財布
『犬も歩けば』(スレッサー) 初老の男が夜道で心臓発作を起こし、倒れて死んだ。それを目撃したジョーは、金に困っていたので、男の服から財布を抜き取って立ち去る。ところが財布の中には、「私は生きています。持病があって、発作を起こすと死んだように見えるのです。すぐに医者へ御連絡下さい」と記したカードがあった。ジョーは驚き、「このまま放置すれば殺人を犯したも同然だ」と思って警察へ出頭する。しかし、実は男はスリで、財布は他人からスリ取ったものだった。
『永代橋』(落語) 文化4年(1807)8月19日の深川の祭りの日、群集の重みで永代橋が落ち、大勢が死んだ。死者の中に1人のスリがいたが、彼は長屋の武兵衛の紙入れを持っていたので、武兵衛が死んだものと見なされた。家主が武兵衛に「お前は死んだのだから、死骸を引き取れ」と言う。武兵衛は死骸の顔を見て、「これは俺じゃないと思う」と否定する〔*→〔アイデンティティ〕1bの『粗忽長屋』と同想〕。
『仮名手本忠臣蔵』5段目「山崎街道」 百姓与市兵衛が、娘お軽を祇園へ売って得た50両(*→〔身売り〕1)を縞の財布に入れ、雨の夜道を1人歩く。斧定九郎が与市兵衛を襲い、彼を斬り殺して、財布を自分の懐へ入れる。猟師となった早野勘平が、猪と間違えて定九郎を鉄砲で撃ち殺す。暗闇の中、旅人を誤殺したと思った勘平は、死体の懐に大金の入った財布があるのを手探りし、悪いこととは知りながら、財布を取って逃げて行く→〔誤解による自死〕1。
『カレンダーゲシヒテン(暦話)』(へーベル)「名裁判官」 金持ちが7百ターラー入りの袋を落とし、「拾った人に謝礼百ターラーを支払う」と広告する。正直者が袋を届けると、金持ちは謝礼を払わずにすまそうと考え、「君は謝礼の百ターラーを先に取ったんだね。袋の中には8百ターラーあったんだよ」と言う。裁判官が金持ちに、「それならこれは、お前が落としたのとは違う袋だ」と言って、正直者に与える〔*東洋での出来事だ、として記される〕。
『沙石集』巻7-3 唐に正直な夫婦があり、南挺(=上質の銀)6つの入った袋を拾って届けた。ところが落とし主が、「7つあったはずだ。1つ隠しただろう」と言いがかりをつける。すると裁判官が、「それならこれは、お前の落としたのとは別の袋であろう」と言って、南挺6つをすべて正直夫婦に与えた。
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