静電誘導と電磁誘導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 05:05 UTC 版)
限定された商業的用途のための無線電信システムの開発に静電誘導と電磁誘導の両方が使用された。アメリカでは、1880年代半ばにトーマス・エジソンは、彼が「グラスホッパー電信」と呼ぶ電磁誘導システムの特許を取得した。線路に平行に張られている電信線と走行中の列車の間の短い距離で、電磁誘導により信号を伝えるものである。このシステムは、技術的には成功したが、経済的には成功しなかった。なぜならば、列車の旅行者は車内で電信サービスが利用できるということにほとんど関心を寄せていないことが分かったからである。しかし1888年の大ブリザードの時に起きた、列車が雪の吹きだまりに埋もれた事故の際には、列車からメッセージを送信したり、外部からのメッセージを列車側で受信するために、このシステムが使用された。雪に埋もれていても、列車からはエジソンの誘導無線電信システムを介して通信を維持することができた。これが、無線電信による史上初の遭難通信と見られている。エジソンはまた、静電誘導による船から陸上への通信システムの特許も取得した。 電磁誘導式電信システムの開発で最も成功したのは、イギリスのロンドン郵便本局(英語版)(GPO)の郵便電信の主任技術者のウィリアム・ヘンリー・プリース(英語版)だった。プリースは、1884年、道路の上に張られている電信線が地中に埋められた電信線の信号を伝送していることに気付き、その効果を発見した。ニューキャッスルでの実験では、四角形の電線を平行に置いて、4分の1マイルを送信することに成功した:243。1892年には、ブリストル海峡を横断する約5キロメートル (3.1マイル)の間隔を置いて電信することができた。しかし、プリースの電磁誘導システムでは、送信側と受信側の両方に、数キロメートルもの長いアンテナ線が必要だった。この送受信用の電線の長さは、間を空けて伝送する距離とほぼ同じ長さが必要だった。例えば、イギリスのドーバーから対岸のフランスまで、イギリス海峡を横断して伝送するためには、それぞれの海岸に沿って約30マイル (48キロメートル)の電線を張る必要がある。これでは、小さな船や普通の大きさの島ではこのシステムを使用することはできず、非実用的であった。アンテナを実用的な長さにした場合には、非常に短い距離しか伝送できず、海底電信ケーブルを超える利点は持っていなかった。
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