部分のみを保存
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 23:49 UTC 版)
動物などで保存しやすい所のみを選んで乾燥標本とする場合も多々ある。その場合、標本作製の手順はいかに肉質部分を片付けるかにある。たとえば貝類の殻、サンゴ類や脊椎動物の骨格標本などがこれである。 貝類の標本は伝統的には殻のみで行われた。生きた貝が採集された場合には、茹でて身を抜いたり、腐敗させてから洗浄したりといった方法で、肉体部を取り除き、殻のみにして乾燥保存する。脊椎動物の骨格も、同様に茹でてから肉をはぎとり、あるいは漂白剤のように有機物を分解する薬剤で処理する。自然の分解力を用いる方法もある。大柄な動物はそのまま地面に埋めて、一定時間の後に掘り出して洗うという方法も使われる。より積極的に、たとえばカツオブシムシのように死体の肉質や筋を食べる昆虫を使って、それらに食べさせることできれいにする方法もある。 毛皮を標本として残すこともある。保存法は毛皮加工の方法そのものである。さらに、毛皮を組み立てて元の動物の姿を復元するものを剥製と言う。これらの技術は実用面で発達した部分があり、本来は標本作製を目的にしたものではない。しかし、そのため、実用目的で作られたものにも標本としての価値が認められる場合もある。ジャイアントパンダがヨーロッパに知られた最初の標本は、敷物に加工された毛皮であった。 いずれにせよ、部分のみの標本は、限定的な役割をもつものである。場合によってはとんでもない誤解を引き起こす場合もある。貝殻など、それで全身であると錯覚を起しやすいが、そうでないことはよく把握しなければならない。日本の例であるが、洞窟内で発見された特殊な巻き貝と思われたものが、実はコウモリの蝸牛殻であった、と言う話がある。
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