAは、酢酸ビニル(VA)比率が中程度(14~28%)でメルトフローレート(MFR)が低いグレードが望ましい。高VA品は柔軟性が得られるが、MFRが高い品番同様ロール成形への適性が劣る。発泡剤はアゾジカルボンアミドやジニトロシペンタメチレンテトラミンなどが使われるが、発泡助剤を添加して分解温度を調整する必要がある。架橋剤にはジクミルパーオキサイドなど有機過酸化物が使用される。 EVAフォームの特徴である他材料の混合例では、物性や肌触りの向上やコストダウンを目指した充填材(炭酸カルシウム、シリカ、クレーなど)や、弾性や耐熱性改善のためのゴム類(天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴムなど)が挙げられる。また、顔料による着色も可能で、カラフルな製品を得られる。 製法・性能・用途 EVAフォームは、プレス架橋発泡成形法にて厚みを持ったシートが製造される。前工程としてニーダーやミキサーを用いて各原料を発泡剤や架橋剤の分解点より低い90 - 110℃にて短時間で混練し、低温のカレンダーロールで架橋も発泡も起こっていないシート状に成形する。これをプレス成形機にかけて架橋と発泡を行いつつ成形するが、この際に温度やプレス時間などの条件を細かく調整し、架橋を制御しなければならない。架橋が不充分だと気泡の大きさが均一にならず、離型性も低下する。逆に架橋が進みすぎると溶融粘度が高くなり、成形品にシワやクラックが入りやすくなる。このばらつきは肉厚が厚くなるとさらに顕著となる。得られたシートはスライスや打ち抜きなどの加工が施される。これらEVA架橋発泡体が最も使われる用途は履物であり、サンダル・スリッパ類からスニーカーのミッドソールなどに採用されている。 かつては射出成形への適用も行われ、型開きとともに複雑な形状のフォームを得られた。しかし、これは成形サイクルが3 - 5分と長かったうえ、寸法安定性にも劣ったことからコスト競争で苦戦し、ほとんど使われなくなった。
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