非ゼロ和的状況の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/25 10:19 UTC 版)
例えば、恋愛において一方が傷つくことになったとき、相手が満足を得るわけではない。双方ともが精神的な充足を得られる場合もあれば双方ともが傷つくような状況もあり得る。この場合、互いの(精神的な)損益はゼロ和ではないのである。 知識もまた、非ゼロ和的なものである。井戸から水をくみ上げるよい方法を考えた人は、その新しい技術が他の村の人々によって学ばれることで利益を与えても、損をするわけではない。 非ゼロ和的状況は、経済活動における生産、限界効用、価値評価などを考える上でも重要である。 例えば、ある農家が豊作であれば、彼はより多くの食料を売って、より多くのお金を稼ぐことができる。それによって、より多くの食料が市場に出回れば、その価格が低下するという形で、消費者の利益にもなる。豊作ではなかった他の農家は、低くなった価格に悩むかもしれないし、 それは決してあらゆる人の利益になっているということではないが、それは豊作の農家が利益を奪ったのではなく、農作物の総量が、適正な価格を創出したのである。同じようなことは、他の生産活動についても言うことができる。 商取引も非ゼロ和である。なぜなら、自ら望んで取引を行うすべての人は、その取引によって以前より状況が良くなると信じているからである。そうでなければ、誰も取引をしない。この確信が間違っているときもあるが、状況を正しく判断できなかったという失敗ですらも、将来に生かせるよい経験として彼らを向上させるのである。取引のすべての参加者が、いつも等しく利益を得ることができるわけではない。しかし、利益がどのような配分で分配されたかにかかわらず、取引における利益はいつも非ゼロ和的であり続ける。 株式取引は、企業の設立や上場から消滅までの売買のみを見ればゼロ和であるが、売買のみならず配当や議決権などの要因により商取引同様にプラスの非ゼロ和となる。また売買のみに限っても、設立や上場と消滅の両方を同時に含まない特定の期間に限った場合は企業や株式市場全体の拡大縮小の影響を受けて非ゼロ和となる。だがしかし、さらに企業や株式市場全体の拡大縮小の影響を受けないほど短期間の売買のみに限った場合にはやはりゼロ和になる。
※この「非ゼロ和的状況の例」の解説は、「非ゼロ和」の解説の一部です。
「非ゼロ和的状況の例」を含む「非ゼロ和」の記事については、「非ゼロ和」の概要を参照ください。
- 非ゼロ和的状況の例のページへのリンク