菌類各群の子実体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/04 08:23 UTC 版)
菌類の各分類群は、それぞれに特徴的な子実体を形成する。それぞれ簡単に述べる。 鞭毛菌門子実体を形成するものはない。 接合菌門接合菌綱のアツギケカビ(エンドゴーン)目、およびグロムス目(最近はGlomeromycota門として独立させることが多い)のものは、いずれも地中性で、指先くらいの球状の子実体を作る。表面は菌糸に覆われ、その中に有性生殖による接合胞子や無性生殖による厚膜胞子が入っている。 子のう菌門有性生殖に際して、多くのものは子のう胞子を子実体の中に形成する。子のう菌類の子実体を子のう果という。原始的なものでは、出口のない球形の袋状になった構造の中に、まばらに子のうが入っている。これを閉子のう殻という。コウジカビの仲間の有性世代では、この形の子のう果が見られる。他のものでは、子のうは細長い袋状で、一面にならんで子実層を造り、これを覆う構造が発達する。子実層を覆う構造が子実層をとじ込めており、胞子を出す口を持つ壷状になったものが多い形を子のう殻といい、ほとんどが1mm未満の小さなものである。虫草菌類のように、さらにこの子のう殻を群生する棍棒状の大型子実体を発達させるものもある。子実層を皿状に囲んで主として子実層を外面に見せる形を子のう盤といい、これが大きくなったものがチャワンタケ類である。ノボリリュウやアミガサタケは開子のう盤に柄が生えた形である。また、栄養菌糸が子のうの入る空間を形成し、ここに子実層ができる、子のう子座というものを形成するものもある。これの一見子のう殻に似ているものは擬子のう殻とも呼ばれるが、壁ができて中に子のうを形成するのではなく、菌糸の塊の中に空洞ができて、そこに子のうが形成される点が異なる。 多くの子のう菌は無性生殖による胞子、つまり分生子が通常の生活を営んでいる菌糸体の表面に形成される。いわゆるカビに胞子ができた状態である。しかし、中には表面に分生子を形成する複雑な子実体を作るものもある。この分生子を生ずる子実体を分生子果と呼ぶ。 担子菌門子のう菌と同様、幾つかの型に別れる。多くのものは傘をもつ、いわゆる一般的な印象としてのキノコを形成する。キノコの傘の裏面には、ひだや管が並び、その側面から有性生殖による担子胞子を放出する。この形からの変形としては、柄がなくて、直接に傘が枯れ木から出るもの、傘の裏面だけが枯れ木の表面に並ぶものなどがある。また、担子胞子と同時に子実体の他の部分に無性生殖による分生子を形成するものもある。イグチ類に寄生するヤグラタケでは、襞に担子胞子を作ると同時に傘の組織が表面から次々と分生子に変化して粉状に分解していく。 傘を作らず、袋状の構造の内部に胞子を作るものもあり、それらをまとめて腹菌類という。胞子は成熟すると袋が破れてできた口から噴出する(ホコリタケ・ツチグリなど)、袋の表面が砕けて出る(ノウタケなど)、胞子を着けた柄が袋から伸び出す(スッポンタケなど)と、様々な方法で放出される。現在では、この群は自然分類群ではなく、襞や管の表面に担子胞子を形成していた通常のキノコの様々なグループから、多元的に出現した多系統と見なされている。 このほかに、キクラゲのように吸水性に富んだ軟骨質やゼリー状の柔らかな子実体をもつものがあり、膠質菌と呼ばれる。子実体の形は貝殻状、花びら状など様々。
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