網元制度の展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/16 15:30 UTC 版)
網元の特徴として、第一に漁場の支配進退の権利である漁業権を個人もしくは集団で支配し、それを基盤として単独もしくは複数の網元による漁村支配を確立した。彼らの中には村役人や宮座の地位を掌握し、地域の政治・経済・祭祀の各方面において支配力を行使する者もいた。 第二に、網元と網子の身分的支配関係であって、網元は網子に住居や食物などの世話を行う一方で網元所有の農地を小作させたり前貸金を与えたりすることで土地に緊縛し、一種の借金奴隷化するなど労働力の移動を禁じたり住居を世話するといっても実際には粗末な納屋に押し込めたりといった経済外的強制を加えるなど、網子を人格的に束縛して世襲的に主従関係を維持していた。更に網子よりは緩いとはいえ、網元との主従関係にあった人々として網付商人がいる。彼らは干鰯・魚油・〆粕などといった加工品の製造にあたる商人で、網元から原料を独占的に購入できる代償として網元を通じて商品を販売することが義務付けられており、売り先の問屋や途中の宿泊宿まで定められている場合があった。こうした問屋や宿屋は、網元との血縁関係その他の強い関係を持つ者が多かった。ただし、全ての網元が人格的束縛を加えていたわけではなく、1年ごとの相互の合意によって関係が更新される地域もあった。その場合、船祝い・小正月・御盆などの恒例行事の際に網元が開いて網子を招待する酒宴の場が、更新の儀式として機能する場合もあった。また、優秀な船頭などの確保には網元も尽力し、優秀な人材を外部から求めて時には他の村の船頭などを引き抜いて現地の網元と争いになったりする場合もあった。 第三に、網元は総漁獲高のうち小物成・分一などの租税や諸経費を差し引いた上で4割から7割を網元が獲得し、残りを網子間で平等に分配した(ただし、船頭などの責任者は手当相当分が上乗せされる場合がある)。これを「しろわけ」などと称した。
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