第1章 適用範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/06 08:49 UTC 版)
「国際物品売買契約に関する国際連合条約」の記事における「第1章 適用範囲」の解説
第1章は、ウィーン条約の適用範囲について規定している。 ウィーン売買条約は、国際的売買契約について適用される。具体的には、売主と買主とが異なった国に営業所をもち、かつ、以下のいずれかを満たす場合に適用される。 営業所のある国がいずれもウィーン売買条約の締約国である場合(1条1項a号) 国際私法の規則によってウィーン売買条約の締約国の法が準拠法に指定される場合(1条1項b号) a号に該当する場合、訴訟を提起された締約国の裁判所は、ウィーン売買条約を直接適用する義務を負う。 b号に該当する場合、訴訟を提起された締約国の裁判所は、その国の国際私法により締約国の法が準拠法とされたときには、ウィーン売買条約を適用する。訴訟を提起されたのが非締約国の裁判所である場合でも、その国の国際私法によって締約国の法が準拠法とされるときには、ウィーン売買条約が準拠法たる実質法の内容となるため、ウィーン売買条約を適用すべきとされている。 そのため、ウィーン売買条約は、非締約国の裁判所においても適用される可能性がある。しかも、本条約の締約国には主要貿易国が名を連ねており、それらの国の法が準拠法として指定される場合も多いと考えられるため、本条約の適用される事件は相当広汎に及ぶ。 なお、締約国は、1条1項b号に拘束されない旨の留保宣言をすることができる(94条)。国際取引に適用すべき国内法を既に有する国が、自国の当該法の適用可能性を残す目的から、当該留保宣言をすることがある。 その例は、国際売買への適用にも十分に耐えうる法であり、世界的にも高い評価を受け、ウィーン売買条約の起草にあたっても参考にされているアメリカ統一商事法典 (Uniform Commercial Code; UCC) を制定しているアメリカ合衆国である。ほかにも、中国、チェコスロバキア(当時)、シンガポールなどが同様の留保宣言を行っている。また、ドイツは、当該留保宣言を行った締約国を1条1項b号における「締約国」とみなさない旨の解釈宣言を行って、解釈上の問題点を回避している。 このほか、適用対象となる実体法的範囲は売買契約の成立、売主・買主の権利義務のみに限られること(4条)が重要である。これによれば、契約の有効性、契約の効果としての所有権の帰属・帰趨など、国内外を問わず契約上しばしば問題となる紛争について本条約が解決策を与えないことが分かる。こうした問題の処理については第2章に規定がある(後述)。 また、本条約が任意法規性をもち、当事者の合意によって適用を排斥し、又は規律内容を変更することができること(6条)も重要である。
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