美術史批判と方法論の多様化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 14:44 UTC 版)
「美術史」の記事における「美術史批判と方法論の多様化」の解説
様式論とイコノロジーを中心として、分析のための視点や技術を深化させてきた美術史学は、20世紀後半になって大きな転換点を迎えた。とりわけ「巨匠による傑作」が、主題や表現様式によって時代を画する「カノン(=規範的作品)」として叙述の中心を占めてきたことに対しては、厳しい批判が行われるようになった。 さらに、「傑作」「歴史」といった概念が西欧世界において規定されており、したがって「美術史」も西欧の視点に大きく偏っていること、男性中心の社会や文化が生み出した価値観が作品分析に大きく影響していることが批判された結果、女性やマイノリティ、非西欧世界、労働者階級といった観点からのアプローチが積極的に追求されるようになった。 こうした美術史再編の動向は、旧来の美術史の克服をめざすものとして「ニュー・アート・ヒストリー」とも呼ばれた。T・J・クラークやマイケル・バクサンドール、スヴェトラーナ・アルパースといった研究者が主導したこの潮流の中で、「美術」の定義そのものも拡大・変容する。 このように旧来の美術史の枠組みそのものの問い直しが活発に進められ、学問の基盤となる概念や研究目的、その方法論と分析視覚は、現在でも多様化を続けている。
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