硬組織用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 15:26 UTC 版)
硬組織用レーザーは歯や骨を治療するためのレーザーということである。硬組織を削るなどの歯科治療で、現在一般的に使われているのは以下の種類のレーザーである。 Er:YAG エルビウム:ヤグ Er.Cr:YSGG エルビウム.クロミウム:ワイエスジージー No Fiber Straight Er:YAG ノーファイバーストレート エルビウム:ヤグ あたらしいノーファイバーレーザーの登場は、それまでのレーザー分類が発振体元素名やそれに付随する波長分類だけだったのに対して、導光システムの改善によって元素名が同じでも特徴が大きく変わるため、あらたにウィズファイバーとノーファイバーの枝分かれを考慮しなければならなくなったと言えよう。以下の説明は、旧分類をもとにしている。 これ以外(上記以外)のレーザー(炭酸ガス、Nd:YAG、半導体レーザーなど)は、硬組織用としては不向きである。硬組織用レーザーとしての必要な特性とは、単に切削や蒸散機能だけではなく、そのレーザーが人体の硬組織に対して熱などによる侵害作用がなく、有意性が認められることである。たとえば、炭酸ガスレーザーを虫歯に照射すると急激な高熱によって部分的に虫歯は蒸発するが、レーザーの熱が残りやすく、エナメル層の溶岩化(ガラス化)とともに熱変質がなかった自然歯質との間には急激な温度変化による亀裂が入りやすく、健全な硬組織へダメージを与える可能性が捨てきれない。これは、Nd:YAGや半導体レーザーでも同じである。では、なぜ、Er:YAGやノーファイバーEr:YAG, Er.Cr;YSGGレーザーが適切なのかというと、これらのレーザーの特性が水分子に非常によく吸収されることと、その吸収のされかたがほかのレーザーにはない特徴があるからである。つまり、Er:YAGおよび、ノーファイバーEr:YAG、Er.Cr.YSGGレーザーは、ほかのレーザーに比べて水分子へのエネルギー吸収が高いため、生体組織に当てたときに生体(人体はおおよそ70%が水分)の中にある水分の表層にだけ反応して熱が生体内部に残存しにくいからである。歯や骨でも同じことが言える。ただ、この2種類のレーザーも、メーカーの特性がそれぞれ異なり(レーザーのメーカーによって発振形態や構造の違いからレーザーの性格が変わるため)、組織内部の水分を熱爆発させながら連続的に穴を開けて切削するものと、逆に組織の外から水を注水して、その水を外部的に連続爆発させて硬組織を削っていくものとがある。ただし、エナメル層においては水分含有率がわずか5%前後と言われており、上記のEr兄弟がすべて同じ効果を発揮するものでもないことを注意するべきである。
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