616という異読
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 02:33 UTC 版)
近年、オクシリンコス・パピルスの解析が進み、その内の一つが獣の数字の節を含むヨハネ黙示録の写本であることがわかった(P.Oxy. 4499。聖書学では P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 115。 P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} はパピルスの写本を意味する)。この写本は獣の数字を「616」と記している。この異読はエフラエム写本(C と略す)やエイレナイオスの著書を通じて、以前より知られていたが、当該写本が非常に古いものであったこともあり(3世紀-4世紀)、一部マスコミがセンセーショナルに報道し、広く知られることになった。 しかし、聖書学の本文批評は、彼らが伝えたような単純な解釈とは異なり、より古い写本の読みが常に正しいと考えるわけではない。なぜなら、現存する全てのテキストは、オリジナルではなく、写本だからである。ある比較的新しい小文字写本は、古い写本を写したもののため、非常に古い読みを伝えていたり、また、ある成立年代の古い大文字写本が、教義に合わせて色々と修正・加筆されていることもある。この異読は、エイレナイオスが伝えているように、2世紀にはすでに存在していたことが明らかであるため、たとえ現存最古であっても、3世紀-4世紀の写本が決定的な意味を持つことはない。 13章18節を含む写本では、 P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 115と同時代、あるいはそれより古いと推測される3世紀に書かれた P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 47があり、こちらは「666」としている。 P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 115はアレクサンドリア写本(A と略す)と C に読みが近く、 P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 47はシナイ写本(א と略す)に近い。ヨハネ黙示録においては、א よりも、A と C が本文(オリジナルの文)に近いと考える研究者もいるが、この箇所では、肝心の A と C の読みが異なっている。「666」とするものは、ギリシア語大文字写本では P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 47, א, A, 051 があり、また小文字写本のほぼ全てがこれに従う。一方、「616」の異読は、 P {\displaystyle {\mathfrak {P}}} 115, C の2写本のみがある。2世紀のエイレナイオスは「666」を本文と見なしており(『異端反駁』第5巻 30, 3)、これも「666」を支持される有力な根拠となっている。現時点では、「616」が本文であるとする研究者はごく一部に留まる。 なお、異読には「615」というものもある。
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