部族の制度に関する誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 04:41 UTC 版)
「インディアン戦争」の記事における「部族の制度に関する誤解」の解説
「インディアン戦争」の中で、白人たちは「酋長」を「部族の代表」、「部族長」だと考えていた。「部族民たちが敬愛する大戦士」を、「大酋長」だと思い込んで、彼らをそう呼んだ。白人には「大戦士」も「酋長」も見分けがつかなかった。「酋長」(Chief) とは、実際には、部族の「調停者」、「世話役」、あるいは「奉仕者」であって、「指導者」でも「部族長」でもない。インディアンの社会に「指導者」も「部族長」もいない。個人が権力を持つ上意下達のシステムを持たないのである。 しかるに白人たちは「インディアン戦争」を行うにあたって、「酋長」、あるいは「大戦士」を「部族長」だと思い込み、和平の調停や交渉の責任者とみなした。酋長の署名として「×印」を書かせ(インディアンは文字を持たない)、これを「部族の総意」と解釈したのである。もちろんこれは全くの誤解であって、合議を経ていない部族の総意はあり得ず、インディアンの戦士たちは戦いをやめなかった。 またインディアンの戦士団を白人は「司令官が統率する軍団」だと勘違いしていた。これもまた全くの思い違いで、インディアンの戦いは自由参加であって、彼らは「軍」でも「兵」でもなく、誰に率いられるような集団でもない。合衆国はしばしば、「インディアンが協定を破って攻撃した」としているが、協定を破っているのは白人側だった。 インディアンの社会は細かいバンド(集団)に細分されており、それぞれが自治を保ち、自分たちの判断で動いていた。すなわちインディアンの部族は一枚岩ではなかった。これをまとめて従わせようとする合衆国の考え自体に無理があった。インディアンの部族で、最終的な判断を決めるのは長老と酋長たちの大合議だけである。これは現在のインディアン社会でも変わらない。 こうして、「インディアン戦争」において、合衆国は本来は「交渉役」である「酋長」を「戦争の司令官」だと誤解し、彼らの殺害に力を注ぎ、彼らを捕らえては死体を散々に凌辱した。根本的に白人たちはインディアン文化を勘違いしたまま、延々とインディアンの虐殺を繰り返したのである。
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