第1楽章 アダージョ
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「交響曲第10番 (マーラー)」の記事における「第1楽章 アダージョ」の解説
アンダンテ - アダージョ 嬰ヘ長調 4/4拍子 自由なソナタ形式 虚無的で謎めいたヴィオラの序奏主題(譜例1)によって開始される。調記号は嬰ヘ長調だが、ヴィオラの旋律は調性があいまいで嬰ヘ短調にも聞こえる。この部分はアンダンテで、冒頭に書かれた「アダージョ」は、速度表示というより、音楽の一種の性格を示すものと見られる。 譜例1 アダージョになると弦を主体とした第1主題(譜例2)が柔らかく歌われる。この主題は、ブルックナーの交響曲第9番の第3楽章主要主題との類似が指摘されるが、雰囲気的には自作の交響曲第9番の終楽章とも近い。つづいてこの主題の反行形が示され、楽章を通じて重要な働きを示す。 譜例2 テンポをやや上げ、皮肉でおどけた調子となり、弦によって半音階的に上下行する第2主題(譜例3)が現れる。この動機はワーグナーの『パルジファル』から、クリングゾルの動機との関連が指摘される。 譜例3 やがて序奏主題が再現し、第9番の第1楽章同様、変奏を受けながら提示部が反復される。 序奏主題がまた現れると展開部。これに第2主題が結合され、皮肉な調子が支配的となる。アダージョ主題(主として第1主題の反行形)が登場するが、これも次第に第2主題に誘導され、各種の動機が渾然となる。展開部は短いが、これは第2提示部で十分両主題が変奏されているためであると考えられている。 やがて再現部となり、第1主題によって弦楽によって神秘的な浮遊感をたたえた部分となる。交響曲第9番の終結部分を暗示する。第2主題も変形されて再現される。そして、序奏主題が再現すると、これに導かれるように突然金管によってコラール的な絶叫“カタストロフィ”が吹き上がる。第2主題が示されるが、動揺は治まらず、不協和音(譜例4)が次々に重ねられるなかをトランペットのA音が貫くように奏される。 譜例4 この劇的な場面が静まると、テンポを落とした長いコーダとなる。アダージョ主題(第1主題の反行形)が慰めるように繰り返され、穏やかな気分の中で、柔和に結ばれる。
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