若年時からのダメージ蓄積
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:44 UTC 版)
「トミー・ジョン手術」の記事における「若年時からのダメージ蓄積」の解説
同じくASMIが「若年時からの蓄積によって故障は引き起こされる」という見解を発表している。 ASMIが10年間で500人のアマチュア選手のデータを集めた調査によると、年間の投球イニング数や1試合あたりの投球数が多ければ多いほど肩や肘の故障の確率が上昇していることが判明している。また、2011年にアメリカ整形外科学会が9歳から14歳の投手481人の10年後を調査した結果によると、年間100イニング以上投げた投手が肘や肩の手術を受けるか野球を断念する確率は3.5倍になっているという。2014年にはMLBと米国野球連盟が18歳以下のアマチュア投手を対象にした故障防止のためのガイドライン「ピッチ・スマート(PITCH SMART)」を発表している他、ジェームズ・アンドリュースを始めとした整形外科医や理学療法士の研究データに基づいた故障予防アプリが発表されている。 日本でも、TJ手術を執刀している慶友整形外科病院院長の伊藤恵康は「肘の靱帯が正常な投手が投球中に靱帯をいきなり切ることはまずありません。小学生時代からの繰り返される負荷により生じた小さなほころびが積み重なって切れてしまう」と語っており、全日本野球協会や日本整形外科学会もアマチュア球界の調査を進めている。同院医師の古島弘三が、2019年までの10年以上にわたり600件以上の手術を担当した患者を分析したところ、高校生以下の子どもがおよそ4割を占め、中には小学生もいたこと、また、2019年1月、野球チームに所属の小学生289人のひじの状態を検査した結果、過去にひじを傷めたり、現在ひじを傷めたりしている選手は89人で28%いたことが報じられた。 その他、野球特化傾向が進んだことが若年時のダメージ蓄積に影響しているという意見もある。アメリカではアマチュアスポーツの掛け持ちが一般的であったが、近年は1つの種目に特化して取り組む傾向が進み、1年中野球に取り組む者が珍しくなくなった。ASMI所属医師のグレン・フライシグによると、こうして野球特化傾向が進んだことにより20歳までに重大な故障を負うリスクは以前の3倍に膨れ上がったという。しかしアメリカ国内出身者と中南米出身者とでTJ手術に至る率がほぼ同じであることから、野球特化傾向による説は成り立たないと言う意見もある。また、アメリカ以上に1種目特化傾向や全国高等学校野球選手権大会等で連戦連投を強いられる傾向が強い日本の投手はなぜTJ手術に至ることが少ないのかという声もあるが、これについては「ウェイトトレーニングの少なさ」や「TJ手術が定着していないため手術に踏み切らない選手が多い」ことが挙げられている。
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