結び目の連結和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:13 UTC 版)
2つの結び目の連結和は、密接に関係した考え方である。実際、結び目を単に 1-次元多様体とみなすと、2つの結び目の連結和は、まさに 1-次元多様体としての連結和となる。しかし、結び目の本質的な性質は、その多様体の構造にあるのではなく(すべての結び目は円と同値である)、むしろ周囲の空間(英語版)(ambient space)への埋め込みにある。従って、結び目の連結和には、次のように、うまく定義される埋め込みを生成するようなより精密な定義がある。 この結果、新しいひとつの結び目が得られ、もとの 2つの結び目の連結和(あるいは、結び目和や合成)という。次に、結び目の連結和に対し、3-次元空間の中での向き付けを持つ結び目を考えねばならない。2つの結び目の連結和を定義するには、 2つの結び目の平面への射影を考え、これらの射影が共通部分を持たないようにする。 長方形の対辺が各々の共通部分をもたない 2つの結び目の一部の弧となっているような平面上の長方系を探す。すると、長方形の対辺の結び目の一部の弧は、長方形の境界を回る向きと同じ向き付けがなされる。 そこで、これらの弧を結び目から削除し、残る長方形の対辺を弧としてつなぎ合わせることにより、ひとつの結び目を得る。 この結果として生ずる結び目の連結和は、2つのもともとの結び目の向き付けと整合性を持っていて、結果として得られる周囲の向き付けのイソトピークラス(isotopy class)は、うまく定義でき、もとの 2つ結び目の周囲の向き付けのイソトピーに依存している。 この操作の下では、3-次元空間内の向きつけられた結び目は、一意は素因数分解を持つ可換なモノイドを形成し、そこでは素結び目(英語版)(prime knot)の意味を定義することができる。可換性の証明は、連結和全体を縮め、片方の結び目を非常に小さくし他の結び目に沿って滑らせることができるようにして、示すことができる。自明な結び目は単元である。三葉結び目(trefoil)は(自明結び目を除くと)最も単純な素結び目である。高次元の結び目は、 n {\displaystyle n} -球面をスライスすることにより得ることができる。 3-次元では、自明な結び目は、2つの非自明な結び目の和としては表すことができない。この事実は、結び目種数の加法性より得られる。メイザーのまやかし(Mazur swindle)とも呼ばれることもある「無限の構成」を用いる別証明もある。高次元では(少なくとも余次元が 3)、2つの非自明な結び目の和が非自明となるものを作ることができる。 結び目の向きを考慮に入れないと、連結和の操作は(非向き付け)結び目のイソトピークラス上ではうまく定義することができない。このことを理解するために、2つの非可逆的な(向きつけられていない)非同値な結び目 K, L を考える。たとえば、2つプレッツェル結び目 K = P ( 3 , 5 , 7 ) {\displaystyle K=P(3,5,7)} と L = P ( 3 , 5 , 9 ) {\displaystyle L=P(3,5,9)} を取る。 K + {\displaystyle K_{+}} と K − {\displaystyle K_{-}} を 2つの非同値な向きを持つ K {\displaystyle K} 、 L + {\displaystyle L_{+}} と L − {\displaystyle L_{-}} を 2つの非同値な向き付けをもつ L {\displaystyle L} とする。4つの向き付けの連結和を得る方法が 4通りあることとなる。 A = K + # L + {\displaystyle A=K_{+}\#L_{+}} B = K − # L − {\displaystyle B=K_{-}\#L_{-}} C = K + # L − {\displaystyle C=K_{+}\#L_{-}} D = K − # L + {\displaystyle D=K_{-}\#L_{+}} これらの 4つの向き付けられた結び目は向きつけられた周囲のイソトピークラスがすべて異なっている。さらに、向き付けを考えない結び目の周囲のイソトピーを考えると、2つの異なる同値類 { A ~ B } と { C ~ D } を得る。A と B が向き付けのない同値であることを理解するには、単にそれらが双方とも同じ上記の共通部分をもたない結び目の射影から構成されていることに注意すると、唯一の細は結び目の向き付けとなってしまう。同様に、C と D が共通部分を持たない同じペアから構成されることもあることになってしまう。
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