紙本墨画秋冬山水図とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 紙本墨画秋冬山水図の意味・解説 

紙本墨画秋冬山水図〈雪舟筆/〉

主名称: 紙本墨画秋冬山水図〈雪舟筆/〉
指定番号 69
枝番 00
指定年月日 1953.03.31(昭和28.03.31)
国宝重文区分 国宝
部門種別 絵画
ト書
員数 2幅
時代区分 室町
年代
検索年代
解説文: 室町時代作品

秋冬山水図

(紙本墨画秋冬山水図 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/23 22:23 UTC 版)

『秋冬山水図』
作者雪舟
製作年15世紀末-16世紀初め
寸法47.7 cm × 29 cm × 30.2 cm (18 in × 11.5 in × 11.9 in)
所蔵東京国立博物館上野
登録A-1398

秋冬山水図(しゅうとうさんすいず)、あるいは紙本墨画秋冬山水図(しほんぼくがしゅうとうさんすいず)は、室町時代禅僧で著名な画家である雪舟による水墨画である[1][2][3]東京国立博物館が所蔵している。もともとは四季すべての絵が揃っていたと考えられているが、現在はそのうち2つ、冬景と一般的には秋景と考えられているものしか残っていない[4]中国の風景画に影響を受けた日本美術の傑作であると考えられており、1953年3月31日に国宝に指定された[5]

内容

秋景

の風景は紙の上側に向かって流れるを描き、遠景に高い建物が見える。後ろにはかすかにが見える。川の対岸に腰掛けたふたりの高士が会話をしており、上は広々としたが広がっている[6][7]

綿田稔によると、この風景は「夏」だと考えられていたこともあり、さらには春のモチーフとしてよく使われるの木のようなものが描かれているため「春」の可能性もあるという[6]

冬景

の風景は後ろに広大な空が広がる秋の風景とは対照的にがあり、遠景の建物に向かってひとり登る旅人が描かれている[8]。中心にあるぎざぎざの縦線は崖の岩の肌理と大きさ、奥行きを表現している。背景の木々は冬らしく枯れている[1][2][7]。白黒の明暗だけで冬景色の広がりを描いており、白はを示し、灰色肌理、陰、解けかけてぬかるんだ雪を表現している。降りしきる雪を表現するために背景はぼかしてある[1]

冬景は「レンズの絞りのような」画面構成の絵画であると評価されている[9]范寛夏珪の影響を受けつつ、その伝統に独自性を持ち込んだ作品である[10]。美術史家の熊谷宣夫や蓮實重康は、フランスの画家ポール・セザンヌを引き合いに出し、キュビスムとの類似性を指摘している[11]。一方で島尾新は、1956年に世界平和評議会が選定した世界十大文化人の中に雪舟が入ったことによって沸き起こった雪舟ブームの中で、雪舟を世界の中に位置づける必要性から、西洋絵画との比較評が行われたことを指摘している[12]

制作背景

1468年、48歳の雪舟は当時の風景画の手法やスタイルを学ぶためにに留学した。雪舟は最初は周文如拙のもとで学んでいたが、北京寧波などを含むさまざまな都市や地域を幅広く旅した経験が、後に「秋冬山水図」を描く際に役立つこととなった[2][13][6]。禅僧として雪舟は旅の最中に自然を観察・考察し、そこから季節の雰囲気をよくとらえた風景画が生まれることとなった[1]。「秋冬山水図」は夏珪の作品のスタイルを参考にしている[1][14][15]。東京国立博物館には初期に制作されたと見られる別の「四季山水図」が四幅遺存しており、この作品ももともとは四季山水図であったと考えられるが、そのうち2つが失われた[4]。「秋冬山水図」の制作年代についてははっきりと分かっていないが、山口県の毛利博物館が所蔵する「山水長巻」と呼ばれる四季山水図には文明18年(1486年)の落款があり[注釈 1]、これまで「山水長巻」よりも若い作品であるというのが通説であったが、近年においては「山水長巻」と同じ頃の作品であるという見方が強まり、「山水長巻」以降に制作されたとする説も出てきている[16]

展示

もともとは京都市左京区にある天台宗の寺院である曼殊院にあった[17]。1936年に東京国立博物館に移管された[18]。1939年には日独間で結ばれた防共協定に関連する文化事業としてドイツ側からの要請を受け、ベルリン美術館で開催された伯林日本古美術展覧会にて他の国宝重要文化財とともに展示された[19]。1953年に国宝に指定された[20]。1976年に新しい台紙や箱などを用いて補修が行われた[18][21]東京国立博物館の常設展に含まれており、雪舟展などで巡回展示されることもある[15][22]

脚注

注釈

  1. ^ 落款には「文明十八年嘉平日天童前第一座雪舟曳等楊六十有七歳筆受」とあり、夏珪の様式を模したものという解釈が有力視されている[16]

出典

  1. ^ a b c d e » Nature: spotlight — Sesshu Toyo's Winter Landscape”. smarthistory.org. 2023年12月8日閲覧。
  2. ^ a b c Autumn and Winter Landscapes|About the Works|TSUZURI Project” (英語). TSUZURI Project|Canon. 2023年12月8日閲覧。
  3. ^ ColBase”. colbase.nich.go.jp. 2023年12月8日閲覧。
  4. ^ a b 永津 2000, p. 87.
  5. ^ 国指定文化財等データベース”. kunishitei.bunka.go.jp. 2023年12月9日閲覧。
  6. ^ a b c "Autumn and Winter Landscapes" by Sesshu: Masterpiece in black and white” (英語). 紡ぐプロジェクト (2019年9月17日). 2023年12月9日閲覧。
  7. ^ a b e-Museum - Autumn and Winter Landscapes”. emuseum.nich.go.jp. 2023年12月12日閲覧。
  8. ^ 永津 2000, p. 88.
  9. ^ 島尾 1999, p. 99.
  10. ^ 島尾 2002, p. 361.
  11. ^ 永津 2000, pp. 88–89.
  12. ^ 永津 2000, p. 89.
  13. ^ Sesshu Toyo: Masuda City Tourist Information Center”. masudashi. 9 December 2023閲覧。
  14. ^ Winter Landscape | History, Description, & Facts | Britannica” (英語). www.britannica.com. 2023年12月12日閲覧。
  15. ^ a b 秋冬山水図”. www.tnm.jp. 東京国立博物館. 2024年8月21日閲覧。
  16. ^ a b 永津 2000, p. 91.
  17. ^ 秋冬山水図 文化遺産オンライン”. bunka.nii.ac.jp. 2024年8月21日閲覧。
  18. ^ a b 雪舟《秋冬山水図(冬景)》 東洋的視座とオリジナリティ──「島尾 新」:アート・アーカイブ探求|美術館・アート情報 artscape”. 美術館・アート情報 artscape. 2023年12月12日閲覧。
  19. ^ 安松みゆき「勲章と1939年「伯林日本古美術展覧会」 : 丸尾彰三郎の遺品・勲章に注目して」『別府大学大学院紀要』2022年、9-18, p. 10、2024年8月21日閲覧 
  20. ^ 国宝重要文化財第四次指定 :: 東文研アーカイブデータベース”. www.tobunken.go.jp. 東京文化財研究所. 2024年8月21日閲覧。
  21. ^ Koller, Markus; Spindler, Max (1939). Gedächtniskatalog der Ausstellung altjapanischer Kunst Berlin 1939. Verlag für kunstwissenschaft, Berlin 
  22. ^ 国宝, Wander (2021年1月10日). “国宝-絵画|秋冬山水図(雪舟筆)[東京国立博物館]”. WANDER 国宝. 2023年12月12日閲覧。

参考文献



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「紙本墨画秋冬山水図」の関連用語

紙本墨画秋冬山水図のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



紙本墨画秋冬山水図のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの秋冬山水図 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS