野巫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 09:02 UTC 版)
「野巫」(やぶ)とは、田舎に住んで、占い、呪術、まじないや悪霊祓いなどを職業とする霊能者のこと。 白杉悦雄によれば、藪はもともと仏教語の野巫の当て字であり、織田得能『仏教大辞典』に、野巫とは「草野の巫師。唯一術を解するもの、以て寡聞の禅人に譬える」とある。出典は智顗『摩訶止観』で、「又野巫の如きは、唯だ一術を解して、方に一人を救い、一の脯胖を獲。何ぞ神農本草を学ぶことを須いんや。大医と為らんと欲せば、遍く衆知を覧て、広く諸疾を療せよ。転た脈し転た精しく、数しば用い数しば験あれば、恩救博し」(『摩訶止観』巻七下)とある。つまり「ただ一つの術」しかわかっていないものが「野巫」である。日本で広く使われるようになったのは何時のことか明らかでないが、『庭訓往来』に「藪薬師」という言葉(藪医者に同じ)が見えることから、十四世紀末から十五世紀頃を目安としてよいだろう、という。そして寺島良安『和漢三才図会』(1713)にいたって、「一般に庸医を野巫医と称するが、その呼び方は天台止観から出ているという。思うに、野巫とは祭主の卑賤なもののこと、唯一つの術だけを解し、一人だけを救い、それで自分の療法はすぐれていると考える類である。大医になろうと志すものは、ひとえにいろいろな治療を覧、広くいろいろな疾を治療し、こうして道を体得するべきである」(巻七)と記される。(白杉悦雄「庸医ー江戸時代の民間医師ー」『東と西の医療文化』思文閣出版所収)
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