BTシャント術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 08:30 UTC 版)
(便宜上同目的のこれに準じた手術法についても解説する) 先天性心奇形などで肺動脈(あるいはその前の右心室などにも)に全身から戻った血液が流れ込みにくい場合、肺血流の不足により酸素交換が十分行われず、動脈血中の酸素濃度の低下による低酸素血症(低酸素症)および、流れ込みにくい肺動脈に行けない静脈血が右→左シャントで直接動脈側に流れてチアノーゼをきたすことになる。 これを軽減するため左心室から出た動脈のいずれかを肺動脈に接続して肺への血流を増やすシャント術(体動脈-肺動脈短絡術)があり、最初に行われたものが肺動脈と鎖骨下動脈を吻合するBTシャント(Blalock-Taussig短絡)と呼ばれるシャント術(1944年)で、これ以外に下行大動脈と肺動脈を人工血管で結ぶ「ポッツ-スミス(Potts-Smith)変法」、上行大動脈と右肺動脈の吻合をする「ウォーターストーン(Waterstone)手術」(1962年)、上行大動脈と種肺動脈を人工血管で結ぶ「セントラルシャント(central shunt)」などもある。 手術方法の違いによって下記のように一長一短があり、70年代にいろいろ検討されたが、現在ではBTシャントを改良して鎖骨下動脈を切り離さずに人工血管で接続するmodified BTシャント術が一般的に用いられている。 70年代に検討された体動脈-肺動脈短絡術の一長一短比較Blalock手術Potts手術Waterstone手術乳幼児に対する適応 鎖骨下動脈が細く吻合困難 吻合可能 吻合可能 気管支動脈系、副血行路の発達 支障あり 支障なし 支障なし 吻合口の大きさ 鎖骨下動脈の大きさに左右される(吻合口過大になることは稀) 適宜調節可能(吻合口過大となりえる) 適宜調節可能(吻合口過大となりえる) 吻合口の自然閉鎖 稀でない(特に乳幼児の場合) 稀 稀 短絡血流の分布 片肺に偏りやすい 片肺に偏りやすい 両肺に均等化し得る 上肢の血行障害 有 無 無 鎖骨下動脈起始異常 適応困難 適応あり 適応あり 根治術時の短絡閉鎖 やや困難 困難 容易 (Waterstone手術の「吻合口過大となりえる」は初期設定を誤った場合だけではなく、術後一ヶ月から一年半ぐらいのうちに吻合口の大きさが変わって不適当になるということもある。) ただしこれらは心臓内部を手術できるようになった現在ではあくまで姑息手術であり、後の機能的根治術(フォンタン型吻合術)を目標とした一時的なものに過ぎない。
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