平成16年7月新潟・福島豪雨とは? わかりやすく解説

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平成16年7月新潟・福島豪雨

(7.13水害 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 07:18 UTC 版)

平成16年7月新潟・福島豪雨
発災日時 2004年7月13日
被災地域 新潟県中越地方
ならびに福島県会津地方
災害の気象要因 集中豪雨
気象記録
最多雨量 笠堀ダムで473 mm
最多時間雨量 笠堀ダム、大谷ダムで73 mm
人的被害
死者
16人
負傷者
4人
建物等被害
全壊
70棟
半壊
5,354棟
一部損壊
94棟
床上浸水
2,149棟
床下浸水
6,208棟
非住家被害
6,980棟
出典: [1][2]
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平成16年7月新潟・福島豪雨(へいせい16ねん7がつにいがた・ふくしまごうう)は、2004年平成16年)7月13日を中心に新潟県福島県で起こった豪雨災害(水害)である[3]7.13水害(ななてんいちさんすいがい)とも呼ばれる[4]。この災害が発生した5日後の7月18日には、福井県でも洪水(平成16年7月福井豪雨)が発生した[5][6]。この年、全国で風水害が相次ぎ、高齢者が犠牲になったことから、内閣府避難準備情報のガイドラインが作られた[7]

※いわゆる平成の大合併ですでに消滅している自治体もあるが、すべて豪雨発生当時の自治体名で示す。

概要

12日夜から新潟県中越地方福島県会津地方では非常に激しい雨が降り、栃尾市下田村では総雨量が400ミリを超す記録的な雨量を観測した[8][9]

このため、信濃川水系の五十嵐川刈谷田川・中之島川の堤防が11ヶ所で決壊し、五十嵐川流域の三条市刈谷田川流域の中之島町を中心に、長岡市見附市など、広範囲で浸水被害が発生した[10][11][12][13]。広大な平地が浸水したため、避難所となった施設までもが浸水し避難者が孤立するという事態も起こった[14][15]

三条市では、堤防の決壊による被害が五十嵐川の左岸側(南側に位置するため「嵐南」と呼ばれる)に集中した[16]。また近郊の高台にあった新潟県立月ヶ岡養護学校が一時、地域住民の避難所として使用された。同じく五十嵐川流域の下田村でも、国道289号の陥没や栄雲寺橋の落橋、家屋の床上・床下浸水など被害が相次いだ[17]

丘陵部では西山丘陵(三島郡など)や東山丘陵(栃尾市など)を中心に土砂災害が相次いで発生した[18][19]

死者は福島県昭和村での1人を含め16人。全壊70棟、半壊5,354棟をはじめ、20,655棟に被害が出た。

この災害に対して消防庁は宮城県・山形県・栃木県・群馬県・埼玉県・東京消防庁・神奈川県・長野県・山梨県・富山県・石川県・岐阜県から緊急消防援助隊を出動させ、1855人を救出(うち消防防災ヘリコプターによる救出が92人)した[20][21]

この水害は後に激甚災害に指定された[22][23][24]。それだけでなく、災害で発生したごみの集積地不足に悩まされ、やむを得ず三条競馬場跡地に集積された[25]。処理費用が新潟県では全体で33億円かかり、自治体の財政に大きな打撃を与えた。

災害から5年後の2009年7月13日、堤防決壊地点(現在は補修済み)で慰霊式典が行われた。2014年5月には、三条競馬場跡地に「三条防災ステーション」が開設された[26]

気象概況

日本海から東北地方南部にのびる梅雨前線の活動が活発となり、12日夜から新潟県中部(中越地方北部)から福島県にかけて梅雨前線が停滞し、北陸沿岸で発達した雨雲が次々に流れ込み、同じ地域で断続的に雨が降り続いた。13日朝には雨の勢いが非常に激しくなり、数時間にわたって時間雨量50ミリを超す激しい雨が降り続いた[27][28]

主な降雨記録

主な降雨記録
観測地点情報 最大雨量
観測地点 市町村 設置者 24時間 時間
笠堀ダム 下田村 新潟県 473 73
大谷ダム 下田村 新潟県 450 73
刈谷田川ダム 栃尾市 新潟県 426 51
栃尾 栃尾市 気象庁 422 58
前山 栃尾市 新潟県 412 57
浅草岳 入広瀬村 新潟県 337
守門岳 入広瀬村 気象庁 360 56
与板維持 与板町 新潟県 344
只見 只見町 気象庁 * 325 50
宮寄上 加茂市 気象庁 * 316
見附 見附市 国土交通省 308 53
室谷 上川村 気象庁 * 294
金山 金山町 気象庁 * 244
津川 津川町 気象庁 * 232
長岡 長岡市 気象庁 * 225
博士峠 昭和村 気象庁 * 224
三条 三条市 気象庁 208 51
新潟 新潟市 気象庁 83.5
(* は、13日の日降水量を示す。資料の差異により24時間最大雨量とは
厳密には異なるので、留意されたい)


政府など、各機関の対応

7月14日内閣府井上喜一内閣府特命担当大臣(防災)を団長とする政府現地調査団を結成し、新潟県へ派遣した[22]。また、福島県には佐藤剛男内閣府副大臣を団長とする政府現地調査団を派遣した[22]

7月19日小泉純一郎内閣総理大臣が視察に新潟県三条市を訪れた[22]

居住施設提供

7月13日、新潟県は長岡市・三条市・見附市・中之島町・栃尾市・三島町・和島村に対して災害救助法被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を適用し、仮設住宅400戸を供給した[22]

ボランティアによる支援

愛知県、千葉県などから約220人がボランティアとして駆けつけ、中之島町や三条市などを中心に復旧作業を行った[29]

脚注

  1. ^ 災害時気象速報” (PDF). 気象庁 (2004年7月28日). 2025年4月13日閲覧。
  2. ^ 平成16年7月新潟・福島豪雨による被害状況(第53報)” (PDF). 総務省消防庁 (2004年9月10日). 2025年4月13日閲覧。
  3. ^ 「新潟・福島豪雨」気象庁、新基準で災害に初の命名」『読売新聞読売新聞社、2004年7月15日。オリジナルの2004年7月20日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  4. ^ 7.13水害」『新潟日報』新潟日報社。オリジナルの2004年7月16日時点におけるアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
  5. ^ 福井に豪雨、3人死亡…4万世帯に避難指示・勧告」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月19日。オリジナルの2004年7月20日時点におけるアーカイブ。2025年4月10日閲覧。
  6. ^ 福井豪雨で死者3人不明3人、約4万世帯に避難勧告」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月19日。オリジナルの2004年7月20日時点におけるアーカイブ。2025年4月10日閲覧。
  7. ^ 新潟豪雨の死者12人、70-80代のお年寄りばかり」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月15日。オリジナルの2004年7月16日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  8. ^ 新潟・中越地方に集中豪雨、5200世帯に避難指示」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月13日。オリジナルの2004年7月13日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  9. ^ 平成16年7月新潟・福島豪雨による被害状況について(第48報)” (PDF). 内閣府 (2004年9月10日). 2025年3月10日閲覧。
  10. ^ 11市町村に避難勧告・指示」『新潟日報』新潟日報社、2004年7月13日。オリジナルの2004年8月3日時点におけるアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
  11. ^ 豪雨-2万2300棟近くが浸水」『新潟日報』新潟日報社、2004年7月14日。オリジナルの2004年8月25日時点におけるアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
  12. ^ 新潟・福島の集中豪雨で3人死亡、9200人避難」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月14日。オリジナルの2004年7月13日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  13. ^ 新潟の集中豪雨死者5人、浸水家屋2万4千世帯に」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月14日。オリジナルの2004年7月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  14. ^ 小千谷市、小出町に避難勧告」『新潟日報』新潟日報社、2004年7月16日。オリジナルの2004年9月2日時点におけるアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
  15. ^ 水害・死者14人に 関川、佐渡にも被害」『新潟日報』新潟日報社、2004年7月17日。オリジナルの2004年8月5日時点におけるアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
  16. ^ 7.13豪雨水害」(PDF)『広報さんじょう』第1018号、三条市、2004年9月1日、2-7頁。  - WARPによるアーカイブ
  17. ^ 7.13集中豪雨水害」(PDF)『広報しただ』第537号、下田村、2004年8月20日、1-3頁。  - WARPによるアーカイブ
  18. ^ 7.13新潟豪雨による被害と対応状況”. 新潟県土木部 (2005年3月30日). 2025年3月10日閲覧。
  19. ^ 平成16年7月新潟豪雨災害の概要とその教訓”. 新潟県地質調査業協会. 2020年11月12日閲覧。
  20. ^ 豪雨被害の新潟県へ7都県から救助隊300人」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月14日。オリジナルの2004年7月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  21. ^ 平成16年7月新潟・福島及び福井豪雨における緊急消防援助隊活動状況” (PDF). 消防庁. 2025年3月10日閲覧。
  22. ^ a b c d e 3−2 平成16年7月新潟・福島豪雨”. 内閣府. 2025年3月10日閲覧。
  23. ^ 新潟、福島、福井3県に激甚災害手続指示 首相」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月21日。オリジナルの2004年7月24日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  24. ^ 政府、7月集中豪雨災害を激甚指定」『読売新聞』読売新聞社、2004年8月31日。オリジナルの2004年8月31日時点におけるアーカイブ。2025年4月10日閲覧。
  25. ^ 豪雨被災地、暑さ・生ごみ・健康不良…死者14人に」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月17日。オリジナルの2004年7月19日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  26. ^ 特集 7.13水害から10年」(PDF)『広報さんじょう』第210号、三条市、2014年7月1日、1-7頁。 
  27. ^ 新潟・福島で豪雨、死亡不明5人 1万3千世帯避難勧告」『朝日新聞朝日新聞社、2004年7月14日。オリジナルの2004年7月15日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  28. ^ 集中豪雨の死者5人に 新たに2人不明 新潟・福島」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月14日。オリジナルの2004年7月16日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。
  29. ^ 豪雨被害の新潟、県内外から続々ボランティア」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月16日。オリジナルの2004年7月18日時点におけるアーカイブ。2025年3月10日閲覧。

関連項目

外部リンク

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その他



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