細胞接着の様式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 16:14 UTC 版)
細胞接着には、以下の2様式がある。2つの細胞を仮にABとした。 「細胞-細胞接着」:A細胞がB細胞に接着する。 「細胞-基質接着」:A細胞が基質(細胞外マトリックス)に接着する。 また、「細胞-細胞接着」には次の3様式がある。3つの細胞接着分子を仮にXYZとした。 同親性結合(ホモフィリック結合、homophilic adhesion):A細胞表面のXがB細胞表面のX細胞接着分子に結合する。 異親性結合(ヘテロフィリック結合、heterophilic adhesion):A細胞表面のX細胞接着分子がB細胞表面のY細胞接着分子に結合する。 リガンド架橋型結合(ligand-bridged adhesion ):A細胞表面のC細胞接着分子がB細胞表面のD細胞接着分子に、Z分子を介して結合する。Z分子をリガンドと呼ぶ。 「細胞-細胞接着」(cell-cell adhesion)・・・2つの細胞が細胞膜に組み込まれた分子を介して接着する。「A細胞-B細胞」の接着例で具体的に書くと、A細胞表面のXがB細胞表面のX細胞接着分子あるいY細胞接着分子に結合することで「A細胞-B細胞」の接着が起こるケースである。接着する細胞(A細胞とB細胞)は同じ種類の組織の細胞でも異なる種類の組織の細胞でも原理的にはかまわないが、通常は、同じ種類の細胞である。厳密に書くと、A細胞は接着するB細胞を認識するのではなく、認識するのは、A細胞表面のX分子である。X分子がB細胞表面のX分子あるいY分子に親和性があるかどうかに依存する。その相手分子により同親性と異親性の2つの様式がある。同親性結合(ホモフィリック結合、homophilic adhesion):同じ相手分子(X-X) 異親性結合(ヘテロフィリック結合、heterophilic adhesion):異なる相手分子(X-Y) 「リガンド架橋細胞接着」(ligand-bridged cell adhesion)・・・2つの細胞が細胞膜に組み込まれていないZ分子を介して接着するケースである。「A細胞-B細胞」の接着例で具体的に書くと、A細胞表面でもB細胞表面にもないまったく別の可溶化分子・Z分子(リガンド ligand)(細胞膜貫通タンパク質ではない)を介在している。Z分子は、A細胞・B細胞が産生しなくてもよい。この仕組みは、例えば、細胞外の可溶性分子であるホルモンと細胞膜上のレセプターの結合と同じシステムと考えて良いだろう。生物は進化上、この能力を獲得したことで細胞機能を細胞外から調節する仕組みを獲得した。これで、複雑性が獲得できる。 「細胞-基質接着」(cell-substratum adhesion)・・・細胞が基質(細胞外マトリックス)に接着するケースである。「リガンド架橋細胞接着」の重要な点は、Z分子(リガンド ligand)が原理的に複数個の分子になりえることである。リガンド(ligand)が複数になり、3次元的空間を占め、あるいは2次元的なシートを構成するまで発達すると、リガンド自体が細胞外マトリックス分子とみなされ、「細胞-基質接着」ということになる。 つまり、生物は上記のように、細胞接着様式を「1 → 2 → 3」と細胞接着分子・細胞外マトリックス分子を増やしながら進化的に発達し、細胞機能と組織機能の多様性と効率化を獲得してきたと思われる。
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