細胞接着分子として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 17:04 UTC 版)
「フィブロネクチン」の記事における「細胞接着分子として」の解説
1940年代に確立した動物細胞培養法では、アミノ酸、糖、pH緩衝液成分、ビタミン、無機塩類などの合成培地に、10%程度の動物血清(ウシ胎児血清を多用)を添加し、培地としていた。動物血清を添加しないと、動物細胞は増殖できなかった。動物血清は、細胞増殖因子の供給、pH緩衝作用、細胞傷害因子の中和などの役割を果たすが、細胞接着分子の供給もその1つである。というのは、多くの動物細胞は、培養容器の底に接着し伸展なければ増殖できない。培養細胞のこの性質は足場依存性(anchorage dependence)と呼ばれている。 細胞接着を担う因子は、撒かれた細胞が培養容器の底に接着し増殖すれば、自分で合成・分泌する場合もある(線維芽細胞など)。しかし、撒かれたばかりの細胞は自分ではもっていないので、培地として加える動物血清の中の細胞接着分子に依存して培養容器の底に接着する。 動物細胞培養に用いる動物血清は、様々な成長因子やホルモンが含まれ、微量成分は正確には不明であり、製品にばらつきがでる。研究目的によっては問題が生じる。さらに、動物血清の供給量に限界があるため高価である。それで、米国のゴードン・サトー(英語版)(Gordon H. Sato)を中心に、1970年代から、動物血清中の有効成分を生化学的に同定し、合成培地に添加することで、細胞を増殖させる無血清培養法が模索されていた。 その流れの中で、動物血清中の細胞接着分子を同定する研究が行なわれた。しかし、細胞接着分子を同定する前の1976年頃、血清中のフィブロネクチンに細胞接着活性があることが発見され、血清中の細胞接着分子の探索は途中で終わってしまった。
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