非調和型湖沼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/04 22:57 UTC 版)
湖沼に生活する生物にとって不必要な物質や条件が過剰にあり、生物があまり生存できず、全生産および部分生産が非調和な湖沼。水質の特徴によって以下のように分類されることが多い。 腐植栄養湖 腐植起源の有機物が多量に溶存する。フミン酸などの溶存腐植質のために水の色は黄褐色から褐色を呈す。緑藻類のツヅミモが非常に多くなるのが特色。単細胞藻類では他には黄金藻類が多いのも特徴的である。岸辺にはしばしばミズゴケ類の群落が発達する。魚類相やベントス相は一般的にはきわめて貧弱。高緯度地域や高山などの寒冷地帯、特に泥炭地に多いが、熱帯地域にも分布する。日本においては、姉沼やパンケ沼、白駒の池などが該当する。日本最小のトンボであるハッチョウトンボはこうした環境に好んで生育する。 酸栄養湖 pH5.0以下の酸性の湖水をもつ。通常は硫酸などに起因する無機酸性湖のことを指し(腐植酸などに起因する有機酸性湖は腐植栄養湖に分類される)、火山や硫黄泉付近に多い。一般には生物の種類は少ないが、特定の種の個体数が多いことがある。pH2.6程度まではヨシやコケ類が見られるが、さらに酸性になると珪藻類、藍藻類、ユスリカの幼虫、硫黄細菌のみが見られるようになる。また、pH3.0程度までの湖であればウグイが生息することがある。なお、宮城県にある潟沼の酸性度(pH1.4)は世界最強である。日本ではこのほかに、猪苗代湖や田沢湖、屈斜路湖などが該当する。鉄栄養湖 酸栄養湖のうち、鉄分の含有量が多いものを特に鉄栄養湖と呼ぶことがある。日本では深泥沼(五色沼のひとつ)などが該当する。 アルカリ栄養湖 カルシウムイオンやナトリウムイオン含有量が特に多く、pHは9.0以上。アルカリ性の湖水は炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムの加水分解によって水酸化物イオンが生じることによる。熱帯乾燥地の炭酸ナトリウムによる湖沼の生産力は大きいが非調和的で藍藻類や光合成細菌による水の華を生じることがある。石灰岩地域や乾燥地帯の塩湖に多く、アフリカ大地溝帯に集中して分布する。アルバート湖やナクル湖が典型例。フラミンゴの多くの種が、こうした湖沼で大発生する藍藻類を主食にしている。日本に該当する湖はない。
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