自動車の空気ブレーキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 23:51 UTC 版)
「空気ブレーキ」の記事における「自動車の空気ブレーキ」の解説
自動車においては、中型以上のトラック・バスに用いられている方式である。イギリスやドイツなどの欧米ではほとんどフルエアブレーキを採用しているが、日本では応答性に優れて制動力をコントロールしやすいという理由で、油圧ブレーキと空気ブレーキの長所を組み合わせた空気油圧複合式ブレーキ(エアオーバーハイドロリックブレーキ:AOH)が用いられるが、大型車(GVW12トン以上の大型観光バスや路線バス、トラック、トレーラヘッド等)は、ウェッジ式フルエアブレーキや、フルエアディスクブレーキへの転換が進んでいる。トレーラー(台車)は昔からSカム式フルエアブレーキが採用されている。 フルエアブレーキの仕組みは鉄道車両でいえばセルフラップ式の直通ブレーキに該当する。一般にエアコンプレッサーを搭載しており、エアタンクに圧縮空気が常に貯められている。ブレーキを踏むと、リレーバルブを介し、直接ブレーキを作動させるブレーキチャンバにエアが送られる。それで、チャンバのロッドが伸び、ブレーキが掛けられる。ブレーキ管が外れたり損傷したりした場合には、まったくブレーキが効かなくなるため、通常2系統になっており、前軸グループと後軸グループで配管がわけられることが多かったが、「中期ブレーキ規制」の施行以降は「完全二重化」が義務付けられている。バタ踏み操作(ブレーキの踏み込み・ゆるめ操作を短時間に複数回行う事)を行うと、圧縮空気を大量消費してしまい、制動力が極端に低下してしまう。エアブレーキのバタ踏み操作でエアを浪費して制動力が低下したために発生した事故が2件発生したことを受け、国土交通省は2013年(平成25年)6月28日にエアブレーキの操作に関して注意喚起を行い、同時にいすゞ自動車・日野自動車・三菱ふそうトラック・バス・UDトラックスの大型車メーカー4社も、連名で注意喚起を行った。 日本の積載量4トン級トラックの場合、ほとんどの車種がAOHブレーキを採用している。また、日野・レンジャー、いすゞ・フォワード、いすゞ・フォワードのOEMであるUD・コンドル(5代目)では、床から踵を上げて操作する「ペンダント(上吊り)式ブレーキペダル(プロコントロールペダル)」を採用しているため、特に車両が揺れているときの丁寧なブレーキ操作には慣れが必要である(三菱ふそう・ファイターと4代目までのUDトラックス・コンドルはオルガン(床置き)式ペダルである)。 大型車のパーキングブレーキは、従来トランスミッションの後方にプロペラシャフトと同軸で設置されていたが(センターブレーキ)、法改正により、ホイールブレーキを直接固縛する、ホイールパーク式パーキングブレーキへ移行した。これは圧縮空気の圧力低下した場合パワースプリングでブレーキが掛かった状態になり、通常走行時にはエアを込めて解除するものである。そのため、ブレーキをかける際に大きなエア音がする。
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