論理学と心理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 15:46 UTC 版)
ミルとフレーゲの著作の間で、論理学が広く記述科学として、あるいは推論の構造の経験的研究、また根本的には心理学の一分野として扱われた期間は半世紀に及んだ。例えばドイツの心理学者ヴィルヘルム・ヴントは「心理学的な思考法則から論理形式を」導き出すことを主張し、「心理学的思考は常によりわかりやすい形の思考である」と強弁した。この思想は当時のドイツの哲学者の間に広まった: テオドール・リップスは論理学を「心理学の内のある特定の規則」と評した; クリストフ・フォン・ジグヴァルトは論理的必然性を人間がある方法で考えようとする衝動に基礎づけられたものとして理解した; そしてベンノ・エルドマンは「論理的法則は我々の思考の範囲内にのみ存続する」と主張した。こういったものがミルの著作が発表されて以降の時期の支配的な見方であった。こういった論理学に対する心理的アプローチはゴットロープ・フレーゲによって否定された。同アプローチはエトムント・フッサールにも、その著書『論理学研究』(1900年)第一巻において包括的かつ破壊的な批判を成されてもいるが、この批判は「圧倒的」と評されている。論理学を心理学的考察によって基礎づけることは全ての論理学的真理を証明されていない状態にしてしまうことや懐疑主義・相対主義が不可避な結果であることを示唆しているとフッサールは強烈に主張した。 このような批判によっていわゆる「心理学主義」が即座に根絶されたわけではない。例えば、アメリカの哲学者ジョシア・ロイスはフッサールの批判の力は認めつつも、心理学の発展が論理学の発展を伴うものであり、逆もまた真であることを「疑いえない」と考え続けている。
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