関連のある積について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 02:57 UTC 版)
「内積」(inner) という語は「外積」(outer) の反対という意味での名称だが、外積は(きっちり反対というよりは)もう少し広い状況で考えることができる。簡単のため座標をとって、内積を 1×n 「余」ベクトルと n×1 ベクトルとの積と見るとき、これは 1×1 行列(つまりスカラー)を与えるが、外積は m×1 ベクトルと 1×n 余ベクトルを掛けて m×n 行列が得られる。ここで注意すべきは、内積は同じ次元のベクトルと余ベクトルとの積でないといけないが、外積は相異なる次元の余ベクトルとベクトルを掛けることができる点である。次元が同じである場合、内積は外積のトレースに一致する(トレースがとれるのは正方行列だけなので、次元が異なる場合は考察できない)。 内積あるいはより一般に不定値内積を持つ(従って同型 V → V* を持つ)ベクトル空間上では、ベクトルを余ベクトルにすることができる(座標をとって考えるならば、転置をとることに相当する)から、内積および外積は単純にベクトルと余ベクトルとの積ではなくて、ベクトル同士の積として捉えることができる。より抽象的に述べれば、外積はベクトルと余ベクトルとの対を階数 1 の線型写像へ写す双線型写像 W × V* → Hom(V,W)(すなわち (1,1)-型単純テンソル(英語版))であり、内積は余ベクトルのベクトルにおける値を評価する双線型な評価写像 V* × V → F である。ここで、各写像の定義域において直積をとる順番は、余ベクトルとベクトルとの区別を反映していることに注意。 上記の内積と外積に対して、混同するべきではないがよく似た積として内部積(英語版) (interior) と外(部)積 (exterior) というのが、ベクトル場や微分形式に対する、あるいはより一般に外積代数における演算として定義される。さらにややこしいことに、幾何代数(英語版)において、内積 (inner) と(グラスマン)外積 (exterior) は幾何積(クリフォード線型環におけるクリフォード積)に統合される(内積は二つのベクトル (1-階ベクトル) をスカラー (0-階ベクトル) へ写し、外積は二つのベクトルを二重ベクトル (2-階ベクトル) へ写す)。そしてこの文脈においてグラスマン積はふつうは「外積」(outer)(あるいはウェッジ積)と呼ばれ、またこの文脈での内積は(考える二次形式が必ずしも正定値であることを要求されないという意味では「内積」でないので)スカラー積と呼ぶのが形式上はより適切である。
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