1882年の大彗星とは? わかりやすく解説

1882年の大彗星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/02 03:45 UTC 版)

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1882年の大彗星
Great Comet of 1882
デビッド・ギルが撮影した、
ケープタウンでの1882年の大彗星
仮符号・別名 C/1882 R1[1][2][3][4]
最大視等級 推定-17等級
分類 彗星
軌道の種類 サングレーザー
クロイツ群
長周期彗星?
発見
発見日 1882年9月1日?[5]
発見者 不明[5]
別名称
別名称
C/1882 R1[1][2][3][4]
1882 II[6]
b 1882[7]
Great September Comet[5][8]
Template (ノート 解説) ■Project
C/1882 R1-A
軌道要素と性質
元期:TDB 2408709.5 (1882年9月21.0日)[1]
軌道長半径 (a) 076.7326733 AU[1]
近日点距離 (q) 000.007750 AU[1]
遠日点距離 (Q) 153.4575965 AU[1]
離心率 (e) 0.999899[1]
公転周期 (P) 244352.25 日[1]
(669.00 年[1])
平均軌道速度 0.0014663 度/日[1]
軌道傾斜角 (i) 142.0112 度[1]
近日点引数 (ω) 069.5843 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 347.6563 度[1]
平均近点角 (M) 0.0048036 度[1]
前回近日点通過 JED 2408706.2241[1]
(1882年9月17日[1])
次回近日点通過 JED 2653058.47
(2551年9月22日)
Template (ノート 解説) ■Project
C/1882 R1-B
軌道要素と性質
元期:TDB 2408720.5 (1882年10月2.0日)[2]
軌道長半径 (a) 083.3440860 AU[2]
近日点距離 (q) 000.007751 AU[2]
遠日点距離 (Q) 166.6804210 AU[2]
離心率 (e) 0.999907[2]
公転周期 (P) 277224.75 日[2]
(759.00 年[2])
平均軌道速度 0.0012954 度/日[2]
軌道傾斜角 (i) 142.0111 度[2]
近日点引数 (ω) 069.5853 度[2]
昇交点黄経 (Ω) 347.6566 度[2]
平均近点角 (M) 0.0184925 度[2]
前回近日点通過 JED 2408706.2241[2]
(1882年9月17日[2])
次回近日点通過 JED 2685930.97
(2641年9月23日)
Template (ノート 解説) ■Project
C/1882 R1-C
軌道要素と性質
元期:TDB 2408720.5 (1882年10月2.0日)[3]
軌道長半径 (a) 091.1882353 AU[3]
近日点距離 (q) 000.007751 AU[3]
遠日点距離 (Q) 182.3687196 AU[3]
離心率 (e) 0.999915[3]
公転周期 (P) 319228.5 日[3]
(874.00 年[3])
平均軌道速度 0.0011319 度/日[3]
軌道傾斜角 (i) 142.0105 度[3]
近日点引数 (ω) 069.5840 度[3]
昇交点黄経 (Ω) 347.6545 度[3]
平均近点角 (M) 0.0037079 度[3]
前回近日点通過 JED 2408706.2241[3]
(1882年9月17日[3])
次回近日点通過 JED 2727934.7
(2756年9月24日)
Template (ノート 解説) ■Project
C/1882 R1-D
軌道要素と性質
元期:TDB 2408720.5 (1882年10月2.0日[4])
軌道長半径 (a) 096.8625000 AU[4]
近日点距離 (q) 000.007749 AU[4]
遠日点距離 (Q) 193.7172510 AU[4]
離心率 (e) 0.999920[4]
公転周期 (P) 347718 日[4]
(952.00 年[4])
平均軌道速度 0.0010339 度/日[4]
軌道傾斜角 (i) 142.0093 度[4]
近日点引数 (ω) 069.5808 度[4]
昇交点黄経 (Ω) 347.6510 度[4]
平均近点角 (M) 0.0033869 度[4]
前回近日点通過 JED 2408706.2241[4]
(1882年9月17日[4])
次回近日点通過 JED 2756424
(2834年9月24日)
Template (ノート 解説) ■Project

1882年の大彗星 (Great Comet of 1882) とは、1882年に太陽に接近し、大彗星となったクロイツ群彗星である[1][2][3][4][5][9]。この彗星は、見かけ上太陽のすぐ脇にあっても、天体として認識できるほど明るくなった[10]。彗星の命名規則による符号はC/1882 R11882年9月の大彗星とも呼ばれる[5][8]

発見

C/1882 R1は、1882年9月の朝に突然現れ、すでに肉眼で見える明るさとなっていた。南半球の人々が観測し、一番古い記録は、9月1日喜望峰ギニア湾で観測された記録である[5]。ただし、ニュージーランドオークランド9月3日に報告されたのが最古とする説もある[5]天文学者による最初の記録は、ケープタウンにおけるウィリアム・ヘンリー・フィンレイの記録である。彼は9月7日16時(GMT)に3等級で約1度の長さの尾を持った彗星と記録している[10][11]

大彗星へ

その後、C/1882 R1は急激に明るくなった。9月13日には木星に匹敵する明るさとなり、尾の長さも12度となった。9月16日には尾が中央で分割されているのが見えるようになった。また、その日には白昼でも見えるようになった。9月17日にはたった14分間でも明るさが変化するのがわかり、また金星よりもはるかに明るくなった。この時の尾の長さは1度と短くなったが、これは尾が太陽の反対方向に向くため、地球から見ると角度が浅いためである[5]

1882年9月17日にC/1882 R1は近日点に達した[1][2][3][4]。近日点距離はたったの116万km(0.00775AU)であり、太陽表面からの距離は46万kmと極めて近い[1][2][3][4][8]。C/1882 R1は近日点付近の太陽に極めて近い距離でも、太陽に次ぐ明るさの天体として認識された[10]。視等級は推定-17等級であったと推定される。

フィンレイは減光フィルターを用いて太陽に接近するC/1882 R1を観測した。太陽の裏側に隠れる直前まで太陽の縁から尾が見えており、「まるで沸騰しているようだ」と述べている。そして太陽の裏側に隠れると、C/1882 R1は急激に見えなくなり、尾も観測されなくなった。通過には1時間58分かかったとされる[5]

デービッド・ギルは、9月18日に、それまでは確実に1つであったC/1882 R1が4つに分裂して見えることを報告している[12]。これは、C/1882 R1のが、太陽に接近しすぎて、潮汐力によって分離したと考えられている。

近日点通過後

近日点通過後の9月30日、フィンレー[12]エドワード・エマーソン・バーナードは、C/1882 R1の核が細長く見えること、それが2つに分裂して見える事に気づいた[8]10月17日には、これが少なくとも5つに分裂して見え、明るさが変化する事に気づいた[8][12]ダストトレイルは10月中旬まで観測された、10月18日には少なくとも核が6つに分裂したとの報告がなされた。最終的には核が6つから8つに分裂したとされる[5]。核の分裂によって、近日点通過後暗くなる彗星が一時的に再び明るくなり、12月には明るさのピークに達した。

その後は明るさが徐々に減っていったが、分裂したにもかかわらず1883年2月までは肉眼で見えた[12]。観測された最後の確実な記録は1883年6月1日[7][8]ベンジャミン・グールドゴルドバでの観測記録である。

軌道の性質

C/1882 R1の軌道の研究は発見当初からなされた。最初は1843年の大彗星 (C/1843 D1) と1880年南天の大彗星 (C/1880 C1) は軌道がよく一致しており、はじめはC/1882 R1の回帰と思われていたが[8]、その後の研究によって4つの核の軌道がわかり[1][2][3][4]、実際に回帰するのは最も短いA核でも669年後の2551年[1]、最も長いD核では952年後の2834年[4] と考えられている[8]

ハインリヒ・クロイツはC/1882 R1の軌道を計算し、C/1882 R1と似た軌道を持つ、太陽に非常に近づく彗星群が、1つの巨大な彗星が砕けた無数の破片に由来すると示した。後にこれらの彗星はクロイツの名前を由来とするクロイツ群と呼ばれる事になる。また、C/1882 R1とドゥ・トイト彗星 (C/1945 X1)、池谷・関彗星 (C/1965 S1)は軌道が非常に似通っていることから、X/1106 C1と呼ばれる彗星の分裂した破片であるとする説もある[6][9]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u C/1882 R1-A JPL Small-Body Database Browser
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t C/1882 R1-B JPL Small-Body Database Browser
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t C/1882 R1-C JPL Small-Body Database Browser
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u C/1882 R1-D JPL Small-Body Database Browser
  5. ^ a b c d e f g h i j C/1882 R1 (Great September Comet) GARY W. KRONK'S COMETOGRAPHY
  6. ^ a b Copeland and Lohse and the Comet, 1882 II SAO/NASA ADS
  7. ^ a b Ephemeris of the Great Comet, b 1882 SAO/NASA ADS
  8. ^ a b c d e f g h The great comet of September 1882 SAO/NASA ADS
  9. ^ a b Fragmentation Hierarchy of Bright Sungrazing Comets and the Birth and Orbital Evolution of the Kreutz System. II. The Case for Cascading Fragmentation The Astrophysical Journal
  10. ^ a b c The great comet of 1882 SAO/NASA ADS
  11. ^ On Mr. Finlay's pre-perihelion observations of the Great Comet 1882 II SAO/NASA ADS
  12. ^ a b c d note on the nucleus of the Great Comet (b) 1882 SAO/NASA ADS

関連項目


1882年の大彗星 (C/1882 R1)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 11:06 UTC 版)

クロイツ群」の記事における「1882年の大彗星 (C/1882 R1)」の解説

詳細は「1882年の大彗星」を参照 1882年の大彗星は、近日点通過のわずか数日前1882年9月上旬現れときには既に肉眼簡単に見えるようになっていたので、多数観測者独立して発見された。この彗星急速に明るくなり、9月16日17日2日間にかけて昼間でも見えるようになり、薄雲通して見えるほどだった。 この彗星近日点通過後、数週間わたって明るく輝きつづけた10月の間、最初2つ、そして4つ分裂するのが観測された。から数度離れた所に拡散した光の断片見えた報告した観測者何人かいた。破片分離速度から、破片は数世紀間隔をおいて分裂から670年後から960年後の間に戻ってくると考えられている。

※この「1882年の大彗星 (C/1882 R1)」の解説は、「クロイツ群」の解説の一部です。
「1882年の大彗星 (C/1882 R1)」を含む「クロイツ群」の記事については、「クロイツ群」の概要を参照ください。

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