茶道好みの紋様
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/26 03:43 UTC 版)
茶道の家元は、独自性を重んじる禅宗文化の影響で、それぞれの家元の好みの紋様を版木に彫らせて、独自の唐紙を茶室に張らせた。表千家の残月亭には、千家大桐と鱗鶴が使われている。桐紋は、唐紙紋様の中でも最も多く、平安時代は皇室の専用であったが、のちに公家や武家にも下賜されて多彩に変化した。 太閤秀吉の好んだ花大桐は、花茎が自由な曲線で左右に曲がり、葉形に輪郭がある。千家大桐は、花茎が直線で葉形に輪郭がない。これは太閤秀吉の花大桐が版木を用いたのに対して、型紙を用いて胡粉を盛り上げた技法の違いである。このほか茶道の好みの桐紋には、変わり桐、光悦桐、光琳桐(蝙蝠桐)、兎桐布袋桐、お多福桐などさまざまな意匠がある。 松葉図案も茶道好みの紋様で、茶道の家元では十一月中旬の炉開きから三月頃まで、茶室の庭には松葉を敷く習わしがあり、このしきたりに由来した図案である。表千家の不審庵には千家松葉(こぼれ松葉ともいう)、裏千家には敷松葉が好まれている。このほか表千家好みには、唐松、丁字形、風車置き上げ、吹き上げ菊などがある。裏千家好みには、小花七宝、宝七宝、細渦、松唐草などの図案を工夫している。 武者小路千家では、吉祥草を特別に好みとし、壺型の土器を散らした「つぼつぼ」は三千家共通に用いられている。このほか小堀政一の流派には、遠州輪違いを用いている。茶道の家元での紋様は、ほとんどが植物紋様で、整然とした有職紋様のような幾何紋様は見あたらない。茶道の精神は、俗世間を超越した精神的高揚を重んじる「侘茶」の世界であり、秩序正しい有職紋様はそぐわない。
※この「茶道好みの紋様」の解説は、「唐紙」の解説の一部です。
「茶道好みの紋様」を含む「唐紙」の記事については、「唐紙」の概要を参照ください。
- 茶道好みの紋様のページへのリンク