19世紀半ばの類似研究と位置づけ
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「反復説」の記事における「19世紀半ばの類似研究と位置づけ」の解説
進化と発生を結びつけたという点で、この説は19世紀当時、斬新な考え方であったと言える。ただし、先行する動物の発生に関する研究において類似の発想は認められる。 19世紀初頭に比較発生学がその成果を収める中、発生に関する並行仮説というものがあげられるようになった。これは、動物の発生の過程には群が異なっても似たような流れが見られること、高等な動物のそれは下等なもののそれをなぞるように行われる、というものである。フォン=ベーアはさらにそれを以下の四原則にをまとめて見せた。これは一般にベーアの法則と呼ばれる。 大きな動物群に共通な形質は、特殊なものより先に形成される。 形態的に一般的なものからより特殊なものが形成される。 一定の動物形に属する胚は、一定の諸形態を経過すると言うより、むしろそれから離れてゆく。 高等な動物の胚はほかの動物に似ているのではなく、その胚に似ている。 これらは具体的な内容としてはヘッケルが認めたものと似た発想である。しかしながら、ベーアは進化を科学的に正しいものだとは考えていなかった上、ヘッケルの反復説を痛烈に批判した科学者の一人でもある。他には、進化論が発表された後に感化を受けたミュラーは1864年に甲殻類の発生や変態について論じ、「進化は先祖の発生をたどり、その先へ進むか途中で別方向へ進むかの形で行われる」とした。その上で「前者の場合、発生は先祖の進化の系譜を反復し、後者の場合、横道までの部分を繰り返す」と、ほぼ反復説と同内容のことを述べている。 しかし、ヘッケルの反復説が19世紀当時、大きな注目・支持を集めたのは、個体発生と系統発生の間にあった多くの観察事例とその傾向を、非常にシンプルに説明するようにみえたからであると考えられている。 ヘッケルは、最も初期段階の発生までもが進化の過程をなぞるものであると考えた。すなわち、受精卵は単細胞段階を表すものと考え、卵割によって細胞が増え、胞胚から原腸陥入によって消化管が作られる過程を多細胞動物の進化の過程であると見なし、これによって多細胞動物の進化の道筋を明らかにしようとした。動物の系統に関する彼の考えはブラステア説と呼ばれ、長らく正統的な定説の位置にあった。
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