速報性の追求
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 21:40 UTC 版)
1985年になると、放送局(主にNHK)が緊急警報放送を行うようになった。これは、津波警報が発表されると緊急警報放送を行うものである。このシステムの下での警報は、1993年に起こった北海道南西沖地震において実施された。しかし同地震では5分で津波警報(大津波)が発表されたものの、奥尻島には津波警報発表とほぼ同時、またはそれよりも早く津波が到達した。さらに、実際の発表時には、津波の高さに関して高をくくり、犠牲になった住民も多数いた。これは、放送局が「気象庁からの予報文をそのまま読むことが規定されていた」ためである。これらの地震津波による被害は甚大で、さらなる時間短縮および予報文の変更が求められた。 これらを踏まえ気象庁は1999年4月1日、独自開発した新しい津波の予報システムを導入した。それは、あらかじめコンピュータで様々な規模の地震をシミュレーションしてデータベース化し保存しておくというものである。データベース化される内容は、津波がどの地域にどれほどの時間でどれくらいの高さで到達するかという計算結果である。そして地震が起きた際には、即座に当該地震の規模・震源の位置を割り出し、上記データベースから当該地震と最も似たパターンの地震を検索し、津波の発生の有無を特定する。そして、当該地震において津波の到達が予測される場合には、修正を加えて発表する、というものである。これにより発表に要する時間は3分程度に短縮された。また、本予報システムの導入に併せ津波予報区が18から66に細分化された。加えて、発表される津波の高さも8つの区分に見直された。一方、放送局から送出される気象庁からの予報文も見直された。具体的には、「場所によっては予報より高い津波が来襲する」とか「津波は1回目よりも2回目以降の方が高くなることがある」など、素早い避難を促す文言が、放送局側によって付け加えられることとなった。 前述の1999年の導入時には、地震の規模、震源の位置の割り出しに1、2分はかかるため、これ以上の時間短縮は難しいとされていた。そのなかで、2006年10月2日からは、緊急地震速報の技術を活用することにより最速2分以内に津波警報等を発表することが可能となった(一部の地域のみ)。この運用が行われた9例のいずれにおいても、NHKは地震発生後の報道特別番組への切り替えの前に津波注意報及び津波警報を報じ始めた。さらにそのうちの4例の場合は津波警報・注意報発表と同時に緊急警報放送を実施することができた。
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