緩増加超函数とフーリエ変換
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 06:00 UTC 版)
「シュワルツ超函数」の記事における「緩増加超函数とフーリエ変換」の解説
緩増加超函数テスト函数の空間をより大きく取り直すことにより、D′(Rn) の部分空間を成す緩増加超函数 (tempered distribution) が定義される。この超函数はフーリエ変換の一般論の研究に有用である(任意の緩増加超函数はフーリエ変換を持つが、一般のシュワルツ超函数ではそうはいかない)。 ここで考えるテスト函数の空間はシュワルツ空間とも呼ばれる S(Rn) で、すべての偏微分に沿った無限遠で急減少 (rapidly decreasing) な無限回微分可能函数全体からなる空間である。つまり、φ: Rn → R がシュワルツ空間に属するのは、φ の任意の導函数に |x| の任意の冪を乗じたものが |x| → ∞ の極限でいずれも 0 に収斂するときである。このような函数の全体は、適当な半ノルムの族を与えることにより、完備な位相線型空間を成す。もう少し詳しく述べれば、半ノルムの族を大きさ n の多重指数 α, β に対して p α , β ( φ ) = sup x ∈ R n | x α D β φ ( x ) | {\displaystyle p_{\alpha ,\beta }(\varphi )=\sup _{x\in \mathbb {R} ^{n}}|x^{\alpha }D^{\beta }\varphi (x)|} で与えれば、φ がシュワルツ函数となるのは、全ての半ノルムに対して p α , β ( φ ) < ∞ {\displaystyle p_{\alpha ,\beta }(\varphi )<\infty } が満たされるときである。半ノルムの族 pα,β はシュワルツ空間に局所凸位相を定める。シュワルツ函数が滑らかであるから、実際にはこれらの半ノルムはシュワルツ空間上のノルムになっている。シュワルツ空間は距離化可能であり、完備である。 緩増加超函数の空間はシュワルツ空間の連続的双対空間として定められる。言い換えれば、超函数 F が緩増加超函数であるとは、任意の多重指数 α, β に対して lim m → ∞ sup x ∈ R n | x α D β φ m ( x ) | = 0 {\displaystyle \lim _{m\to \infty }\sup _{x\in \mathbb {R} ^{n}}|x^{\alpha }D^{\beta }\varphi _{m}(x)|=0} が成り立つならば lim m → ∞ F ( φ m ) = 0 {\displaystyle \lim _{m\to \infty }F(\varphi _{m})=0} であることをいう。緩増加超函数の導函数は再び緩増加超函数となる。緩増加超函数は、有界あるいは緩増加 (slow-growing) な局所可積分函数を一般化するもので、コンパクト台付き超函数や自乗可積分函数はすべて緩増加超函数のクラスに含まれる。増大度が高々多項式程度な(すなわち適当な r をとれば f(x) = O(|x|r) となるような)任意の局所可積分函数 f も全て緩増加超函数であり、これには p ≥ 1 に対する Lp(Rn) に属する函数の全てが含まれる。 緩増加超函数はその「緩増加」性によっても特徴付けることができる。これは、テスト函数のたとえば ∝ | x | n ⋅ exp ( − x 2 ) {\displaystyle \propto |x|^{n}\cdot \exp(-x^{2})} のような「急減少」的な振舞いの双対的な特徴である。 フーリエ変換の研究には複素数値のテスト函数と複素線型な超函数を考えたほうが都合がよい。古典的な連続フーリエ変換 F はシュワルツ函数の空間上の自己準同型を与える。また、緩増加超函数 S のフーリエ変換を任意のテスト函数 ψ に対して (FS)(φ) = S(Fφ) とおくことにより定義することができて、FS はふたたび緩増加超函数となる。このフーリエ変換は緩増加超函数全体の成す空間からそれ自身への連続、線型、かつ全単射な作用素である。この操作は F d S d x = i x F S {\displaystyle F{\dfrac {dS}{dx}}=ixFS} の意味で微分と両立する。また、S を緩増加超函数、ψ をRn 上の(任意の導函数が高々多項式程度の増大度であるという意味で)緩増加な無限回微分可能函数とすると、Sψ はふたたび緩増加超函数で、そのフーリエ変換 F ( S ψ ) = F S ∗ F ψ {\displaystyle F(S\psi )=FS*F\psi } は FS と Fψ との畳み込みとなるという意味で畳み込みとも両立する
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