DVの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 07:16 UTC 版)
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の記事における「DVの問題」の解説
本条約調印国の間で出された報告書の追記(Annex)「報告書で指摘された重要事項」(Key issues raised by the Report)の3項によれば、条約が執行された申請事件の368件のうち、54%においてDVの存在が確認されており、その中で34%の残された側の親(夫)の暴力を認めているか、あるいは以前に暴力を行ったとの疑いが持たれる。またオーストラリアで行われた国内での奪取も含めた問題に関する全国調査では、奪取の6%は暴力を逃れるためであったとの結果が報告されている。さらに同章4項において、報告書の調査対象の母親達は「深刻な身体的および性的暴力および人命を危うくするような夫の行動を経験した後に、自分及び子供の命が危険に晒されていると結論するに至った」とある。そのうちの40%は、条約執行の判断基準となる「常居所地」自体が、夫による強制あるいは欺瞞による結果となる。そのため、夫から別居、および子の親権を獲得したあとであっても、常居所地にとどまっている間は、夫からの執拗なストーカ行為および暴力の被害にあっていることが確認されている。 さらに同章の5項において、これらの被害者は、常居所地において何度も公式および非公式の救済措置を求めるが効果がなく、いくつかの場合には、逆に虐待する夫に有利な措置が取られた件が報告されている。同章の6項において、アメリカの多くの州では母親の身の安全に特に感心はなく、これらの母親がDVの被害者である場合も、過半数のケースで母親の強制送還が執行され、12件中7件のケースで暴力を振るう父親の方に、子供が引き渡される結果になったと記述されている。。 条約の条文では、子供に「深刻な危険」を及ぼすDVだけが、有効な拒否理由となる。あくまで子供に深刻な危険が認められる場合に限られているため、配偶者へのDVは対象外となる。この問題を扱った法律家の論文において、残酷なDV被害の存在の明らかであるにもかかわらず強制送還が執行され母親が子供のために虐待を覚悟してまで夫も元に戻った例が書かれている。報告書の132項は、条約には子供の親に対するDV暴力からの保護が明記されていないことが、本条約の限界であるとも指摘している。
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