鰾の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 01:20 UTC 版)
鰾は四肢動物やハイギョの肺と相同な器官である。ダーウィンの時代には、魚類より四肢動物のほうが進化的な生物であるという理由から、鰾から肺が進化したと思われていた。しかし、20世紀後半に硬骨類の進化の歴史が明らかになるにつれ、逆に、原始的な硬骨魚類は肺を持ち、一部の硬骨魚類で肺が鰾に変化したことが明らかになった。 脊椎動物は本来は海洋生物だったが、淡水へと進出した系統から硬骨魚類が誕生し、初期の硬骨魚類は、溶存酸素量が低下しやすい淡水生活の中で空気呼吸の必要から肺を発達させた。その後、水中生活へ特に適応した系統が肺を鰾へと変えたと考えられる。 完全な鰾への進化は、条鰭類のうち真骨類とチョウザメ目のみ起こった。他の条鰭類であるポリプテルス目、ガー目、アミア目の鰾(肺)は肺としての機能を残し、肺呼吸もおこなう。 条鰭類の姉妹群である肉鰭類では、肺がそのまま保たれた。ハイギョや、系統的には四肢動物がそうである。ただし現生シーラカンスのラティメリアは、肺は脂肪で満たされた鰾となっている(絶滅したシーラカンスについては不明である)。 肺を持つ魚類では、体を巡った血液は肺でガス交換をしてから心臓に還るため、心筋には十分な酸素が供給される。しかし肺を失った魚類では、肺でのガス交換がないので、激しい運動時には心筋は酸素不足となり、持久力に欠ける。にもかかわらず現在、肺の代わりに鰾を持つ魚類のほうが地球で種数・個体数において成功しているのは、海鳥など飛翔する魚食動物の登場により、海面に上がって呼吸することが危険になったためともされる。 × 肺も鰾もない ○ 肺呼吸をする鰾(肺) ● 完全な鰾 ☆ 脂肪が詰まった鰾(肺) □ 肺 顎口類 ×軟骨魚類 硬骨魚類 条鰭類 ○ポリプテルス目 ●チョウザメ目 ○ガー目 ○アミア目 ●真骨類 肉鰭類 ○ハイギョ ☆現生シーラカンス □四肢動物
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